サバンナエリア_11

「それ、オレもできればなぁ」


 サーベルタイガーに手渡された剣を眺めながら愚痴る。


「武器を持っている子はみんなできるのに、ヒトって大変なのね」

「まあ、元から持っていたものじゃないからな」


 鞘から剣を抜いてみる。

すらりと伸びた白い刀身が美しい。


「キレイな刀身だ…ミツクビクロガウとの戦闘でも、すごい切れ味だったな」

「それは身を守るためのもので、戦いにはあまり使いたくなかったんだ。お料理にはよく使ってたけど」


 そう言ってサーベルタイガーは小さく笑う。


「でも、今はこのキバで戦うのも嫌じゃないんだ。これのおかげで、みんなを守ることができるから」

「守るための力か。オレ達の銃も同じだな」


 サーベルを鞘に戻し、サーベルタイガーに返す。


「見せてくれてありがとうな。これからも力を合わせてみんなを守ろう!」

「ええ、よろしくね」


 そんな話をしていると、厨房の方からいい匂いがしてきた。


「皆さん、お待たせしました!」

「キョウ、ライオン達を呼んできてくれ」

「了解」


 休憩所の入口の方では、ビーズクッションの餌食となったライオン達が爆睡していた。


「おーい、ごはんの時間だぞー」

「ううん…はっ!?ま、また私寝ちゃってました…!?」

「おはよう、アードウルフ。サーバルも早く起きた方がいいぞ」


 オレの後ろには何色ものペンを持ってニヤニヤしているカラカルがいる。


「サーバルちゃん!は、早く起きて!」

「うみゃ…あと5分…」

「あら、5分もくれるのね!」


 カラカルが嬉しそうにペンのキャップを外した。


「サーバルはもうカラカルに任せよう」

「さ、サーバルちゃん…」


 サーバルのことは諦め、ライオンを起こしに行く。


「ライオン、ごはんだぞ!起きてくれ!」

「ぐぅー…すやぁー…」

「ライオンさん!起きてください!」


 アードウルフが体をゆするが、まるで起きる気配がない。


「ライオンは私が連れて行こう」


「バリー、もうちょっと!もうちょっとだけ!」

「もうみんな待っているんだ。行くぞ」

「うあああ、私の理想郷(アルカディア)がー!」


 バリーはライオンを素早く担ぎ、奥へと向かう。


「さすがバリーさん、手慣れてますね…」



「キョウ、アードウルフ、おはよー」

「おはようサーバルちゃ…ッ!?」


 アードウルフが慌てて後ろを向き、手で口を押えて肩を震わせる。


「おはようサーバ…ルっ!」


 噴き出しそうになるのをなんとか堪えたが、サーバルの顔を直視できなくなった。


「えっ?なになに!?二人ともどうしたの!?」

「だってサーバルちゃん、お顔が…プフッ」

「え、顔に何かついてる?」

「何かついているというか、ぜ、全体がもう…ククッ…すごく芸術的だ」

「芸術的?」

「あらキョウ、なかなかいいセンスね!」

「ん?カラカル、そのペンって…まさか!?」

「サーバル、鏡はこっちよ」


 サーバルが化粧室へ連れていかれた数秒後、


「ぎに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ワタシの顔が前衛芸術にみたいになってるううう!!!」


 という悲鳴が響き渡った。

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