第49話 おしごと
今日の朝、騎士組から壁の警護についての話を聞いた。
「流石に通常練習と村民の訓練、今の所全員20人以上見ている状態なのでそこからさらに周辺警護まで4人で回すとなると......。もう少し人員の増加をお願いできませんか?」
と言われてしまった。確かに4人で自分たちの鍛錬に村民の訓練、座学も教えるときがあるので流石に厳しいよな。これは早急に解決すべき問題だな。べスは部下の育成に専念してもらいたいし、魔導士組に頼むってのも無理だしなあ。魔法の研究もしなきゃいけないし授業の内容も考えなければいけないし。
「なら、ついでにベンに頼むかな!」
困った時のベンだ。ベンならなんとかしてくれるだろ。手紙も書いていることだし早速部屋に飛ぶ。部屋を見回すとべスが書類に判を機械的に押していた。忙しそうなので終わるまで席に座って待っている。
待ってるだけなのも暇なので、お茶を飲みながらべスの仕事ぶりを観察する。全部適当に押しているのかと思ったら、問題のある書類を見つけた瞬間にデスクの開きっぱなしになっている引き出しにスライドしている。
すげえ、数百枚はありそうな書類がドンドン無くなっていく。30分程で全ての判押しが終了する。その瞬間に流れるような手つきで書類を何組かに分別していく。分別したとたんにデスクの端にある穴に組み分けしていた書類をかざしていく。かざした途端に書類の端に小さな魔法陣が現れる。全てに魔法陣印づけしたら、その書類を横に除けて、問題のある書類の問題点に印を付けて魔法陣付けをする。
その束を開いている所に置くと大きなため息をつき、こちらに向かってくる。服のボタンを2つほど外し、俺の体面のソファーに崩れるように座る。
「お疲れさん、ほれこのお茶を飲むと言い」
「ああ、ありがと......ああ、この苦味はいいな。心と体が安らぐ」
ベンが休息を取れたのを見て話し始める。
「ベン、昨日の手紙見た?」
「ああ、目は通した。だが、多分見つかるかは保障はできないぞ? 教師はほとんどは学園勤務で引き抜けないし、それ以外は貴族の専属だしなあ」
だよなあ、地球でも教師は公務員で必要な人材だったしな。この世界で教養の高い人間なんてもっと重宝されるよな。すぐ見つかるとは思ってないが、できるだけ早く見つけてもらうように頼む。
「ああ、そうだ。今日はもう1個頼みごとがあるんだよ」
「なんだ? 今日は午後の会議までは暇だからそれまでにできる事なら言ってくれ」
午後までは連れまわしていいのね、ならまずは俺の作った壁を見てもらおう。それから騎士の補充だな。
「ベン、今から15分くらい俺の村で俺が作った物の評価をしてほしいんだけど」
「ああ、そういえば転移系等の魔法を使えたんだったな。いいよ、靴だけ変えるから待ってろ」
衣装棚の底から動きやすい靴を取り出し、履き替える。準備ができたらしいのでちゃちゃっと転移する。転移先は村の入り口だ。
転移したとたんにベンの顔が驚きの顔に変わる。
「おいおい、これは何年かけて作ったんだよ......」
「1日だ」
そう言えばタクミはぶっ飛んでたわ......。と呆れていたが気にしないことにしたのか、ベンは壁を触り強度を確かめる。さらに、異空間から剣を取り出し壁に叩きつける。ベンも俺みたいなスキル持ってたんだ。
様々な角度から斬撃を繰り出したり、スキルを使って攻撃をしてダメージが入るか確かめていたが、気が済んだのか剣をしまい、自分が攻撃した個所を見ていた。
「うん、いい素材だな。ここまで硬ければここらの魔物や盗賊なんか入って来れないぞ」
強度面ではこれで問題ないらしい。ならば次は人間たちが使う壁の上部を見てもらう。ベンは下を見下ろしたり、凸凹の高さを確かめたりしている。
「ここの隙間はもう少し狭くした方がいいな。こんなに広いと本気で攻めに来た相手の梯子を架けられちまう。あと、四方に安全に迎撃できる建物を建てた方がいいな。これがないと魔導士団が速攻でやられる。防壁を騎士だけで固めるのもいいが、魔導士を配置するだけでかなり迎撃が楽になる」
ほうほう、午後からはそこらへんも意識して改造していくか。
「すぐに気になる所を挙げるならこんなもんかな。あ、門番を配置するなら入り口の端にスペース作った方がいいぞ」
「ああ、そっか。確かに、そこも直しとかないとな」
他はベンがまた暇なときにでも見てもらおう。転移で屋敷に戻り、一服する。お茶はいつ飲んでも美味いなあ。
「ベン、本題はここからなんだけどさ」
さっきのが本題じゃないのかとため息をついていたが、ベンなら俺が人員の増員を求めるくらいは多分予想しているんじゃないかな。
「多分わかってると思うけど前回お願いした人員だけじゃあ周辺警護まで足が回らなくてさ」
「やっぱりな、あんなバカでかい壁なんか作ったらそりゃ4人じゃあ足りないだろ」
うぐ、やっぱり調子に乗ってやりすぎたかなあとは少しは思ってたけどさ、やっぱり気分が乗ったら最後まで作りたくなっちゃうんだ!
「ま、まあそれなら俺も薄々感じてたところだから気にするな」
「なんか物を作るときはお前の嫁さんたちに付いてもらえばいいんじゃないか」
それはいい案だ。今度の大型建造の時はその案を採用しよう。俺のやりすぎ問題の話を増員の話に修正していく。
「その話はまた今度にしよう、今は増員のお話しだろ」
「そうだな、その話はまた嫁さんたちが来た時にでも。さて、門番だったな。あの規模なら入り口に2人、回廊で巡回する人員が......8人は欲しいよなあ。だけど騎士団もそこまで派遣してくれるかは微妙だぞ」
「騎士の人員が足りないのか?」
「足りないわけじゃないんだ」
ベンが言うには人員は余裕で足りているのだが、カッツが未熟な兵士を他方に派遣するのをかなり嫌っているらしく、派遣される騎士は最低4年はかなりきつい訓練を毎日行ってさらに合格試験で合格した下級兵からしか派遣しないらしい。ベンもその意見には賛成しているのでさすがにどうこう言うことはしたくないらしい。俺もその意見には賛成なので、今日派遣できる騎士が居なかったら何か別の方法を考えることにする。
ベンと一緒にカッツの元に行ったらなんと3人は派遣してもらえるらしく紹介してもらった。3人いれば門番は何とかなるのでラッキーだった。3人とも性格に問題ないので全て派遣してもらう。名前はヴィンストン、キーン、シュレ―ンだ。この3人は長期任務から帰ってきて、次の仕事街だったらしくちょうどいい時に来れた。それに、3人の出身村が俺の村からも近いらしく喜んでいた。これならいやいや働くこともないだろう。
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