第46話 紹介と思い出し

「今日は村のみんなに君たちを紹介しに行こうと思う」


「おお、ついにですね」


「ついにですか......」




 朝食を食べながら今日の予定を伝える。ダンたち騎士団は自分の仕事内容を思い出しやる気に満ちている。一方メルンたち魔導士団の一員は自分が上手く教えられるのかなと少し自信が無さげだ。集合場所は玄関前で伝える。




 ダンたちはテンションが上がったまま朝食を終えて各自準備に入るために部屋に戻っていく。メルンたちも頑張るぞー! と自分たちを奮い立たせながら部屋に戻っていく。




「さて、俺も着替えて準備しないとな。ミラたちはどうする?」




 一緒に来るかと問うと、もちろん付いて行きますよとみんな部屋に戻っていく。バドロンに昼は少し遅めで頼むと伝えて2階へ上がる。準備と言っても服装を外出用に変えたらもう終わりなんだけどね。










「お待たせしましたあ」




 準備のできた俺達は玄関で全員を待っていた。流石というかダンたちは俺たちよりも早く準備を終えて玄関に待機していた。10分程でメルンたちが集まり、全員が集合したので広場に向かっていく。向かっている途中にヴェスタルに会ったのでみんなを広場に集めてほしいと伝えておいた。








 30分ほど広場で待っていると、村人たちがぞろぞろと集まってきた。自己紹介をしたときにこういうことをやると伝えておいたのでスムーズにみんな集まってくれる。ヴェスタルから全員集まったと報告を受けたので話し始める。




「みんな、集まってくれてありがとう。今日はこないだ話した通り騎士団と魔導士団を連れてきた」




 村人たちは本当に連れてきたのかと驚いているようだ。俺はやるって言ったらやる男だからね。そこの所尊敬してくれてもいいのよ! と1人で顔に出ないように思っている。が、どうやらミラ達にはもろバレらしい。流石俺が選んだ女性だよ。こんなんじゃあ隠し事できないな!






「これからはみんなに騎士団から剣術と制圧術を魔導士団からは魔法を教わってもらいたい。聞いたところ、俺が来る前は国に収穫した作物の4割を、領主に2割を収めていたと聞いている。それがあるから毎日行くのは大変かもしれない。そう思ったから国への納税義務は免除ということになる様に交渉してきた」




 村人は納税が減ったことに喜んでいる。まあ、もともと国への納税は俺がここに着任してからは無いんだけどね。まあそんなことは村人たちは知らなくていいのだ、重要なことじゃあない。確かに納税の義務の負担が減れば自分の物にできる作物が増えるし余ったら行商人に売って貯金もできて万々歳だろう。だが減った代りに剣に魔法にそれに学校も作る予定なので忙しさ的にはこれからの方が大変だと思うがね。




「だが、納税が減る代わりにこの戦闘教育に割く時間が増えると思って欲しい。2、3か月後には教師も雇って学校教育もしていこうと思う。子供はこの学校に必ず入れてほしいと思っている。もちろん大人で学びたいと思っている者がいるなら相談してくれ、夕方や夜などにできるように調整したりする。俺の目標としてはみんなが教育を受けられるようにしたい」




  そう、俺が元いた日本では識字率なんて100%近かったし、何よりも基礎学力をつけないとこの村から出た時が大変だろうしな。学力なんてあって損はしないのだから、この際頑張って学んでもらおう。




「これから、かなりの速度でこの村が変わっていくと思う。でもこの村を変えていくには俺だけの力じゃあ変えていけない。村のみんなにも協力してほしい。だから、初日の演説をした通り、この村には何が必要なのか、どんなものが必要になってくるか、などをどんどん教えてほしい」




 村人たちは、自分たちの村が発展していくことがようやく確信を得られたのか少し興奮気味だった。その後は明日から早速騎士と魔導士の訓練を始めるからねえと軽く伝えて、解散させる。解散後には村の事で意見がある人間が集まりこういう物がいるなどを話し合う時間になった。




 それも終わり、俺は村のどこかに兵舎みたいのを建てなきゃと思い、村長に許可をもらって村から俺の家に行く途中に3階建ての兵舎を作らせてもらった。ちゃんとスキルと魔法を使い壊れないように設計したのでたぶん大丈夫。騎士たちの兵舎と魔導士組の兵舎は少し離した場所に作った。なぜかって? ほら、修学旅行の時とかあったでしょ、男女別々の棟に入れられるの。あれだよあれ、何か事件があってからでは遅いからね。俺の村でそういう問題を起こしてもらっちゃあたまらんからね。






 騎士や魔導士には自分の荷物をまとめて娘の兵舎に移動するように伝え俺以外のみんなを先に家に帰す。


俺は兵舎の隣にグラウンドを作ったり、騎士や魔導士、この先来るであろう先生が座学を教えるときに使う学校みたいなものを作った。




 この時にすごく大量の材料が必要になったが、森を伐採したり、岩をいろんなところから持ってきて使用するなど、結構大変だった。だが、そのおかげで建築費用0円という現代日本で聞いたら正気を疑われるレベルの工事ができた。




   


「できたあ! めちゃくちゃ疲れたあ......かえって昼飯食べよ」




 転移で帰宅して昼飯を食べる。流石に誰も食べていなかったので1人で昼飯を食べて、この次は何するかなあと考えていると、バルディアが言っていたことを思い出す。




『近々この世界に勇者召喚が起こる。半年後位だったかな』




 あれ......あれってたしか結構前の話だったよな。俺そん時無茶苦茶にしてやるぜとか考えてたよな。やっば何も考えてなかったわ。




 そういう時に使える奴を俺は一人だけ知っている。




「べス」


「何ですか教官」


 音を立てずに俺の背後にべスが現れる。かっこいいな、こんな感じのを一度はやってみたかったんだよね。って、今はそんなことより情報収集だ。




「お前に仕事を頼みたい。かなり大きい案件だが大丈夫か?」


「お任せください。私は元といえど王直属の特殊部隊でした。腕は鈍ってはおりません」




 べスかっこいいな。俺は女だったらべスに惚れちゃうね。と、良く分からんことを考えながら今回の作戦の内容をべスに話す。




 

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