第44話 お風呂づくり

 一通り家の中を案内してバドロンたちが住む部屋を案内する。べスが言うにはあまりにも奴隷に豪華な物をあたえすぎるとそのうわさが流れて家の周りに物乞いが集まってくるという話を聞いたので3人で1部屋ベッドは一つにしてみた。俺はかなり厳しくしてみたがべス的には全然厳しくないらしい。




「教官、これじゃあ住み込みの従業員と変わりませんよ......」


「そうか? まあ、いいじゃないか。うちの料理人なんだから」




 騎士たちの教育をして村人が俺なしでも問題ないほどに成長したらまた旅に出るし、旅に出たらバドロンたちには村で料理屋を営んでもらう予定だ。それまでの部屋貸しだと思えばこんなものだろう。料理屋で部屋貸し代と自分の値段分も払ってもらう予定だからな。




 バドロンたちは部屋で久しぶりの団欒を楽しんでもらってるのでこの時間で騎士たちの部屋にベッドを置きに行く。30分程で全部の部屋に置き終わる。その後は食材を入れておく場所に食材を突っ込んどく。この部屋に状態保存の魔法を仕込んであるので腐りやすい食材もここに入れとけば好きな時に新鮮な状態で取り出すことができるのだ。冷蔵庫の上位互換だな。




 お昼は王都でつまみ食いをしていたのでみんなお腹は空いていない。だが騎士や魔導士はお腹が減ってると思うので料理人に登場してもらう。








「ご、ご主人様。この厨房を使っていいんですか?」


「そんなに固くなるな。もっと気楽にいこうぜ」




 厨房の詳しい説明をして後は任せる。俺は今のバドロンの料理の腕を見たいので俺の料理のレシピなどはまだ教えない。でも教えないとミラたちが怒るので昼食が終わったらレシピを渡す。






「さてさてお手並み拝見と行こうか」








 バドロンの料理は結構基本ができていてこれならうまい料理ができると確信ができる手さばきだ。息子のバトラも野菜の斬り方も正確に素早く切って親父のサポートを完璧にこなしている。いいコンビだなと思いながら観察していくとおおよその品数が分かってきた。スープにパン、サラダ。バランスがいいな。一見足りなさそうに見えるがスープの方が結構ボリュームがありこれなら騎士も腹を満たせるだろう。




 スープの中には切って焼いたソーセージ、レタスに人参にじゃがいもと栄養もばっちり。スープも俺が作ったなんちゃってコンソメを躊躇いなく使っていたので多分美味いはず。バドロンすごいな、コンソメの材料を聞いたとたんにスープに使うんだもん。




 40分程で昼食が完成したので騎士たちを呼んでくる。今度からはこの時間帯に昼食をとるので遅刻しないように伝えて食べてもらう。俺も味見してみたが普通に美味かった。あれなら俺の好物の串焼きとも合うだろう。




 騎士組はスープを一口口に入れた途端に話していたのをやめて飯に集中しだした。魔導士組は会話が弾んでいるようだ。飯を食うときってその人の性格が出るよなあ。






 騎士組は10分程で食べ終わり外で体を動かしに行くらしい。俺もあとで騎士たちと身体を動かそう。魔導士組は20分程で食べ終えて魔法の研究をするらしい。ぜひ生活が楽になる魔法を編み出してほしいものだ。




 食堂を後にして2階でミラ達と1時間ほどイチャイチャして騎士たちがいる場所に出向く。家を出て5分ほどの所で素手で格闘していた。多分あれは武器がなくなった時の戦いなんだろう。さてさて俺も混ざるかね。








「お疲れ、俺も少し混ざっていいかな」


「これはお疲れ様です。それはありがたい! 空き時間があったらこちらからお願いするところでした!」




 ではでは、タクミのサルでもできる制圧術の開始だ。




「まず、相手を制圧するときはこちらが使う力はほとんどないってことを言っておこう。相手の力を利用して制圧するのが基本だよ」




 まずはダン、かかってきなと伝え実践披露をする。ダンのまっすぐに顔の向かう拳を掴んで引きながらダンの力を使い倒す。手を掴んだ状態で相手をうつ伏せにして肩の関節を固める。本気で制圧する気はないのですぐに解除する。




「こんな感じに自分は力を使わずに相手をうまく制圧するのが基本だねこれができるだけで戦闘はかなり楽になるからね。ダン、どうだった? 俺が力使ったところって拳を掴んだことくらいじゃない?」


「はい、何が起きたのか分かりませんでしたよ。つかまれたと思ったらいつの間にか倒されてました」




 そう、この技を食らうと必ずこうなるんだ。力ずくで倒されたわけじゃないから気づいたら倒れてたって言う。これが相手の力を利用するってこと。




「応用はいくらでもあるけど、まずはこれの感覚を掴むところかな。感覚としては自分は水か空気になるってことかな」


「水、に空気ですか」




 難しいと思うけどね、と伝えながら再び実践をする。何回も倒されてると倒す側の感覚もわかって来たのか、10回に1回はできるようになってきた。あとは騎士だけでできそうだと思い家に戻る。異世界ってすごいね、みんなコツをつかむのが速いわ。






 身体を綺麗にして部屋に行く。そういえば外に水ばあはあるけど風呂場がねえな。あとで作んないと。夜までにやることが一つ増えたなあと思いながら食堂に行きバドロンにお茶を入れてもらう。もうすでに俺のレシピは渡してあるので紅茶も緑茶っぽい物もしっかり入れられるだろう。




「うん、美味しいね」


「ありがとうございます」




 10分ほどバドロンと会話をしながらティータイムを楽しむ。一息ついた後はお風呂づくりだ。これは魔法でパパッと完成させる。家を出てすぐのところ制作を始める。




 騎士団の湯と魔導士団の湯を二つ作る。5人は余裕でくつろげる浴槽を作る。地面にいろんな石をカットして日本で見たような浴槽を作っていく。この時に石にはざらざら感を残すことによってすべり止めの効果を果たしてもらう。そして付与魔法で浄化を付与すれば浴槽のお湯は交換することなくずっと綺麗になる。あとは石をカットしまくって地面に敷いて行く。浴槽より少し滑らかにした石を使う。シャワーも取り付けて排水溝も作る。




 この風呂場の水は一滴も無駄にしない。シャワーは浴槽からお湯を引いており、排水溝に流れたお湯は浄化付与された道を通って壁についてるお湯がジャバーッと出るところにつながっている。床に落ちた水滴はほんの少し傾斜をつけて排水溝に流れるようにしてある。




 脱衣所を作る。木材が足りないので森から拝借する。ちゃちゃっと加工して床に敷いていく。壁と天井を和風に作れば浴槽完成だ!




 魔導士組も同じように作り、入り口にのれんをかける。そして入り口から道を作り食堂の壁までつやつやの石を敷いていく。雨避けも作り旅館スタイルにしていく。食堂の壁をくりぬきドアを設置していく。開閉の奴が良く分からなかったので引き戸にした。滑車とか付けなきゃいけないが、ここは魔法を使い極限までドアの上下に接する場所をつるつるにして付与魔法を使い摩擦を軽減する。これで滑車を使わずに開閉ができる。




 ぴっちり閉まるのを確認して持ち手を付けて完成。付与魔法で許可した奴以外には開かないようにして完成。




「ひっさびさにこんな仕事した気がする。疲れたから昼寝しよ......」




 部屋に戻りミラ達と昼寝をする。夕食前には起きなきゃいけないので自作の目覚ましをセットして眠る。明日は村人にみんなを紹介して早速訓練をしてもらおう。明日のやることを考えていたらいつの間にか眠ってしまった。














 目覚ましが鳴ったので目が覚める。意識がちょうど浮上してきたときくらいに鳴ったので一発で起きれた。窓の外を見ると日が沈むくらいの時間でお腹が空いてくる時間帯だ。




 みんなはまで眠ってるので一人で厨房に降りていく。厨房にはすごく集中しながらレシピとにらめっこをしているバドロンがいた。

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