第42話 お迎え

 朝飯をパパッと食べた俺は王都に騎士たちを迎えに行く。ミラ達には戻ってくるまでは自由にしてていいよと伝えて転移する。




 騎士たちを連れてく前にベンに挨拶でもするかと思い、ベンの部屋に直接転移したが本人は気付いていないのか書類に目を通して印を押していた。集中しているときに脅かすのは可哀想だから部屋の中からノックする。




「開いているぞ」


「お邪魔しまーす」




 部屋の中央にあるソファーに座る。座った時にベンがこちらを見てきてようやく俺が着たことに気づいたようだ。




「おお、タクミじゃないか! どうしたんだいきなり?」


「今日騎士たちを連れて行くからついでに寄ったんだよ」




 ベンは仕事机から立ち上がり、一緒に城門まで行こうと誘われたのでドアの方に向かうとベンに手を掴まれて止められてしまった。




「タクミよ、こういうのは騎士たちに見つかると厄介だ。こういう時は窓から降りるんだよ!」


「そういえばベンは王様だったな」


「そう言えばって何だよ!」




 ベンと駄弁りながらも窓の方に向かう。窓を開け放ち、下の方を見る。




「ベン、毎回ここから飛び降りてるのか?」


「まあな! ここから降りれば必ず外に出れるからな」




 ここは3階だから普通に飛んだら痛いってレベルじゃあないんだろうけどさすが異世界だよな。体のつくりが根本的に違うんだもん。




 ベンは靴だけ履き替えて飛び降りる。ダメージはないんだろうけど俺はこういうのは安全に行くのが一番いいのを知っている子なので空間魔法で階段を作り地面に降りていく。ベンは俺が空中をゆっくり降りてるのに驚いていたが、空間魔法だと伝えるとそんな感じの使い方ができたのかと驚いていた。






 飛び降りた場所から15分ほど歩き城門に向かう。城門に向かう間に昨日魔導士の何人かが怪我した話と、村に行く予定の魔導士が1人いなくなった話が上がったが、全部俺がやったと言うと呆れられたが、理由を話すと、ベンが怒っていた。




「何ということだ! 俺の国でまだそんなくだらない事でいじめや差別があるなんてあってはならんことだ!」


「そういえばベンは獣人に忌避感もないし、悪い言い伝えもあまり信じていないよな」




「当り前だ。獣人は俺たち人間より優れたところが沢山ある。多少自分たちと違うからと言ってなぜ差別する必要がある。それに大抵の獣人は心の優しいものが多いのだ。嫌う理由が無い。あと悪い言い伝えのほとんどは作り話だ。仮にそれが本当にあったとしても必ず別の理由があるはずだ。そんなのは少し頭を使えば分かるはず、何かに結び付けなきゃやってられないんだろう。こんなに自分たちが苦しくなるのはこれのせいだ、てな」




 話している間に落ち着いてきたのか、しゃべり方がいつも通りになってきた。




「ベンがそんなに怒ってるのは初めて見たな」


「恥ずかしいとこを見せちゃったな。忘れてくれ!」




 はははと笑いながら別の話をしながら城門に近づく。騎士、魔導士共に先に揃って待っていた。6人なはずだが7人待っていた。




「いや、悪役の中に颯爽と現れるならやっぱり白馬に、ともう着いたか」


「8人いないか? 1人はもう家にいるから7人のはずなんだけど」




 ああ、そのことならとベンが話し始めると同時にもう1人が誰なのかが分かった。説明が終わったと同時にみんなの場所に着く。




「お久しぶりであります!」


「やはりべスか。どうしたんだ何か用事があったのか?」


「実はお願いがあってきました!」




 べスはどうやら俺の所で働きたいらしい。なんでだ? 1月ほど訓練を見ただけの人間じゃないかと疑問に思ったが、べスはなぜか俺に惚れ込んだらしい。途中からいかに俺がスゴイかを語りだしたので止めた。




「べスの言いたいことはわかった。だけど部隊の方はどうするんだ? 少数精鋭だから1人抜けるだけでも大変だろうし許可が出ないんじゃないか?」




 それは問題ないですと、問題ない理由を教えてくれた。ベンと部隊のみんなにはちゃんと許可をもらったらしい。あの部隊には知らなかったが必ず1人につき5人ほど部下がいるらしく、1人に自分の後を継がせたから欠員が出ることもない。




 なるほど、ベンが許可出したんならいいか。俺が生まれて初めて取った弟子の1人だから付いてきてくれるのは意外にうれしい。




「なら大丈夫か。これからよろしくなべス」


「はい! よろしくお願いします!」




 ほかの人の自己紹介をと思ったけど先に澄ましていたらしい。なら移動だけだな。忘れ物はないかちゃんと確認して転移の準備をする。




「じゃあなベン。ちゃんとさっき話してたやつの事頼むぞ」


「おう任せとけ」




 ガシッと握手をする。今度ベンに会うときは手土産でも持っていくかな。




「よし、みんな移動するから円になる様に手を繋いでくれ」




 荷物はあらかじめ預かっているためあとは家に飛ぶだけだ。




「あの、タクミ様。移動するなら馬車に乗らなくてよろしいのですか?」


「大丈夫だよ。でもこのことは他言無用だからな!」




 え? と誰かが言った瞬間に転移を発動する。一瞬で景色が変わり、城門前からどこかの家の前に変わったら驚くか。まだざわざわしているが、俺が話し始めると静かになる。




「今、王都から俺が今住んでいる村の土地に来てもらった。まだ君たちの家を作っていないからとりあえずは俺の家に泊まってもらう」




 家に入り、1階の個室に案内する。女子が止まる部屋のドアには付与魔法で悪意があるものには絶対にあかないようになっているし、個人認証機能があり許可が無いと部屋に入れない仕組みになっている。ここまで厳重にすれば大丈夫でしょうとみんなの顔を見ると驚きまくってすごい顔になっている。べスは流石タクミ様だ! と感動している。




 そういえば各部屋にベッドが無いな、この後買いに行かないとな。




 その後はトイレの使い方を教えて自由時間にした。みんな来たばっかりで荷解きも終わってないだろうからな。この間にベッドを買いに行こうと思い、玄関の方に歩いて行く途中にべスが俺も連れてってくださいとお願いされたので連れて行く。




「あ、タクミさんおかえりなさい」


「ミラ、ただいま。何してたの?」


「皆でお散歩してました。天気もいいですしね」




 ミラに一緒に出掛けるか聞くとみんなを呼んできますね! と言って花壇の方で咲いた芽を見ながら何かを話しているルナとミューエルにミラが話しかけると3人で此方に来た。




「タクミさんみんな行くそうです!」


「それは構わないけど、ミューエルはもう大丈夫なのか?」


「あ! ほかの人がいるところで言っちゃダメです!!」




 あわわとなり手をブンブン振っている。こういうところ可愛いよなあと思い謝っておく。




「ごめんごめん! でも心配だったから」


「もう、タクミ君は。ちょっとは気を付けてくださいね!」




 頭をポンポンして謝る。あまり怒ってないのかすぐに許してくれた。ミューエルにべスを紹介してから王都に向かう。ベッドが売っている店がどこにあるか良く分からなかったが、べスが知っていたのでそこの近くの路地に飛んでから店に入る。いきなり街道に転移するとみんな驚いちゃうからね。


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