第41話 男は所詮無力なのだ
「た、ただいまあ」
朝帰りのサラリーマンパパを彷彿とさせるような動きで家に入る。あとは何事もなくミラ達に話せば問題はないはず......だよね。心臓がバックバクのまま玄関に足を踏み入れた瞬間に2階からドアを開けて此方に駆け寄ってくる足音が聞こえる。
「タクミさんおかえりなさい! ずいぶん遅かっ......たで、すね」
ミラが駆け寄り抱き着いてくる。抱き着いた瞬間に何かを感じたのか言葉が途切れ、俺の脇腹に爪が突き立てられる。痛え! 装甲が薄いところを的確に狙ってるよねこれ!
「タクミさん」
「は、はい、何でございましょうか?」
あまりに熱の入ってない声に言葉が固くなる。
「女の人と何してました?」
「あー、そのですね、これには海よりも深い理由がございまして......」
ミラが抱き着いた状態で此方を向いてくる。顔は微笑んでいるが般若が、般若が見えてますよミラさん。それと、脇腹の爪をもう少し緩めていただくとうれしいのですが......。
「何があったかしっかり教えてくださいますよね?」
「ひゃ、ひゃい」
今までいろんな奴と戦ってきた。オーガロードだってドラゴンだって怖くない。だけど、怒った女の子には手も足も出ないことが分かった。地球にいた時はこういう時にハイハイ従うなんて情けない男だって思ってたけど、実際に直面したら従うしか選択肢が無いのだと理解した。所詮戦闘力なんて女の子を前には大した役には立たないのだ。
玄関から場所を移して寝室へ移動する。ミラはルナを起こしてソファーに座り、俺の状況説明(自白)が始まる。俺はどうしてるかだって? もちろん二人の前で正座ですよ。俺に選択肢はないのだから!
嘘をつかずにありのままを報告する。終始俺の心臓はバクバクで背中には冷や汗がダラダラと流れている。今の俺は処分を下されるのを待つ罪人のようだ。
「ふむ、わかりました。タクミさんちょっとそのミューエルさんを連れてきてください」
「わ、わかりましたでありますでございます!」
即座に転移してミューエルを迎えに行く。ミューエルは暖炉の前でミルクティーを飲んで寛いでいた。
「ミューエル、ミラ達を紹介するから付いてきて!」
「は、はい! お願いします!」
思いっきりミューエルが抱き着いてくる。うおお! って喜んでる場合じゃないわな。さっさとご紹介しなければ。
ちゃちゃっとミラたちの元に戻り紹介する。
「こちらが今回ご紹介する女性のミューエルです」
起立した状態でミラに報告する。ミラとルナはミューエルを連れて別の部屋に移動する。と言っても多分俺の私室だろうけどね。その間俺は正座してなさいってミラとルナに言われたので正座して時間をやり過ごす。
結構長々と話しているようでかれこれ1時間は帰ってきていない。あまりに暇すぎるから、なぜ人類は誕生したのかなど、哲学チックな事を考えて時間をつぶす。そろそろ自分の存在意義について考え始めようとしたときに審判の扉が開かれた。
緊張な顔をして結果をまつ。ミラがソファーの真ん中に座り、ルナが右側、ミューエルが左側に座る。
「タクミさん、お話しをした結果ミューエルを迎え入れることにしたので今回のことは不問ということにします」
「ありがたやあ! ありがたやあ!」
ははあ! と平伏した後にミラ達にもう一度謝罪する。その後は雑談を交わしイチャイチャタイムに突入する。ミラとルナはモフモフから始めて、クテンクテンにする。ミューエルは終始ハワワ! と顔を真っ赤にしていたけど、自分の番になったら恥ずかしがらずにイチャイチャしてくる。ミューエルは髪を撫でられたあとにされるのが好きらしくすぐに準備万端になる。
「あ、あの、初めてなので......」
朝日が昇り目が覚める。いやあすごかった。何がとは言わないけどすごかった。語彙力がめちゃくちゃ低下してるのが理解できたので顔を洗いに行く。ちゃちゃっと身支度を整えて朝食を作る。昨日聞いた時にミューエルに好き嫌いが無いことは知ってるから何も考えずに作る。野菜と肉のスープにサンドイッチを数種類作る。俺が好きなのはレタスとチーズとハムのサンドイッチだ。地球にいた時はサンドイッチって言ったら卵かそれだったな。
朝食ができたと同時にミラとルナがふらふらあっと出てきた。朝食の時には必ず起きてくるんだよな。しっかり顔も洗ってるようだし。
「ありゃ、ミューエルはどうした?」
「ミューちゃんならまだ寝てましたよお」
ルナがサンドイッチを食べながら答える。まだ寝てるのか、昨日はちょっと運動が多かったけどもう8時だしな。起こしに行くかね。
寝室に入ると下着で寝てるミューエルがいる。
「ミューエル、起きろお。朝ごはんがなくなるぞ」
体を揺すると目を覚ましたようだ。下半身に違和感があるのか動きがぎこちない。
「ミューエル歩けるか?」
「ああ、無理ですう」
たくしょうがないなと思い、抱っこして階段を降りる。ああ、太ももが柔らかい。癒されながら食堂に連れていく。ミラたちが怒るかと思ったけど、まあ当然と言った感じで気にせずに朝食を食べている。ミューエルを椅子に座らせて朝食を食べさせる。俺も厨房から朝食をとってきて一緒に食べる。
さあてっと、この後は王都に騎士たちの迎えに行って村人に紹介しないとな。ちゃっちゃと飯食って行きますかねえ。
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