第40話 恋に落ちる一言
「―――ということで私は呪い子と呼ばれるようになったのです」
悲しそうな顔をしながら1時間ほどかけて自分がなぜ呪い子と呼ばれているのか教えてくれた。ミューエルが言うには、自分が生まれた故郷にはいくつか信じられている話があり、その一つが
『月が見えない夜に金色の目を持つ子が生まれたらその子は周囲に災いを呼び寄せる』
というなんとも100%迷信だろという話のせいで幼少期からあまり良くない扱いを受けていたらしい。
数百年前に同じ状況で生まれた子供が成長するにつれてその村が凶作になったり魔物に襲われるようになったりと良くないことが度々起こったらしく、その子を追放したら徐々に村で怒った悲劇が無くなっていった。
だからミューエルも村で散々な目にあったらしいが、彼女には偶然にも魔法の才能があったために王都の方で魔法を学ぶことができて魔導士団に入ることができた。魔導士団に入ってからも呪い子の話が広まっていじめが始まったらしい。
俺はその話を相槌を打ちながら静かに聞いていた。話の間にいくつか思ったことがあったけれどミューエルが話し終わるまでは何も言わなかった。俺のいた学校でもいじめはあったけどここまでひどいのは初めて聞いた。
ミューエルはこんなに周りからいじめられてもう心が折れかかっていた。今のミューエルにはとりあえず休息が必要な気がするな!
「ミューエル、ちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?」
「あ......はい、わかりました」
今の時間は17時頃、この時間帯のあそこなら綺麗に見えるな! ミューエルは何か複雑な顔をしているが、あそこに行くための準備を少しする。
準備を終えたのでミューエルがいる部屋に行く。
「さ、ミューエル行こうか!」
「は、はい......あ、あの、私初めてなので......」
ん? 初めてってなんだ? 確かに俺が連れて行くところは初めてかもしれないけどそんなに緊張する必要はないだろうに。
「大丈夫! 最初はビックリするだろうけど多分感動すると思うよ!」
ミューエルと転移するために手を差し伸べる。彼女は少しモジモジしながら手を握ってくる。うわ、すべすべだな!
「じゃあ行くよ、最初はビックリすると思うから目をつむった方がいいかも」
ミューエルはキュッと目をつむって少しいプルプルしている。......なんか無性になでなでしたくなるな。
「行くか、転移!」
「......もう目を開けてもいいよ」
ミューエルは恐る恐る目を開ける。すると、いきなりこんな高いところに居たらびっくりするらしくぎゅーっと抱き着いてくる。クッ! 耐えろ我が理性!
頭をなでなでして怖くないことを説明して改めてここの景色を見てもらう。
「わあ! すごくきれい!」
俺が花火をぶち上げた時に訪れた場所だ。ここの景色は時間帯によって見え方の綺麗さが変わるから俺のお気に入りスポットだ。夕日が半分ほど沈んでおり、空は何色かのグラデーションができていた。15分ほど景色を楽しんだ後に俺はミューエルに聞きたいことを聞いてみた。
「ミューエル、君は自分で自分のことを呪い子だと思っているの?」
「......はい、今まで生きてきてこんな仕打ちを受けるんですから私は呪われてるんです......」
「そっかあ、でも俺はミューエルのこと呪い子だなんて思わないけどね」
え? っと、驚いたような顔をしている。やっぱり思い込みって言うのは怖いなあ。
「ミューエル、俺が住んでいたところでは君が呪い子だと言われる言い伝えの凶作やらなんやらの理由が解明されてるんだよね」
ミューエルは信じられないような顔をする。確かに科学やらなんやらを理解してないと分からないよな。
「だから、世界中の人間が君のことを呪い子だ石を投げてきても俺はそのことを真っ向から否定してその意思を粉砕してミューエルの事を守ってやるさ!」
ミューエルとの間に数瞬の間無言の空気が流れる。ちょっと気まずいなと思っていた時にミューエルが胸元に頭をうずめてくる。
「ずるいです」
「な、何がかな?」
「あんなことを面と向かって言われて惚れちゃわない女の子なんていないですよ」
え? あ、あれえ? 確かにミューエルの今までを知ったうえでこんなこと言ったらなんかプロポーズしてるみたいじゃん! 俺がミューエルの立場なら即落ちてるわ。
「私の初恋を奪われちゃいました」
「あ、ははは」
「責任、とってくださいね?」
軽めにキスをしてくる。もう理性が持たないけどこの後帰ってからのミラたちのことを考えると冷や汗がダラダラ流れてくる。
「冷や汗がひどいですけど大丈夫ですか?」
「いや、ははは......大丈夫なのかなあ?」
どんどん流れてくる冷や汗を何とか抑えて事情を説明する。そうすると少しばかり考えるそぶりを見せるミューエル。30秒ほど何かを考えた後に一つの提案をしてくる。
「あの、もしよかったら私にミラさんとルナさんに合わせてくれませんか! 私がちゃんと説明するので!」
彼女が考えて出した提案はミラ達と修羅場になりそうな提案に思えて仕方なかった俺であった。
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