第38話 挨拶

 自分の領地で朝日を迎えた。自分が領主だって気分はあまりしないな。ベッドで熟睡中の二人を起こさないようにベッドを出て、顔を洗いに行く。冷たい水で顔を洗うと目が覚めるんだよね。寝間着から私服に着替え、髪の毛をちょちょっと整える。二人はまだ寝てるっぽいので先に昼食を作る。今日は軽くスクランブルエッグとソーセージでいいかなあ。




 10分程で朝食が完成する。完成したと同時に二人がよろよろと食堂に現れる。ミミとしっぽがへにゃりとしているのがなんとも可愛いが先に顔を洗わせる。持論だけどボーっとしながら朝食を食べると普通に食べるよりも早くお腹がすくんだよね。




「タクミさん、今日は何しますか?」


「そうだね、村民のみんなに挨拶したらその後は予定がないと思うから花の種でも埋めようか」




 おお、ミラとルナが喜んでる。ミミがパタパタしてる。ミラたちに癒されながら朝食を終えて、みんなでゆったりしていると、玄関からノックの音が聞こえてくる。




「はいはーい、今開けますよっと」




 地球にいた時のようにゆるい感じでドアを開ける。立っていたのは昨日ここまで案内してくれたヴェスタだ。相変らず年に似合わずがっしりとしたから出してるよなあ。




「お、ヴェスタおはよう。みんなの準備ができたの?」


「はい、祭りを行う際のスペースに集めましたので案内しようと思います」




 よろしく~と、ゆるい感じでヴェスタに付いて行く。昨日は気付かなかったけど結構道がぼこぼこしてるな。挨拶が終わった後は帰りながら道ならしするか。




10分ほど歩くと人だかりが見えてきた。若い連中が多いな。爺さん婆さんは全体の2割くらいか。ヴェスタが言うにはここの村はここ10年ほどでできたかなり新しい村らしく、他の村々からの移民ばかりだそうだ。なるほどねえ。これなら俺が改造していっても付いて行けそうだな。




 村民の前に行くと踊り場のような石材のスペースがあり、ヴェスタがそこに促す。そこに立つと皆のかをがよく見える。うう、なんか緊張してきた。校長先生って意外にすごかったんだな......。俺ならいけると心の中で気合を入れて話し出す。




「皆さん、初めまして。今日からこの村を治めることになったタクミです。初めて領主をやるので至らない点が多々あるのでその時は皆さんに頼りますのでよろしく。えーっと、まず俺が領主になった時にベン、もとい国王さまからは俺のやりたいように統治してよいと言われてるから俺がやりたいなと思ったことはガンガンやっていくのでみんなも何かやりたいと思ったときは教えてくれ。あまりに不可能なことじゃなければ可能な限りやっていくつもりだ。みんな今日からよろしく!」




 伝えたいことを伝え終え一息つくとミラたちがぱちぱち拍手してくれる。それからヴェスタが拍手をし、さらに一人また一人と拍手が広がっていく。100人分の拍手が俺に向けられたとき少し圧倒されたのは内緒だ。




 その後、町民の人たちと30分程話をして帰宅する。もちろん帰りながら魔法を使いしっかりと地面を均していく。さすが魔法だね。一瞬でぼこぼこだったのがしっかり固められて歩いても気にならないくらいになった。






 自宅に帰った後はミラたちのお楽しみ、庭にお花やら何やらを埋めていこうのコーナーです。この世界の花は地球にあった花と似ているものが多く、俺もいくつか花の種を選んでいる。みんなでここはこの色、あそこはこの色と決めながらワイワイ植えていく。たくさん買ったはずだが花壇は思ったよりも広くて少しスペースができてしまった。今度また新しい種を買ってこないとねとみんなで笑いあった。




「花を植えたから今度は果物の木でも植えてみるかな」


「どんなの植えるんですか?」


「とりあえずベガの木を植えてみようかなと」




 ベガのなる種を花壇の花を邪魔をしないように数本を植えていく。ちゃんと育ってくれよと思いを込めながら埋めていく。ベガの木は成長が速いらしく、3年もあれば実を付けるらしい。




 予定していたことが終わったので、思い付きで見栄えがよさそうな所に池を作る。




 ベンの城の方にも池があったから俺も作っちゃおうと言う魂胆だ。半径10メートルほどの池を作る。魔法で作ったからか水がスゴイ透き通っている。ここに魚か何か飼ったらすごそうだなあと思いながら石に浄化の付与をして何個か池に放り込む。こうすれば多分綺麗な池を保てる! 気がする。










 うーん、今日やりたいことはもうあらかた終わっちゃったけど何かやりたいことあるかなあと考える。町の整備にすべての家にトイレを設置すること、俺がいない時に盗賊とかに負けないように戦闘訓練とかもしておきたいかなあ。まあ、どれも今日は無理かなあ。よっしゃ今日はもうゆっくりしようかな!




「ミラ、ルナ、この後は特にやることが無いから家でまったり過ごそうと思うけどどうかな?」


「大賛成です! タクミさん早くいきましょう!」


「そうです! お家でゆったりしましょう!」




 二人に腕をひかれながら屋敷に入っていく。種植えで結構土に汚れたので先にお風呂に入る。お風呂に入ったら、お待ちかねのごろごろタイム。ミラ達とにゃんにゃんしながら時間をつぶしていく。ここ最近こういう時間がなかったから最高に充実した時間を過ごしている。地球にいた時もこういうごろごろの時間がなんだかんだ一番好きだったからな。




 でもまた明日から忙しくなりそうだなあ。てかさ、領主なんていったい何すればいいのさ。ちょっと明日か明後日あたりにベンに聞きに行くかな。アポなしでな。え? 国王にそんなことして無礼にならないかだって? 大丈夫! 俺とベンの仲なんだから何にも問題はないさ!

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