第37話 新居

「お、あそこが目的地かな?」


「これからの生活が結構楽しみですね!」




 ゆったりとした速度で馬車を進めること3日。目的地の村の外観が見えてきた。ベンに聞いた話だが、村民は全員で100人と少し少ないらしい。俺から言わせれば100人は結構な人数だと思うけどね。




 膝上で眠ってるミラの頭を撫でながらルナと新居に行ったら何をするかで盛り上がっていると、村の入り口に着いたようだ。ミラを起こして馬車を下りる。




「おお、これは新鮮だなあ」




 異世界に来てから、街や都という者は見てきたけど村は地球にいた時を含めて初めて見るから初めて異世界に来た時のような感動が沸き上がる。ミラとルナは普通な感覚らしく、庭に何を植えるかで盛り上がってる。なんか俺一人だけ舞い上がってて恥ずかしいな......。




 恥ずかしさを感じ始めたころに、村の中から一人の60代ほどのおじいさんがこちらに近づいてくる。結構ガッシリした体つきをしている。




「あなた様がこの村を収めることになったタクミ様ですか?」


「はい、そういうことになってます。これからよろしくお願いします」




 ペコリとお辞儀をすると、お爺さんが目を開いて驚いている。む、なぜそんなに驚いているんだ、いくら学校の授業を居眠りしてるからってお辞儀をするくらいはできるぞ。




 むむむっとなっていると、おじいさんの自己紹介が始まった。




「これは失礼いたしました。私はこの村の村長をしていますヴェスタルと申します。先ほどは失礼しました。報告されていた内容とかけ離れていたもので......」




 どうやら、報告されていた内容がダンジョン攻略した人間でドラゴンをも単独で打ち滅ぼす容赦のない人間だと聞いていたらしい。これは、後でベンにお仕置きしなければ。10分程雑談をして何とか誤解を解き一息ついたところで、新しい俺たちのホームに案内してもらう。今日はこれが一番の楽しみにしてたからな!














「此方が新しくタクミ様が住んでいただく館でございます」


「これが新しい家か、前の家より大きいってすごいな」




 見上げると、作りは3階建てで広さは前の家の1.5倍ほど、村から15分くらい離れてるのはこの家を建てるためか。ここら一帯はどうやら俺の敷地らしく何をしてもいいらしい。敷地って言っても大分広く大学の敷地並みに広い。こんなに広いんならサッカー場と野球場を2面ずつ作っても余裕がある。




「あのヴェスタ、確かこの家から少し行ったところに森があるじゃん?」


「ありますね......あ、伐採をしてくれるなら多少は自分の領地にしてもよいと仰っておりました」




 わお、ならもし領地が足りなくなったら伐採活動をすればいいな。ヴェスタには明日町民に挨拶するから町民が集まれるほどの広間に集めるように伝え今日はわかれる。










「さて、お引っ越し作業するよ!」


「「おー!」」




 今の時刻は11時を少し過ぎたところだ。部屋割りを決めようとしたが、ミラとルナが一緒の部屋がいいと言い2階の一番広い部屋に3人で過ごすことになった。他の部屋は一番日あたりがいいところを俺の仕事部屋兼くつろぎ場に、あとはとりあえず空き部屋にしてある。




 1階は食堂、調理場、応接間、その他は2階よりは狭い個室が10個ほど。そして、3階はめちゃくちゃ広く、ドアが二つしかない。一部屋は、2階の3部屋分の広さで、軽く20人は入れるほどの広さだ。




「ここまで広いのは感動だが、問題はトイレだな......」

「元のおうちのトイレじゃないともうできないですよ......」

「わ、私も他のトイレだともう......」




 そう、この世界のトイレは全国共通でぼっとん便所なのだ。だから普通の民家のトイレはなかなかに臭いし、王族であってもあんまり気にならないがやっぱり臭いわけで。あまりにも臭くてたまらないから家を買ったときにすぐにトイレを作ったのだ。




 幸いなことに、1ヶ月は準備時間に使えたので10個ほど予備のトイレ容器を作っていたのだ。構造は単純で形は地球で有名だったT□T□さんのトイレをオマージュして、水洗の代わりに魔法で排泄物を消し飛ばす様にして、汚れも付かず臭いもしない素晴らしいものにしたのだ。




 ベンの家に2個ほど付けてやったら他の場所でトイレできなくなっちまうと褒められてしまった。1時間ほどですべてのトイレを付け替えて一息ついたところでお昼になった。今日の昼食はミラのお手製サンドイッチだ。




「簡単な物しか作れませんでしたが召し上がってください!」




 どれもこれも、最高に美味しくすぐに食べ終えてしまった。昼食を食べ終えたらお引っ越しの続きをするわけで、トイレが終わったのでとりあえずは俺たちの部屋に家具を置いていく。




 3人であーだこーだ言いながらベッドとソファ、机にいすを置いていく。ベンから貰ったベッドとソファはこの部屋に置いている。3人でベッドの感触を楽しんでいるといつのまにか寝てしまった。




 ガッツリ寝てしまったらしく。目が覚めたら太陽が西に傾いて沈んで行ってそろそろ全て隠れてしまう頃だ。まだ目覚めてない2人に毛布を掛けてあげて、ベッドに付与魔法をパパッとつけて、自分の部屋に机やいすを置きに行く。




「自分の部屋って言うのはいいなあ。好きなものを好きなだけ置けるしなあ」




 鼻歌を歌いながらいろいろなもを置いていく。1ヶ月の間に色々なお店を回り気に入った本や魔道具を置いていく。魔道具は買って自分で改造しているから自分好みの効果を発動してくれる。クーラーや扇風機、明かりなんかも作った。




 1時間ほどで部屋が完成し、ミラ達のために食堂で夕食を作っている。今日はミートソーススパにする。パスタの中だと一番人気だ。作り終えるころには匂いを嗅ぎつけたミラたちが駆け下りてきた。




 大好物だからか、おかわりをしてくる。夕食を食べながら明日のことについて話す。どんな花を植えるかや果物の木を植えるのもいいなど話題は尽きなかった。

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