第36話 技術指導

 さてさて、教えるって言っても何から教えればよいのか。とりあえず普段はどんなことをしているのか聞いてみるかな。




「お前ら! 普段はどのように訓練をしているのか私に見せてみろ!」


「サーイエッサー! 訓練場に案内します!」




 みんなで部屋を出て訓練場に向かう。ベンも練習風景を見たいらしくついてくるらしい。10分程移動して訓練場に到着する。俺含めた4人は従者が持ってきた椅子に座る。テーブルまで持って来たらしくお菓子と紅茶が出てきた。




「闇の訓練を見るのは久々だな」


「流石に私兵だから訓練内容くらい知ってるか」




 ベンは少しワクワクしながら訓練を見ている。俺も観察するかな。ミラとルナは出てきたお菓子を平らげて俺に物足りなさそうな顔を向けてくる。結構入ってたよなと思いながら従者の人に補充を頼んでから改めて観察をする。














 ......一通り見させてもらったがそんなに目立ってダメな所はない気がする。まあ、元高校生の俺にこんなのの善し悪しなんて分からないけどね! でも基礎トレーニングが足らない気がするな。まずはそこからかな。




「集合!」




 ベンたちから数メートル離れて集合をかける。号令をかけてすぐに整列する。集合の乱れが無くなってきたな。大変素晴らしいことだ。




「練習を見させてもらった。目に見えて悪いものはなかった。だが基礎トレーニングの時間が少ないのが気になった。貴様らにはもっと基礎を叩きこむ必要がある! ということで練習を見ながら俺が考えたメニューを一通りやってもらう!分かったか!」




「「「サーイエッサー!」」」






 俺が地球にいた時に見たことがある柔軟体操に筋トレ、ダッシュなど魔力を一切使わないでやらせる。魔力を使わないでこのメニューをやると結構つらいのだ。




 このことに気づいたのはギルマスたちと特訓しているときだ。いろんな方法で戦っているとき、意識して魔力を使わずに戦ったことがある。




そのとき、意識してない時に比べて10倍くらい疲れた記憶があるのを思い出して自分が訓練するときは魔力を使わないで行ってみた。そのおかげか身体がさらに思い通りに動かせるようになったのでこいつらにもそれを実践してもらう。












 2時間たっぷりと基礎トレーニングをすると国王の私兵とは思えないくらいみんながバテバテになっている。これは情けないなあ。ベンが驚いてるよ。




「どうしたお前ら、こんなのまだ序の口だぞ! これから技術指導に入るんだ。こんなんでヘバるな!」


「サー......イエッサー!」




 全員根性で姿勢を正し技術指導に入る。






「まず、俺に喧嘩を売ってきた奴にも言ったことだが、気配の消し方が下手過ぎる」




 下手の意味が良く分からなかった奴が質問してくる。




「下手とはどのようなことでしょうか!」




「よし、いい質問だ。お前の名前は何だ!」


「べスであります!」




 べスの質問に応えるべく実践して説明する。べスを俺の隣に立たせ気配を消してもらう。一般的な消し方としてはこれで満点らしい。




「これが普通の気配の消し方だと思わないでほしい。俺からしたらこの気配の消し方では逆に自分の居場所をさらしているように思える」




 だからこうやって気配を消すんだと言い、体内の魔力を自然の魔素と同調させる。そうすると中止していたはずなのにその場から忽然と消えたような錯覚を闇の部隊たちに与える。




「こんな感じに自然の魔素と自分の体の中にある魔力を同調させて気配を消せば目の前にいるはずなのにまるで存在していないかのようになる」




 お前らはまずこれを完璧にしてもらうと伝えて、練習に入る。数日かけて完璧にしてもらう予定だったが、べスやさっきボコされた奴など何人かはかなり完成に近い状態になっている。これは驚いた、流石はエリート中のエリートだ。




 感心しながら進みが遅いやつにアドバイスをしていると、夕方になるころにはほとんどの人間が完成に近づいていた。




「お前らにはどうやら素質があるようだ」




 解散する前に褒めてやるとみんなが喜んでいる。そうだよな、褒められるとうれしいもんな。






「ということで、明日の基礎トレーニングをさらに増やしもっと技術指導に力をいれられる」


「具体的にはどのくらい増やされるのでしょうか!」




 大体2倍くらいかなと伝えると皆からうめき声が聞こえてくる。おいおい、こんなんで呻いてたらこの先が思いやられるな。最終的には3時間ほどで今日の10倍くらい増やす予定なんだから!




「大丈夫だ、今日のお前らを見てたら行ける気がしてる。頑張れ!」




「「「サ、サーイエッサー!」」」




 こうして、タクミのワクワク技術指導が始まりを告げた。




















 1ヶ月が経った。最終目標の基礎トレ10倍をこなし、私兵に必要な技術は大体詰め込めた気がする。みんながみんな覚えがよくポンポン進んでいったからこんなに早くすべて終了したと思う。今は訓練場で卒業テストを行っていたところだ。




 素晴らしいことに全員合格して卒業できることになった。全員を横一列に並べさせて話し出す。




「貴様ら、この1ヶ月良く付いてきた。1月前のお前らはどうしようもないゴミクズばっかだったが、今の貴様らは立派な兵士だ! 王を守護する盾にも、いかなる敵をも貫く矛にもなれる。この1ヶ月の訓練を忘れることなく日々己を高め続ければ、お前たちは無様に死ぬことは決してない!」




 頭に浮かんだことを正直に話していくと6人全員がぼろぼろ涙を流している。そんなに辛かったか。厳しくしすぎたかなと思いながらも演説? を続ける。




「今日で卒業になるが、短い間でも貴様らを指導できたことを誇りに思う。これからお前たちには様々な命令が下りそれを遂行することになるだろう。どんな命令も基礎を忘れずに慎重に行えば今のお前たちなら、100%成功できると信じている」




 一人一人と握手をして卒業を祝う。1ヶ月で良くここまで成長できたよなあ。生まれて初めての教え子だったので感慨深いものがある。




 ベンに感想を聞くと予想以上過ぎたらしく驚きを通り越して呆れられた。




 育成期感が終了する3日ほど前に俺の土地の準備が整った話を聞く。ミラとルナたちと共にお花屋さんに行って育てたい花の種をたくさん買う。今度の自分の土地に咲く花を想像して3人の話が弾む。自宅の花たちは俺の付与魔法を使い、枯れないようにしたので問題なしだ。




 さあ、今度は食材を買いこまないとな。転移魔法で帰ってこれるとはいえ毎回買いに行くのはめんどいのだ。他にも日用品や俺が欲しいなと思った道具を大量に買いまくる。




 ベンが言うには、俺が自由に改造していい土地らしく、軍隊は作らないでほしいらしいがそれ以外なら大体は問題ないらしい。村も村民が許可を出したら改造オッケーらしい。村に着いたら何をしようかを考えるだけでワクワクしてくる。




 俺が文明開化を起こしてやるぜ!




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