第34話 謁見

ベンと出会ってから三日ほどたった。買い物をしたり、ミラ達とイチャイチャしたりと充実した日を送っていた。






 8時半ごろに起床し、朝食を食べていると玄関の方からノック音が聞こえてきた。こんな朝っぱら誰だよと思いながらドアを開けると、一人の初老の男性が立っていた。




「朝早くに失礼いたします。私、国王の命で参りましたドランと申します」




 そういえば近いうちに使者が来るって言ってたな。結構早く来たな。まだ朝食中だから少し待ってもらうけどね。




「どうも。タクミです。ちょっとまだ朝食中なので少し待ってもらっていいですか?」


「構いませんよ。では、食事が終わりましたら入り口の方にいらしてください。馬車の前で待っております。」




 ドランは嫌な顔一つせずに入り口の方に歩いて行った。入り口の門を見てみると、豪華な馬車が一台止まっている。さてっと、ちゃちゃっと飯食って行きますかな。






 20分程で朝食と外出の準備を終える。ミラとルナは城に行くことに緊張しているのか、動きが少し固い。やっぱりこの世界の人にとっては緊張するものなのか? 地球にいた時には国王とか間近にいなかったしいまいちピンと来ないから緊張も何もしないんだよな......。








「お待たせしました」


「いえいえ、それでは参りましょうか」


 ドランを含めて四人で馬車に乗り込み馬車が出発する。王城用の馬車でもやっぱり揺れるんだな。ケツが痛いわあ。ミラ達は辛そうだしひざ上に乗せるか。




「ミラ、ルナ馬車は揺れるだろう。膝上のってな」




 ひょいっと二人を膝の上にのせてドランの方を見る。揺れになれてるのか気にしていない様子で座っている。




「ドランさんはすごいですね。この揺れも気にならないようですし」


「私は普段から乗り慣れてるので気にならないだけです」




 流石だなあっと思っているとサスペンションのことを思い出したのでドランに説明してみる。




「それは素晴らしいものですね! 鍛冶師に先程の話をしてもよろしいでしょうか? 完成すれば確実に莫大な利益が出ると思うのですが......」


「では、成功したらまた話すということでいいですかね?」


 サスペンションの話が終わり、ドランさんとも会話が弾みいい感じな雰囲気になったころに王城に着いた。




「おお、デカいなあ」


 馬車から城を見ると洋風のザ・城という何十メートルもある城が建っていた。ミラもルナも城を見てはしゃいでるようだ。




 門に入り5分ほど進むと入り口に停車する。馬車を下りて改めて見上げると、正統派の城のように無駄な外壁の装飾はなくシンプルな美しさがある。




「うわあ! すごい綺麗ですね!」


「タ、タクミ様、私がこんなとこに入ってもいいのでしょうか?」


「大丈夫でしょ。大きい家に入ると思えば」


 そういうものなのでしょうか......? と俺の裾をちょこんとつまみ、まだちょっと緊張している。ルナの頭を撫でていると、ドランが城のドアを開いてくれる。




「こちらです。すぐに謁見を始めますのでこご案内いたします」


 城内に入り、廊下をまっすぐ進み一際大きいドアの前に立つ。謁見の際の注意事項を進みながら教わった。




・謁見の場に入ったら中ほどまで進み膝をつく


・国王の面を上げよは二度目で顔を上げる


・後ははいはい言っていればいい




 最後が適当だなと思いながら髪の毛をちょちょっと弄って直す。異世界だからってもともとは現役高校生だからね。髪の毛は気になるお年頃なのさ!




 ドランが開きますよと言い扉を開く。入る前に全体を見てみたがとにかく豪華だ、キンキラしてる。




 ドランに言われた通りに中ほどまで進み膝をつき言葉を待つ。




「面を上げよ」


 ふふん、ここではあげないんだろ? 俺は知ってるんだぜ。ていうかなんか笑ってね? なんかおかしいか?




「よ、良い面を上げよ」


 やっぱり笑ってるよなと思い顔を上げると、そこにはこの間会ったベンの姿があった。ベンじゃん! というのを何とかこらていると、ベンがニヤニヤしている。あんにゃろわざわざ言わずに隠してたのかよ!






「タクミとそのパーティたちよ、ダンジョン攻略まことに素晴らしい成果であった。その成果にを称え、褒美を出す何か意見はあるか?」




「いえ、特にはございません」


「そうか、では何かこちらで見繕っておこう」




 ありがとうございますと言うと、国王の隣に立っていたドランが何か長々と読み上げて謁見が終了した。




「タクミとそのパーティよ、後でドランの案内で会談の間に来るように。では解散だ」


 国王が先に退出し、ほかの貴族たちがぞろぞろと出てく。貴族が出ていくとドランが案内いたしますと言い俺たちを連れて行ってくれる。数分ほど歩き一つの扉をノックして中に入る。そこには紅茶を飲んでいるベンがいた。




 トビラが閉まるのを確認する。なんか天井裏にいるけどいいか。ベンに文句を言う。




「ベンよ、国王ならあの日に言ってくれればよかったのによ」


「悪い悪い、謁見当日に驚かせてやろうと思ってな」


 ハハハと大きな声で笑いながら答える。ベンの作戦にまんまと嵌ってしまったわけね。




「さてと、タクミ。褒美の話をしようぜ」


「褒美って言ってもな、本当に何でもいいんだけど。てか、天井裏になんかいるけどそういう話ってしてもいいのか?」




 天井裏の気配について伝えると、ドランは目を見開き、ベンは楽しそうに笑う。




「流石タクミだな! あそこにいるのはうちの国の護衛部隊だな。もうばれてるから出てきていいぞ」


 ベンが一声かけると音も立てずに床に着地する。ほほう、ちょっとはできるな。




「それにしても良く分かったな! 俺の私兵の中でも一番強いやつなんだけどな」


「分かったも何もあんなに露骨な気配の消し方してればすぐに分かるよ」


 さも当然のように言うと降りてきた奴が少し殺気を漏らしてきた。ほほう、やろうってのかい。ベンは止めようとしたが、もう遅いのよね。




「楽しいお話の時にこんなことはしたくないけど殺意を向けられたらこちらも返さねばな。おい、これが本当の殺気だ良く味わえい!」




 魔力リングを外し死なないギリギリのラインで魔力に濃密な殺気と威圧をのせてそいつに飛ばす。何かを考える前にそいつは震えだして気絶する。すると仲間の人間が音もなく気絶した奴を攫って行った。




「ふう、さて褒美の話をしようぜ!」


「呑気だなお前は!」




 突っ込まれながらも褒美の話を始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る