第30話 本でお勉強

お昼頃に目が覚めて、着替えて扉を開けると、食堂からいい匂いがして来たのでその匂いにつられるように下に降りる。




「おはようございますタクミさん! あと少しでできるので座って待っててください」


「おっけ~い」


 ミラに言われた通りに席に着く。数分ほど待つとミラとルナが料理を運んでくる。パンにサラダとスープ、お腹にやさしい朝兼お昼ご飯だ。




 お昼ご飯を食べながら今日は何をするか考える。今日は図書館にでも行って魔法のことを調べるかな。この世界ではどういうふうに魔法が使われてるのか全く分からないしね。その後に箸を作ってギルドにでも顔を出そうかな。




「ミラとルナは今日は何かするの? 俺は今日図書館に行く予定だけど」


「んー、私はタクミさんに付いて行きます。どこかに行く予定はないですし」


「私はこの後ギルドの方に行ってランクアップと狩った魔物の報酬をもらいに行くので別行動ですね」




 ふむ、ミラは俺と図書館で、ルナは冒険者ギルドね。そのあとは雑談をしながらみんなで家を出る。ギルドと図書館は途中までは一緒なので3人で手をつないで歩いていく。




「タクミ様、怪我をしないように気を付けてくださいね! ミラちゃんも変な男に絡まれないように気を付けてね!」


「おう、ルナも気をつけてな、何かあったら図書館にすぐ来るんだよ」


「ルーちゃんも気を付けてね」




 ミラはルナを拾った日には仲良くなっていて、お互いをちゃん付けで呼び合うほど仲が良くなった。拾った日のルナはガリガリで命が危なかったから、こんなに元気になってくれてよかったよ。ちょっと元気過ぎて精力を抜かれまくるのが少し問題だけど......。






 ルナと別れて図書館に入る。入場料は一人銅貨3枚。帰るときに1枚返却してくれるそうだ。




 お金を払って中に入る。おお、地球にある図書館に匹敵するぐらいの本があるな、お目当ての本を探す。




「魔法関連魔法関連っと......。あった、って多いな」


 魔法関連の本はザッと身でも100冊近くあり、全部読むのは骨が折れそうだ。今回は入門的なのを見ようかな。




 魔法の入門書的なものを適当に5,6冊手に取り近くのテーブルに置く。ミラもどこからか本を持ってきていた。冒険譚かな? ミラは俺の隣に座って本を読み始めた。すごい集中して読んでるな。俺も負けてられないな!




 入門書をパラパラとめくり、暗記していく。数ページほどパラパラしてると、魔法の説明が乗っていた。






『魔法とは、己の中にある魔力と呼ばれるものをイメージで変化させて発動させるものである。魔法を使うには詠唱を使う場合が多い。詠唱は、自分のイメージを補い補助してくれるものなので必ず行うように。』




『次に魔法系統だが、この世界には大きく、7つの属性がある。火、水、土、風、光、闇、空間だ。火、水、土、風の4属性は基本属性と呼ばれていて適性があり、訓練を行えば多少なりとも使えるようになる属性だ。光、闇、空間の3属性は才能に左右される属性だ。どれだけ努力しても身に着かないものもいれば、少し努力するだけで使える者もいる......』




 詠唱って必ずするもんなのか、いちいち詠唱してる間にやられちゃいそうだけどな。長い説明を斜め読みしていくと、次は属性の説明に入った。




『次は各属性の話をしていこう。まずは火属性だ、火属性は火を扱う魔法だ、主に、火球ファイヤーボール火壁ファイヤーウォール火矢ファイヤーアローなどが挙げられる。魔法属性としての攻撃力は高いが、防御力はあまり期待できない』




『次に水属性、水属性は、水を生み出しそれを扱う魔法だ。主に水球ウォーターボール水壁アクアウォール氷矢アイスアローが上げられる。水属性は各属性の中で一番バランスの取れた魔法だ。だが、ここぞというときに決定打になれないのが欠点でもある―――』






 基本属性の説明を流し読みしていき、残りの3属性の説明に移った。これはなかなか興味を惹かれるものだった。




『基本属性の次は特殊な属性の説明をしよう。まずは光属性、光属性は別名聖属性とも呼ばれ、回復魔法や浄化魔法が挙げられる。回復魔法や浄化魔法は才能が必要だが、適性があり、努力を続ければ必ず扱うことができると言われている。だが、欠点として詠唱が長く後方で守られながら出ないと発動できないことが多い。他にも、光球ライトボールなどがあるが、目くらまし程度でダメージにはならない。』






『次は闇属性だ、闇属性は主に精神系魔法と感覚奪取魔法が挙げられるだろう。精神系魔法とは、精神に魔法を使い、洗脳をしたり幻覚を見せて心を乱したりすることができる。非常に危険な魔法なので、国が厳重に使用できるものを管理している。感覚奪取魔法とは、視覚や聴覚などの感覚を一時的に奪うことが可能である。このどれらも非常に危険だが、使用者よりも強い魔力抵抗があれば術にかかることはあまりない』




 闇魔法ってめちゃめちゃ危....。そりゃ国家単位で厳重に管理するわな。空間魔法についてはあまり気になることは書いていなかった。


















「さてっと、次の本は......」


 左の本の山を読んでは右に置いてを繰り返すこと2時間、持ってきた本が残り数冊になったころに新しい魔法の本を見つける。




「ん、なんだこれ? 付与魔法完全案内か。他にも魔法ってあったのか。てか本って言えるのかこれ、ペラペラやん」


 本というにはあまりにも薄く10ページもないもので本というよりかは冊子と言った方が適切な気がする。パラパラとページをめくると付与魔法の説明が乗っていた。






『付与魔法とは主に物品に魔法であらゆる効果を付与できるものだ。例えば普通の剣に切れ味を上げたいと思った場合、付与魔法で斬撃効果を付ければ普通の剣よりも切れ味が上がった剣が出来上がる。便利な魔法なのだが、あまり見かけないのには理由がある』




『付与魔法を使うものは一定以上の魔力が無ければそもそも発動すらしない。詳しい理由はわかっていない。付与魔法は特殊魔法よりも使い手が少なく、たとえ付与魔法の才能があったとしても付与する際に最も重要となる想像力がしっかりしていないと品物を劣化させる可能性が出てくる』




 付与魔法か、なんか面白そうだな。ちょっとやってみるかな! 今着ている服に何か付与するか考える。




「そういえばバルディアが地球の服に不壊の力を宿したとか手紙に書いてあったよな。よし不壊を付与してみよう」




 不壊、不壊かあ。絶対に壊れないってことだろ? まずは物理攻撃を無効にするイメージ。これはスキルを持ってるから問題なくできる。次は魔法か、魔法も同じでいいのか。よし! このイメージを服に付与するか! 




「あれ、これってどうやって付与するんだ?」


 残りの冊子のページをめくると付与の仕方が乗っていた。




『付与の仕方についてだが、まず付与したいものを自分の魔力で包み込むその次にその魔力に付与したい内容を想像しながら魔力を流し込む。上手くいけば付与は成功して自分が想像した通りの効果を発揮してくれる。注意だが、付与内容に釣り合わない素材に付与しても大した効果は得られない』




 おっけい、魔力で包んでっと、さっきの内容を想像しながら魔力を流す。なんだよ、流せば流すほど入っていくな。




 1分程流し込んでいると、鈍い光が2秒ほど服から発せられて元に戻る。これで付与完成か。確認してみよ。








一般的な衣服、この世界では私服として用いられている。主に平民が着る服。付与:不壊








 お、なんだよこんなに簡単に付与できるのか、案外難しいもんじゃないのかな! 楽観的に考えて、付与が成功したことに喜び別の本を読み始める。




 補足だが、この世界で付与魔法を使えるのは200人もおらず、今適当に付与した者はダンジョンでも滅多に見つからない程にレアなものでこれを付与できる付与術師はこの世にはいない。

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