第28話 久しぶりの再会

 声をかけられた方に振り向く。そこには懐かしのバルディアと知らない人? が座布団に座ってお茶を飲んでいた。




「お久しぶりです。俺は何でここに戻ってきたのでしょうか。もしかして俺死んじゃいました?」


「お主は死んどらんぞ。とりあえずここに座りなさい」


 何もないところから座布団とお茶が現れた。言われた通りに席に座り、お茶を飲む。久しぶりにお茶飲んだけどめちゃくちゃ美味くないかこれ。




 久しぶりのお茶の味を楽しんでいるとバルディアが話し始める。




「今回はお主に話しておくことがいくつかあっての。じゃから少しの間こちらに来てもらったのだ」


「なるほど。でもその前にこちらの人の紹介をしてもらってもいいですか? さっきから少し気になってて......」




 そういえば紹介してなかったわと、笑いながらバルディアが紹介してくれる。




「こいつは魔法神のレギオンだ」


「よろしくお願いしますタクミさん。ここからあなたの魔法を見て楽しんでいますよ」


「み、見てたんですか......。なんか恥ずかしいですね」




 レギオンは身長190センチくらいの青髪に眼鏡をかけた学者感のある人だ。優しい顔をしており、誰からも好かれそうな雰囲気を纏っている。




「私は結構君のことを見ているよ。君が思いつく魔法はどれもあの世界ではとても珍しいのだよ! 複合魔法を扱う者もいるにはいるんだが、君のように柔軟な思考ができていないんだ。単調な物ばかりで眠くなってきてしまうんだ......。あの世界にも君以上に魔法が扱える者もいるけど、やはり君の方が柔軟な発想を持っているのだ」


「ありがとうございます。まさか神様に褒められるなんて思ってなかったです。これからも頑張って魔法を極めていきたいです!」


 レギオンと握手をして、バルディアの用件を聞く。




「ふむ、まず一つ目の用件はダンジョンの攻略の褒美の話だ」


「え? あの金銀財宝が褒美ではないのですか?」


「あんなのはおまけみたいな物だな」




 マジかよ、あれだけでも毎日豪遊しまくって人生6回くらいは遊んで暮らせるぞ......。ま、まあ気にせずに話を聞こう。




「いくつスキルを与えるかを決めるためにお主を呼んだのだ。」


「いくつか決められるのですか?」


「お主だけじゃよ。他のダンジョン攻略者には儂が適当に数を決めて与えていたのじゃ」


「な、なるほど。では、どうやって決めるのですか?」




 これじゃよとさいころを一つ出した。六面ダイスだが4,5,6が無く、1が3面、2,3が1面ずつのサイコロだ。




「これを転がして出た目の数のスキルを与える」


「運勝負ってやつですね。3を出せば俺の勝ちだな」




 さいころを握り、全力で集中してさいころを転がす。器用値を全力で使いさいころを転がる。1回2回と地面らしき場所に落ちて回転する。数秒の間回り続けてさいころが止まる。




「うっしゃあ! 最高の出目がでた!」


「おおう、流石タクミだな。では儂が選んだこの3つのスキルをやろう。向こうの世界に帰ったら確認しておくれ」


「分かりました。で、他のお話しって何でしょうか?」


「うむ、二つ目はお主の魔力についてじゃな」




 魔力? 魔法使ってて別におかしな所なんて何もないけど俺が知らない間にどうにかなってしまったのか?? 自覚症状のないものってめちゃくちゃ怖いやん......。




 自分の身体について心配していると、レギオンが笑いながらあんまり気にすることでもないよと頭を撫でてくる。この年で頭撫でられるなんて思ってなかったわ。




「今の君の魔力は私たちから見ても人間の中でなかなかな保有量になってるからね。そのままでいると魔法が使える者たちのほとんどが君を見て体調を崩すくらいさ!」


「いやいやいや、それ大分問題なんですけど!」


「だからこれを君にプレゼントするよ」


 数秒の間ポケットをごそごそして俺に一つの指輪を渡してくる。そのポケットの中にはいったい何が入ってるんだ......。指輪を貰い。付けてみる。




「うわ、勝手に縮んだ!」


 さすが異世界補正だなと付けた指をしげしげと見ると、レギオンが指輪の説明をしてくれる。




「その指輪はね、装着者の魔力を魔術師の平均魔力レベルに隠蔽してくれるすごいアイテムなのだ!」


「おお! それなら日常生活で問題は怒らなそうですね」


「どんどん使ってね。これは君限定の品だから他の人が装着すると電撃が走るよ! おまけ効果で指輪が一定以上離れると勝手に手元に帰ってくるよ!」


 おおう、それなら盗まれてもなんとかなるか。神様のケアがばっちりすぎる。レギオンに感謝をして、他の話が無いかバルディアに聞く。




「あと一つあるぞ、近々この世界に勇者召喚が起こる。半年後位だったかな」


「え? 勇者召喚するような事態無いですよね? この世界にはラノベみたいな悪の魔王なんていないし......」


「戦争にでも利用するんじゃないかの? 召喚する国はあのアルカナリタ神聖国だしな」


 その国は確か超絶人間至上主義の国だったな。まったく獣人の良さが分からないなんてセンスのSの字もないやつらだな。




「その件は俺に言ってもよかったのですか?」


「かまわんよ、お主で色々楽しませてもらってるからの」


 何それ初耳なんですけど。




「俺で楽しむって何してるんですか?」


 バルディアがいろいろじゃよと話をはぐらかしてくる。だあ! 気になるわ。いったい何して楽しんでるんだよ!




「お主とお主の女との営みは覗けないようになってるから安心せい」


「当り前だわ! それ見られてたら俺明日から外出れねえよ!」


 あ、やべ。ついついため口で話してしまった。怒られるかもとドキドキしているが、バルディアたちは特に怒る素振りも見せずに話し始める。




「おお、やっと砕けた口調になったか。別に敬語を使って話そうとしなくてよいぞ」


「そうですよ、中にはそういうのにうるさい下級神なんかはいますが気にしないでください」


「......わかった。今度からは砕けた口調で話してみるよ。で、今気になったことがあるんだけど神様にランクなんてあるの?」


 ハハハと、にこやかに笑いながらレギオンが話し始める。




「君がいた地球に会社ってあるだろ? その会社には社員や部長や社長なんてものがいるだろう」


「なるほど、結構神様の世界も上下関係ってあるんだ」


「そりゃあるさ、まあそこまで決まった上下関係はあんまりないけどね。下級中級上級最上級くらいかな?」




「位が高くなればなるほど実力が強く人格者が増えるから、言葉遣いくらいで怒るのはせいぜい中級神くらいまでだろうね」


 ほうほう、神様がランク分けされてるのは初めて知った。神様もやっぱり実力主義とかあるんだなあ。レギオスやバルディアなんかはどこのランクに位置しているのかな?




「レギオスやバルディアはどのランクに位置しているの?」


「「最上級クラスだよ(じゃよ)」」






「マジか」








 5分ほど雑談をして、先ほどの話に戻る。脱線するのはお喋りの醍醐味だよね!




「でじゃ、勇者を召喚しているということは遅かれ早かれ世界に何かが起こると言うことだ」


「俺は何かすべきですかね?」


「いや、特に何かすることはないぞ。だから戦争に加担してもいいし神聖国の計画をめちゃくちゃにしてもかまわんぞ」


 ほほう、戦争させるもさせないも俺次第だということだなあ! どうしよっかなあ、獣人が嫌いっていうから台無しにしてやろ!




「なるほど、わかりました。自分の好きにやりたいと思います」


「そうしなさい」


 その後10分ほど雑談をしていると身体が輝き始めた。お、もう時間か。




「そろそろ時間のようだな」


「また時間ができたら呼ぶから楽しみにしててね!」


「楽しみにしてます!」




 10秒ほどで前が見えなくなるほど輝き、光が落ち着くと先ほどいた宝物庫の中だった。だが、鉱石があった場所には輝く魔法陣が一つある。こういうのも鑑定ってできるのかな?






帰還の魔法陣…ダンジョンの入り口に転移する魔法。再使用は72時間後




「へーちゃんと送り返してくれるんだ。そういえば転移魔法って使える奴見たことないわ。今回はこっちで帰ってみるかな」


 帰還の魔法陣に足を踏み入れると、一瞬の浮遊感を感じたと思ったらダンジョンの入り口だった。魔法陣版の転移は浮遊感を感じるのか。あの浮遊感って妙におしっこ行きたくなる感じと似てて嫌なんだよね。周りを見渡すとダンジョンの入り口付近にいた冒険者たちが全員此方を見ている。え、なんでみんなこっち見てんの?




「あ、あの、皆さんなんで此方を見てる「ダンジョン攻略者の誕生だあ!!」」


 誰かが叫んだ瞬間に周りが騒がしくなる。スゲーうるせえ......。ライブの中にいるみたい。




「すごいなタクミ! まさか本当に金の鳳凰を超えちまうなんてよ!」


 俺に話しかけてきたのは、外食をする時によく話す冒険者の一人だ名前はバストン。




「おお、バストン! 当たり前だろ? てかあいつら結構生意気な奴等だったよ。出会った瞬間にすぐに喧嘩売ってきてさ」


「あいつらも数か月前にSランク冒険者になって調子に乗ってるんだろ? 大目に見てやれや」


「俺がSランクになったのもちょっと前だけど調子に乗ったことはないけどな」


 違いねえや! と大笑いしている。するとほかの冒険者も少しづつ俺の方に寄ってきて話しかけてくる。




「な、なあ。80階層以降ってどんな魔物が出てくるんだ?」


「たしか80階層のボス部屋はレッサードラゴンで90階層のボスはレッドドラゴンだったよ」


 ボスについて教えるとみんながドラゴンが出てくるのかと驚いている。バストンも驚いていていた。ふふん驚け驚け。




 みんなと話を楽しんでいるとだんだん日が沈んできた。そろそろ帰らないとミラたちが心配するな。




「悪い! 今日は家にミラたちを待たせてるんだ。この話はまた明日な!」


「おう! あの可愛い女の子達を泣かせるんじゃねえぞ!」


 当り前だろと言い残し、自宅に戻る。
















「ただいま!」


 ドアを開けると、上の階からどたどたと駆け下りてくる音が聞こえる。ん?足音が二つ? ルナが帰ってきてたか!




「おかえりなさいタクミさん!」


「おかえりなさいタクミ様!」


 二人が胸元に飛び込んでくる。優しく受け止めて抱擁する。




「ああ、ただいま!」


 少し強く抱きしめると二人もそれに反応して強く抱きしめてくれる。ああ、この感覚。帰ってきた! って感じだあ。




「タクミさん、今日は1層だけだったのに随分長かったですね、どうかしたのですか?」


「かなり苦戦してね」


 苦戦した内容に話そうとしたときに千切れた腕の方にいたルナが、焦ったような声を上げる。




「タ、タクミ様!? どこかお怪我をされてますよね! タクミ様の血の臭いがします!」


 腕の方を念入りに触り始める。ミラが心配そうにこちらを見てくる。




「ああ、実はボス戦で腕斬り飛ばされちゃって......」


 報告したとたんにミラが真っ白い顔をして泣き出す。ルナすでに異常がないと分かっているのに、泣きながら腕を触っている。あ、泣かせんなって言われた途端に泣かせちまった......。




「タクミさん......。あ、う、腕は?」


「大丈夫だよ。ほらこの通り!」


 元に戻った腕でミラとルナを撫でまくる。1分ほど念入りになでるとやっと落ち着いてくれた。




「タクミさん! もう一人で勝手に大けがしないでくださいね! 今度は怒りますからね!」


「本当です! タクミ様が次大怪我なんてされたら気絶してしまいます!」


「わ、わかった。もうミラたちがいない時に無理はしないよ」




 今度大怪我したら確実に怒られるだけじゃ済まなそうだな。気を付けないと......

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