第26話 ダンジョン攻略あと一歩
「相変らず竜だけなのね......」
ダンジョンに入って5時間ほどたち現在は88階層。途中から竜を倒さずに進んでいるから結構速いペース来れている。でもこのペースだと今日中に攻略できないぞ......。よし、ここからは全力で走ってやりますかね!
クラウチングスタートの構えをとる。気分は短距離走の選手だ。人に見られてるとできないが誰も見てなければ俺は何だってできるんだぜえ!
「よーい......ドン!」
全身に力を入れて走り出す。走っている間に向かってくる風は魔法で当たらないようにする。風が当たらないだけでも相当速度が上がる。地面は元から固いのかどれだけ強く踏みしめても壊れない。なんでだろ、ボス戦の時も地面が壊れることがなかったな......。ダンジョン効果なのかなと納得して駆け出す。
全力疾走をして2時間。ボス部屋前にたどり着いた。扉の前で腰を下ろし昼食をとる。家で作ったサンドイッチといつもの串焼きだ。そういえば一人で食事をとるのは久しぶりだなあ。ミラは今何をしているんだろうか、ちゃんと横になって休んでいるかな? ルナはちゃんと昇格試験頑張っているかな? 昇格できたらダンジョンを一緒に回るんだから早く攻略しないとね。
「一人で食事してるといろいろ考えちゃうな。さっさと攻略しちゃうか」
最後のサンドイッチ腹に収めボス部屋を開ける。
「こ......れが、龍、本当のドラゴンか......」
ボス部屋に入った瞬間に今まで戦ってきたどの敵よりも強いことが本能的に分かった。高さはゆうに30メートルは超えている。その体格を支える身体は恐ろしいほど発達しており一般人なら撫でられただけで即死だろう。肌は見る者全てを焼きつくさんとする赤色。睨むだけで人を殺すことができそうな鋭い眼光。
「ははは、膝が笑ってるよ......。でも、こいつに勝たなきゃその先になんて進めないよな」
まずは鑑定だ。どんな数値でも驚かないぞ......
名前:レッドドラゴン
種族:龍
性別:――
年齢:――
Lv:385
HP:438971/438791
MP:529963/529963
力 :465822
防御:476653
速さ:328819
器用:428518
魔法
龍魔法lv9
スキル
硬化lv8 剛腕lv9 威圧lv8 咆哮lv8 飛翔 重撃lv8 狂化 蘇生
称号
狂暴化
蘇生者
さすが本物のドラゴンだな。バカみたいなステータスだよ......。さあ、ぶっ倒すか!
「うおおおおおお!」
震える足を咆哮を上げることで震えを止める。気持ちがすべて戦いに向けば震えは勝手に止まる! ドラゴンの間合いに入ったとたんに龍が動き出す。咆哮を上げて尾を振り落とす。
速い、でも避けられない速さじゃない! 転がるように避け攻撃が届くところまで駆け寄る。なりふり構わず全力でぶん殴る。
「おらあ!」
ドンと重い音が響くが余りダメージが入っていないようだ。龍が殴られた足で俺を蹴り上げる。くそ! 避けられない、受けきるしかない!
「グッ!?」
ただ蹴られただけ、なのに目の前で砲弾に撃ち抜かれたような一撃だ。物凄い速度で壁にめり込む。攻撃無効のスキルの効果が辛いぞ!
このスキルにはいくつか弱点がある事が今のでわかった。俺の防御力を上回らなければ目の前で弾く。俺の防御力を上回った場合は上回った分だけ受け流す様に後ろに飛ぶ。その際の衝撃は自分に入ってくる。予想だが攻撃無効のスキルを上回るような攻撃を受けたら、考えたくないが多分目の前で張られているスキルが壊れるだろう。
「早めに決着を付けないとマズいぞ。全力で叩き潰さないと!」
龍と俺の距離はおよそ200メートルほど、魔法を全力で放つくらいの距離は開いている。79階層の敵に使ったやつを放つか、ふざけて作った魔法だけど威力は確かだ。
水を圧縮していく。まだ、まだ足りない! 魔力操作を全力で使い圧縮していく。圧縮した場所の空間がゆがみ始めた。龍もこの魔法が危険と理解したのか、口に炎を集める。これが龍魔法か......。これはブレスかな、マズいマズい、なんて速さで炎を集めてるんだ!
「こんなろ! よし、できた!」
先に圧縮を終え、転移で龍の目の前に行き一気に魔法を放つ。目の前に来て驚いたようだが龍のブレスも準備を終えたようで遠慮なく放ってくる。水魔法と龍魔法の炎がぶつかる。両者の魔法が触れたとたんから水蒸気になっていく。すぐに周りが水蒸気で見えなくなる。炎の温度で回りが熱くなってくる。熱さから逃げ出したくなるが、一瞬でも魔法を緩めれば即灰だ。
流れ出る汗を無視して魔法だけに集中する。だが、徐々に押されだして行くのが分かる。なんでだ、圧縮のレベルは同じくらいのはずだ! 純粋なステータスの差か!
「しっかりと圧縮して放ったはずだ......。もしかして手元の圧縮だけじゃダメなのか?」
たしかに水が通る道が細い方が勢いがいいはずだ、なりふり構っていられないとにかくやるしかない!
放出水魔法も圧縮していく、魔力が減っていくのが手に取るようにわかる。だがここでやらなきゃ、ここで成功させなきゃ死んじまう、ミラやルナを置いて先には逝けない。やれやれやれ!
全力で圧縮させる。数秒の間魔法が揺らいだが、しっかりと圧縮することができた。押され気味だった魔法が段々押し返していく。龍は焦っているが対抗策がないらしくただただブレスを吐き続ける事しかできない。
「いっけえ!」
声に呼応するように水の魔法がブレスを打ち破り龍の口内を貫通する。
「ギャアアアアア!?」
甲高い声を上げて後ろに下がる。耳がキーンとなって音が捉えにくくなったが問題ないこのまま倒しにかかる!
土魔法で龍を動けないように拘束する。破壊されないように何重にも拘束する。一番上に空間魔法で空間を固定して拘束完成。
「クラクラするぞ......」
龍が拘束から抜け出そうとするが見る限りでは抜け出せないようだ。
「少し休もう。魔力を使い過ぎた」
その場に腰を下ろして少し休む。10分ほど休み、ほとんどの魔力が回復したのでとどめを打ちに入る。龍の首元まで行き風魔法で首を斬りつける。5回ほど同じ場所を斬りつけると頸動脈を切ったのか血が噴き出す。
「うわっぷ!」
全身に血を浴びてしまった。なんでこいつは血を噴きだしたんだ? 龍が息絶えたのを確認して水魔法で身を綺麗にして次の階層に向かう。
「さてっと、次の階層はどんな龍がいるの――!?」
轟音が聞こえた途端に身体の側面からものすごい衝撃を受ける。先程よりも強く壁にめり込む。
「グフッ」
予測してない攻撃だったから受け身がまったくとれなかった。息が......。せき込みながらも無理やりに呼吸する。かなり苦しいが何とか呼吸はできる。
「一体何が......、まさか、蘇生か!」
可能性に至ったとたんに龍の尾が迫っていた。転移で距離をとる。龍を見るとまがまがしいオーラを纏っている。狂化を使ったな......。蘇生がどれだけ回復するのか分からないが狂化が厄介だ。下手に近づくと物理攻撃でやられる。遠距離で魔法攻撃に集中するしかない。
「水魔法じゃあさっきと同じになる。熱がな......。熱、熱か」
熱、ビーム......。破壊光線! やってみる価値はあるぞ! 転移で最大限距離をとる。水魔法で圧縮したのと同じ要領で光を圧縮する。まぶしい! 圧縮した光の中に火魔法の熱を混ぜて貫通力を上げる。
「くらえ破壊光線だ!」
貫くのがあれほど辛かった龍の装甲がいとも容易く貫かれた。そのまま手を上にあげると、それに従って龍も縦に切れていく。頭の先まで斬りつける。断末魔と共に龍が消えていく。転移して龍の前に来るとドロップアイテムが落ちていた。
「なんだろ、ま、何でもいいかな後で調べよ」
♢♦♢♦♢♦
「ん、気絶してたか」
体を起こして自分のステータスを確認する。久しぶりに確認するな。
名前:佐々木タクミ
種族:人
性別:男
年齢:17
Lv:389
HP:73548/73548
MP:78260/78260
力 :46872
防御:42881
速さ:47228
器用:49975
魔法
火魔法lv9
水魔法lv9
土魔法lv8
風魔法lv8
光魔法lv8
闇魔法lv6
空間魔法lv8
スキル
HP回復上昇lv3 MP回復上昇lv9 格闘技lv9
称号
バルディアの加護
魔物の天敵
王殺し
ドラゴンスレイヤー
しばらく見ない間に随分と強くなったな。いけないいけない、もたもたしてられないんだ。現在の時刻は14時11分。さっさと攻略しに行くか! 串焼きを一本食べて、駆け出す。夕方は過ぎそうだな。ミラが心配しないように早く帰らなきゃ。
「なんだこの不気味な感じ」
現在96層、こんなに早く進んでいるのには理由がある。なんと各階層にドラゴン、龍種が一体ずつしか配置されていないのだ。そのすべてを破壊光線で倒している。何で一体づつしか配置されないんだ? 龍種限定で一階層に一体なのかな?
3時間ほどで99階層まで到達した。これ以上進むと今日は帰れなくなりそうだから今日はここまでだな。転移を使い家に戻る。
「ただいま~」
食堂に転移したけど誰もいなかった。あれ、この時間なら誰かいると思ったけど......。ルナはまだ試験中なのかな。廊下まで歩き体を綺麗にする。あちゃあ、この世界で買った衣服がボロボロだよ、また新しいの買わないとなあ。ブツブツ独り言を言いながら私服に着替える。やっぱり地球の衣類は落ち着くな。
3階の自分の部屋にあがりドアを開けようとすると中からかすかに声が聞こえてくる。なんだろ、ボス戦の時から時間は立っているがまだ少し耳がキーンとなってるから何を言っているのかはわからない。
「ただいまミ......ラ」
即扉を閉める。部屋の中でミラが果てていた。扉を開けた時に目が合って閉じた瞬間に中から叫び声が聞こえた。うん、たしかにそういう年頃だもんね配慮が足りなかったぜ......。
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