第24話 攻略に行くぞ

イチャイチャした翌日、ミラが作ってくれた朝食のサンドイッチを食べて目標だったダンジョン攻略に入る。前回は何層まで下りたんだったか......。




「ミラ、俺たちって今何層まで攻略してたっけ?」


「えっと、たしか55層ではなかったですか?」


「55層!? え、そんなに攻略してたのですか!?」


 ミラが階層を伝えるとルナが驚いたような声を上げる。ああ、たしかトップランクのPTが60層付近にいるから俺が攻略した階層って相当すごいんだっけ。




「スゴイだろ?」


「はい! すごいと思います!!」


 ふふふ、そんなに尊敬してくれるなよ......照れるじゃないか! 一人で天狗になっていると、ミラがタクミさんなら最速で攻略してくれますよ。と言い、さらにルナは興奮して尊敬してくる。




「そういえば、ルナは今ランクはどれくらいなんだ?」


「今はDランクで今日Cランクの昇格試験を受けるんですよ!」


 ほう、もう昇格試験か。ルナはすごいなあ。ルナの順調さに感心してると、




「最速でSランクに上がったのに何言ってるんですか......」


 ミラに痛いところを突かれてしまった。でも仕方ないじゃん! あの時は面倒ごとに巻き込まれたくなくて必死だったんだから! でもそのおかげでミラと出会えたんだけどね!




「それでタクミ様、今日から2日3日昇格試験で出てしまうのでそこのところお願いいたします」


「おう、その間にダンジョン制覇する勢いだから頑張ってこい!」


「はい!」




 朝食を食べ終えて、ルナは昇格試験に向かい俺とミラはダンジョンに向かう。






♢♦♢♦♢♦




「さあ、訓練の成果を見るよ!」


「任せてください!」


 10階層に転移してボス部屋に入る。ボスは変わらずに、ジェネラル一匹だ。俺は後の壁際でミラを見守る。ミラが緊張しながらもジェネラルに近づくと、ジェネラルは咆哮を上げて棍棒を振り下ろす。




「嘘......」


 敵の攻撃をよけて、首を斬りつける。斬られた痛みでジェネラルは後退してしまう。そんな隙を見逃すミラではなく、敵の間合いに入り首を斬り続ける。




「はあ!」


 思いっきり放った一撃が首を深く切り裂き、敵を絶命させる。ミラは息一つ乱さずにこちらに駆け寄ってくる。




「どうですかタクミさん!」


「成長したなミラ! 前とは比べ物にならないよ!」


 頭を撫でて褒める。しっぽをブンブン振り、喜んでるのがよくわかる。これならもっと深くても余裕だな。










その後も20層目30層目と簡単に倒していき、50層のボス部屋までたどり着いた。




「正直一気にここまで来れると思ってなかったよ......」


「タクミ様のために頑張りましたから!」


 ミラはセンスの塊だったよ......。瞬時に敵の攻撃を予測して、最善の避け方をしていくし、受け流しも最初から上手かったけど、やればやるほど上手くなってくんだもん。本気で練習始めないと俺も抜かされそうだよ......。




 ボス部屋の中に入る。50層のボスはレベル80のゴブリンジェネラルと、身長150センチ程度の筋肉だるまのボブゴブリン5体だ。俺は風魔法で一撃だったけどミラはどうやって攻略するのか少し楽しみだ。




 行きます。と一言つぶやき、ボスに近づく。ジェネラルが気付き、ボブゴブリンたちに何か命令をする。そうするとボブゴブリンがミラに向かって襲い掛かってくる。一見5体だから分が悪いように見えるが、実は1度に攻撃できる人数は多くても4体が限界だし、実力もミラの方が何倍も上なので、何も問題ないのだ。




「おお、ちゃんと多対一もできるのか。ミラの戦闘センスはすごいな」


 ミラはボブゴブリンの攻撃を危なげなく避け、無力化していく。全てのボブゴブリンを倒すと、ジェネラルガ叫びながら突撃してくる。10層のジェネラルよりも速さも攻撃力も段違いだが、問題なく躱し、首を切りにかかる。首に一発貰ったジェネラルが地鳴りがするくらいの咆哮を上げる。




 これは......!




「ミラ! 狂化したから気をつけろよ!」


  ミラは一瞬だけ動きが止まったが、すぐに攻め始める、先ほどの何倍も速い攻撃がミラを襲うが受け流して攻撃を入れていく。流石に少しつらいのか数歩後ろに下がってしまう。それをチャンスと見たのかジェネラルが猛攻を仕掛けてくる。上下左右に振りまくるが、ミラはそれをすべて受け流すか回避している。




 当たらないことにイライラしたのか、棍棒を高く振り上げて叩き潰そうとする。あらら、それをしちゃダメだよ。




「! ハアッ!」


 一気に懐に潜り、剣を振りぬく。深々と首を切り裂き、ジェネラルが数歩後ずさりした後に倒れて消える。




 ミラによって行き頭を撫でながら褒める。


「スゴイじゃないかミラ! 1日で50層なんて感動したよ!」


「タクミさんに迷惑かけないようにするため頑張りました!」


 討伐が終わりひと段落着くとレベルアップしたようだ。今回は倒れずに耐えたようだ。




 ミラのステータスはこんな感じだ。








名前:ミラ・アストル

種族:銀狼族

性別:女

年齢:15

Lv:73


HP:698/698

MP:715/715

力 :1333

防御:1214

速さ:1491

器用:1323


魔法

水魔法lv2


スキル

剣術lv8 HP回復率上昇lv3 MP回復率上昇lv2 状態異常耐性lv3 格闘技lv5


称号












 おお、だいぶ上がってるな、1月前までレベル7とは思えないな......。




「すごいレベルが上がってるじゃないか!」


「自分でもびっくりしてます! まさか自分がこんなに強くなるなんて......。タクミさんは今どのくらいなのですか?」


「俺? 俺はこんな感じだよ」


 ステータスを開き見せてあげる。










名前:佐々木タクミ

種族:人

性別:男

年齢:17

Lv:129


HP:23959/23959

MP:30450/30450

力 :4612

防御:4061

速さ:4883

器用:4931


魔法

火魔法lv8

水魔法lv8

土魔法lv6

風魔法lv9

光魔法lv6

闇魔法lv6

空間魔法lv9


スキル

HP回復上昇lv1 MP回復上昇lv8 格闘技lv10 無限収納インベントリ 状態異常無効化 攻撃無効化 獲得経験値10倍 鑑定 マップlv4 成長率増加 魔力操作lv10 魔力消費軽減 直感lv7 剣聖lv1 言霊


称号

バルディアの加護

王殺し

ゴブリンの天敵

オーガの天敵

覚醒者

剣の道












「スゴイですねタクミさん! またレベルが上がってます!」


「そうだね、結構上がってたね。称号も増えているな」




剣の道…剣術をlv10まで上げ、さらにスキルレベルが上がったものに与えられる称号。スキル剣術から剣聖に変わる。剣を自在に操れ、剣戟時、補正が大きくかかる。






 もうね、スゴイとしか言いようがないよ......。剣聖がスキルレベルマックスになったら剣神にでもなるのかな? それよりもスキルが進化するのも初めて聞いたな。




「ミラ、スキルが進化することってあるの?」


「あると聞いたことがありますよ。タクミさんより前に来た同郷の勇者様もスキルを進化させたと本に書いてありますし、剣聖スキルなら、現在の王国戦士長のペルディア様が所持していると聞いたことがあります」


 なるほど、スキルは極めれば進化していくのか......。奥深いな。色々なスキルを極めるのもいいかもしれないな。




 次はどのスキルを上げるか考えながらダンジョンを攻略を進めていく。






♢♦♢♦♢♦










「そろそろお昼にしようか」


「もうそんな時間ですか。張り切り過ぎてまったく気づかなかったです」


 60層のボス部屋前まで来てお昼にする。ミラが作ってくれたスープと朝食とは別の食材で作ったサンドイッチを食べる。ミラが作ってくれるとすべての食材が美味くなるんだよなあ。たぶんどの職人よりもうまいと思う。異論は認めるが反論は認めん!




 サンドイッチを食べていると、ミラが決心した顔で此方を向く。少し頬を染めながら口を開ける。


「あーん」




 え!? ま、まさかリア充伝説のあーんをやるのか!? ......よし! 不肖佐々木タクミ17歳DT行かせていただきます。唾液を飲み緊張しながらもミラにあーんをする。




「は、はい、あーん」

「あーん、はむ」


 小さい口でサンドイッチを一口食べる。頬を染めながら、恋人同士ですね......。と照れながらも声に出す。俺も恥ずかしくなって頬を染めてしまう。ミラも俺にあーんをしてくれる。



「自分で食べるよりなんか美味しいな」

「わ、わかります......」




 その後もお互いにあーんをしあい昼食を終える。さてさて、ここからはボス戦だ。




「ミラ、まだ大丈夫?」

「あと、1戦は問題なく戦えるかと思います」

「ならこの後は俺の出番かな」


 ミラの調子を尋ねながらボス部屋に入る。






「これは......」


 鑑定を発動させる。








種族:オーガキング

性別:――

年齢:――

Lv:105


HP:49129/49129

MP:5233/5233

力 :64331

防御:66712

速さ:24313

器用:21540


魔法


スキル

指揮lv4 剛腕lv6 肉体強化lv4 狂化 



称号

狂暴化




 レベル100越えのキングとレベル90のジェネラル6体、レベル85のボブゴブリンが25体。これはさすがにミラだけじゃ厳しいよな。




「ミラ、どこまでならできる?」

「キングと1対1ならできます」


「了解」


 風魔法でキング以外の敵をすべてを切断する。ジェネラル達は何をされたか分からずに切断されて消えていく。




「よし、行ってこい!」


 はい! と元気よく声を出して走り出す。キングが地震と同じレベルの咆哮を上げて棍棒を振る。ミラはしゃがんで避ける。振りぬかれた後に風が俺が寄りかかっている壁の方まで吹いてくる。こりゃ当たったやばそうだな......。




 ミラも当たったらただでは済まないと分かっているのか無理に受け流しをせずに膝や足首を斬っていく。いいぞ、体格で勝てない相手には関節を狙うのはいい考えだ! 膝や足首を狙い斬り続ける事30分程、キングの肩膝が限界になって膝をつく。すると、すぐに死角に入り両足で立てないように足首の健を剣で切り落とした。




 断末魔を上げて横になるキングの首まで登り、首に剣を突き刺す。10秒ほど暴れるがすぐに動かなくなり消える。お、今回はドロップアイテムがあるようだ。ミラが持ってきたドロップアイテムを拾い、奥に進む。




「今日はもう限界ですね」

「そっか、お疲れさま。すごい成長してて感動しちゃったよ」


 ミラは照れながらそんなことないですよと、体をくねらせる。頭を撫でながら進んでいく。7回もボス戦をしたからかミラの身体はお疲れモードらしく歩くのが辛そうだ。




「ミラ、抱っこするよ」

「はい、お願いします......」


 抱っこをしながら新階層を進んでいく。15分ほど進むと、キングオーガより大きく強そうな魔物が現れた。








種族:トロール亜種

性別:――

年齢:――

Lv:108


HP:57381/57381

MP:1130/1130

力 :68773

防御:73541

速さ:11879

器用:10823


魔法


スキル

剛腕lv7 硬化lv6 身体強化lv7 狂化 




称号

狂暴化








 あんま変わんないな。風魔法で首ちょんぱで終わりだ。まあ、90階層以降まで勝負ができるなんて思ってないけどねえ。






♢♦♢♦♢♦










 ミラを抱っこして3時間ほど、76階層に降りてしばらくすると、誰かが戦っている音がする。お! 久しぶりの冒険者対面か?




 音の鳴るほうに歩いていくと、5人の男女が戦っていた。前衛が男2人、後衛が女2人と男1人。バランスが取れたいいチームという印象を受ける。今相手にしている魔物は、初めて見る魔物だ。鑑定鑑定っと。








種族:ブラックタイガー亜種

性別:――

年齢:――

Lv:132


HP:48776/86574

MP:8967/28876

力 :87789

防御:89761

速さ:96713

器用:86711


魔法

闇魔法lv4


スキル

爪斬スラッシュクローlv7 咆哮lv4 縮地 剛腕lv7 直感lv6 硬化lv5 狂化


称号

狂暴化








 ほほう、それなりのキャラが出てきてるなあ。たぶんこれでも一撃だけど......。




「ミラ、あれって今最深層にいるっていうSランクPTだよね」


「はい、たぶんそうです。すごいですねタクミさんは」


 きゅっと俺を抱きしめる力が強くなる。水魔法で簡単な椅子を作り腰を掛けミラとイチャ着く。20分ほどするとあの魔物を倒したらしく魔物が消えていくのが見えた。さ、話しかけに行くかな。相手との距離が15メートルほどになると、前衛の一人がこちらに剣を向ける。




「誰だ!」

「おお、落ち着け俺は敵じゃない」


 ミラを抱っこしてるから両手は上げられないので心の中で手を上げる。少しの間こちらを警戒していたが、剣をおろしてくれる。だが、全員すぐ戦闘態勢に入れる様に武器には手をかけている。




「何しにここに来た! 簡単にここには来れないはずだ!」

「何って......。ダンジョン攻略以外にあるのか? そりゃ確かに1日目は観光気分で来たけど」


「君たち意外に人はいないのか?」

「おう、俺とこの子の二人だけだ」


 PTメンバーはありえないとこそこそ話し合っている。




「その子は連れてきても大丈夫なのか?」


 確かにこの華奢で可愛いミラからは戦闘なんて考えられないよな。わかるわかる。




「ああ、問題ないぞ。70階層まではこの子が頑張って倒してたからな」

「な、君はこんなに幼い子に戦闘させているのか!」


 ええ、何でおれが怒られてるんだ? しかもミラは成人してなかったか? 




「俺はこの先からが担当なの......。何? 君たち俺と喧嘩するために会話してるの?」

「な! そんなことないわよ! いったいあんた何なの? 女の子一人で戦わせてかっこ悪いわ。男なら守ってあげなさいよ!」


 後衛の女の1人、160センチほどで、金髪のロングヘア―。目は釣り目で見てのとおり高圧的だ。




「なあミラ、何俺こんなに言われなくちゃいけないんだ? 今日は攻略とミラの成果を見に来ただけなのに」


「こんなタクミさんの実力を見抜けない時点で2流冒険者。そこの女は自分の思ったことは正しいと思って、他人を見ようとしない3流冒険者。気にしなくていいです。行きましょ。早く踏破してルナちゃんとダンジョン楽しまなくちゃ」


「それもそうだな」


 スゴイかっこいいことを言ってくれてるんだが、抱っこの状態ではカッコよさ半減だな。まあ可愛いからオールオッケーだけどね!


 でも、なんでこうも冒険者って俺に当たってくるんだろうね。なんか悲しいよ俺。


 スルーしていくと後ろから女のヤジが飛んでくる。




「私が3流ならあなたはそれ以下のクズ野郎だわ! 先の階層に降りても無駄死にするだけよ!」


「あ~はいはい。それでもういいんで」


 奴等の声を背中に聞き次の階層に向かう。歩きながらこのイライラをダンジョンにぶつけようと思った。     

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