第23話 タクミクッキング
昼食を食べ終え、夕食の買い出しに行く。今日は俺が作ることになったので夕食を考える。何がいいだろうか......。そういえばハンバーグとか最近食べていなかったな。よし、ハンバーグにするか。肉屋と八百屋で必要な物を揃えて家に帰る。帰りにトマトソースが売っていたので買って行く。
♢♦♢♦♢♦
「さあ、始まりましたタクミ30分クッキングー!」
「どうしたんですかタクミさん?」
厨房にある椅子に腰を掛けながら尋ねてくる。異世界だからこのネタは通用しないのかあ。まあしょうがないか。気を取り直していこう!
まず土魔法で作ったステンレス製のボールを用意します。買ってきた卵と肉、人参と玉ねぎを混ぜましょう。さらにパン粉も加えると食べた時のジューシー感アップです! この時に玉ねぎはみじん切りにして、あめ色になるまで炒めましょう。こうすると甘みが増すんですよ!
ハンバーグの種を作ってるときにあることを思い出す。そういえば俺の家ではマヨネーズも混ぜてたよなあ。マヨネーズ入れるとふっくらと焼きあがるって言ってたっけ。マヨネーズを作るか。
「マヨネーズってどう作ったっけな......」
「タクミさん、マヨネーズ? って何ですか?」
「いろいろな物に合うすごい調味料だよ」
「そんな調味料があるのですか! 調味料なんて塩か胡椒くらいしか身近になかったので楽しみです!」
「今から作るから味見する?」
「します!」
しっぽがぶんぶん振られている。うんうん。未知との出会いは素晴らしいよな。分かるぞその気持ち。
空間魔法を使ってハンバーグの種を酸化とか、肉の脂がとけない様に保管しておく。それではマヨネーズを作っていきますか! 参考にするマヨネーズはあのキュ○ピーさんだ。卵黄と油、塩とお酢。あ、お酢がないな。レモンでいっか。を混ぜる。水魔法で超高速で混ぜる。機械並みのきめ細やかさが出たな。一口味見。
「......久しぶりだなあこの味!」
こっちに来てからはマヨネーズレベルの調味料なんて口にしてなかったから、舌が喜んでるよ。お酢じゃないから微妙に違うけど気にならないくらいだ。ミラの試食用に人参スティックを作る。
「ミラ、できたよ。この野菜に付けて食べてみな」
ミラがスティックにマヨネーズをつけて食べる。口に入れた瞬間にしっぽがブワッと逆立つ。ミラのしっぽはわかりやすいな。
「え、な、こ、これなんですか! こんなすごい調味料があったんですか!?」
「落ち着こうかミラ、これは俺の故郷で愛されてる調味料なんだ。俺もこの調味料は好きだしね」
その後もすごい、すごい! と人参スティックをポリポリしている。あんまり食べ過ぎると夕飯食べれなくなるよと伝えて、作業に戻る。
さて! タクミクッキング続けていきましょう! マヨネーズをハンバーグの種に混ぜます。混ぜるときのコツは指先で混ぜることですよ。つかみながら混ぜちゃうと、肉の油が溶けてべッタベタになっちゃいますからね! でも今回は水魔法で肉の温度を下げて溶けないようにしてるからつかんで混ぜちゃいます。混ぜ終えたら次は空気抜き。キャッチボールする感覚で空気を抜きましょう。ステータスに任せてものすごいスピードで空気を抜いていく。もちろん崩れないように丁寧かつスピーディにだ。
6個のハンバーグの形を作り焼いていきます。初めは中火で3分程、ひっくり返して弱火で蒸し焼きに、最後にもう一回ひっくり返して強火で水を飛ばしたら完成! あ、ソースについて何も考えてなかったな......。トマトソースしかないけどそれでいいか。
「はい、完成したのがこちらの品になります。皆さんも是非挑戦してみましょう! ではまた次回~」
誰もいないところに手を振っていたのでミラが少しおびえてしまった。いかんいかん。今度から一人の時以外はやらんようにしよう。
「ミラ、夕飯で来たから運ぶの手伝って」
「任せてください!」
しっぽを振り振りしながら食卓に運んでいく。運んでもらっている間に少し大きめのさらに野菜スティックを並べて、真ん中に小さい容器にマヨネーズを入れてサラダ品を作る。さらにもう一枚のお皿を出してこないだ買ったロールパンを
「お、ルナはもう来ていたか」
「こんなおいしそうな匂いがしたら誰だって降りてきちゃいますよ!」
「それもそうか、じゃあ食べますか」
みんなで食べ始める。多分この世界にはハンバーグなんて概念無かったと思うから二人とも恐る恐るナイフで切れ目を入れる。
ジュワッ
内側に閉じ込められていた肉汁が切れ目を入れたとたんに流れ出てくる。それに従って肉汁と共に閉じ込められていたハンバーグの匂いが爆発的に広がる。
「わ! すごい汁があふれて......!? タ、タクミさん切れ目を入れたらすごくいい匂いが広がってきました!」
「タクミ様! これはいったい何て料理なんですか!」
「これはハンバーグって言うんだ。美味しいと思うからぜひ食べてくれ」
フォークで切ったハンバーグを刺して口元に運んでいく。はむっと口に入れた瞬間にルナとミラのしっぽがピーンとまっすぐになり、数秒後には物凄いスピードでしっぽを振り始める。
「パンと一緒に食べるのもおすすめだよ」
二人がハッとした顔になり、パンをちぎって口に運ぶ。数回咀嚼したとたんに、はふうっと顔を赤らめながら飲み込む。
「どう? 美味しいでしょ」
ニコッとしながら訪ねると、こんな料理食べて事がないですと言いながら食べる手が加速していく。ハイペースで食べていたのでハンバーグが一瞬で無くなってしまった。
「ああ......」
「無くなってしまいました......」
2人がしゅんとしてしまった。まったく、しょうがないな。
「ミラ、ルナ俺の一個ずつ食べていいよ、新しいの作るから」
すると、パアッとしょんぼり顔から笑顔に変わる。ハンバーグを置いてあげると、またもぐもぐ食べ始めた。可愛いなまったく!
この際だから作り置きしておくか、
さっきの三倍のペースで作っていく。肉も野菜もたくさん買っているので、大量に作れる。種はザッと60個ほど、途中で多すぎるだろと思ったけど、なんか途中でやめるのも......と思い最後まで作った
コンロみたいのが10個あるから一つに6個入れれば大丈夫か。幸い、コンロの間はそれなりにスペースがあるので大きなフライパンが使える。種を並べて行って一気に焼き上げる。焼いてる間に騒ぎ声が聞こえたがたぶんマヨネーズだろうと考えて気にしないことにした。でも、自分が作った料理をおいしいって言ってもらえるとなんかうれしくなっちゃうよな!
すべてのハンバーグが焼き終えたので、必要なハンバーグ以外はどんどん
食卓に戻ると、お腹をさすりながらポリポリと野菜スティックを食べるミラとルナがいた。味を楽しんでいるのかニコニコしながらポリポリしている。
「どう? 美味しかった?」
「はい! 最高でした!」
「また食べたいです!」
喜んでもらえて何よりだ。地球にいた時は結構料理はしてたし、一時期自分で調味料とか作ってたから割とすぐにソースとかケチャップとか作れると思う。そしたら料理の幅が広がるなあ。お菓子も作ってたから、クラスの奴らがよく俺のことを料理人なんて言ってたなあ。あいつら元気かな。
昔のことを思い出しながらハンバーグを口に入れる。口の中で肉汁があふれ出てきてハンバーグの味をダイレクトに舌に伝えてくる。我ながら上手くできたものだな。
食事を終えて皿を洗い、自分で作った食器棚にお皿を収納する。明日からはまたダンジョンにでも潜るかな。ルナもそろそろDランクに上がるので、一緒にダンジョンに潜る日が近そうだ。みんなでダンジョンに行くのを楽しみにしながら食器を片す。
寝室に入ると、ミラがベッドの上で丸くなっていた。ササッと体をきれいにして着替え終える。丸くなってるミラのしっぽを優しくなでる。
「ひゃん!」
ビクッとなって丸まるのが解けたが、撫でたのが俺だとわかると、俺の方に体を寄せてきてモフモフをおねだりしてくる。今回は優しく、優しくモフモフしていく。嬌声にも似た吐息が俺の耳元で聞こえてくる。
「ミ、ミラ? そ、その声はちょっと意識しちゃうんだけど......」
主に息子がね!
「す、すみませんでもっ、きっ気持ちよくてつい......」
「続ける?」
「おねがいします......」
その後もモフり続ける。俺はミラの毛並みを楽しんでるだけなんだけど、ミラの吐息が俺の耳とか首にかかるからどうしても意識しちゃう。ミラはついに我慢できなくなったのか俺の首をカプッと噛んでくる。ちょっと痛いけどなんとか......ん? なんで痛いんだ? 攻撃無効化のスキルでダメージは負わないはずなんだけどな。モフりながら攻撃無効化のスキルを確認する。
攻撃無効化…敵意や殺意、害意のこもった物理、魔法攻撃を無効化する。また、敵意、殺意、害意がなくとも、持ち主にダメージを与える攻撃を無効化する。
この文を凝視していると新たに一文が追加される。
攻撃無効化…敵意や殺意、害意のこもった物理、魔法攻撃を無効化する。また、敵意、殺意、害意がなくとも、持ち主にダメージを与える攻撃を無効化する。ただし、状況に応じて効かない場合もある。スキルのON、OFF可
え、マジすか......。スキルってこんなに便利な物なのか。バルディアの爺さんマジで感謝だわ。このスキルを作ってくれてありがとう!
無効化スキルをOFFにしてミラの噛みを感じる。この世界に来て痛みっていうのは初めてなんじゃないか? ミラをさらにモフモフするとビクッとなって全体重を俺に預けてくる。
「ミラ、どうだった気持ちよかったかな?」
「最高ですう」
ミラが俺の腕にしっぽを絡めてくる。空いている手でミラの耳をモフる。わふうと言いながら。俺の顔に頭をこすりつけてくる。まるでワンちゃんじゃないか。そんなミラに微笑んでいると、ミラの顔が上気している。
あ、いじりすぎちゃったかな......。と思っていると、ミラは自然と俺の顔に近づいていき、俺の口にキスをする。
「ん!?」
それだけに収まらずに何度もキスをしてくる。そのうち舌まで入れてくるようになる。え!? どういうこと!?
ファーストキスをこうもあっさりとポイしてしまうとは、うれしいと恥ずかしいが俺の頭の中を支配して、俺の顔も真っ赤になっていく。1分程キスをすると、ミラはキスをやめて俺を抱きしめる。ベッドの上だからお互いは座っている状態だ。
「私だけ恥ずかしかったので、タクミさんにも恥ずかしくなってもらいました......」
顔を真っ赤にしながらお相子様だと言ってくる。
「あ、うん。そう、そうだね確かにお相子様だねハハハ......」
そっち系の妄想はする癖にいざその場面になると何もできない俺を呪いたくなってくるよ! お互いに心臓バクバク言ってるのがよくわかる。お互い恥ずかしくなって少しの間無言の空気が流れる。
「も、もう寝ましょう! 続きはまた今度に......」
後半の部分はそういうことなんだよね! 期待しちゃうよ! 本当にするからね!?
「そうやね! 寝ようか。続きは今度ね......」
お互い横になって目をつむる。先ほどのことを思い出しながら自分に早く眠れえと、念じる。願いが通じたのか、気づかないうちに俺の意識は闇に消えて行った。
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