第22話 佐々木タクミ家を買う
訓練が始まって1ヶ月ほどたった。訓練場には剣のぶつかり合う音が響いている。剣戟の音が徐々に大きくなっていく。
「腕上げたな、タクミ!」
「そりゃ全力で訓練してるからねっ!」
「こりゃ、気ィ抜いたらやられちまうな」
2人の剣戟が徐々に素早くなっていく。一度でも剣捌きを間違えればどちらかが怪我を負うレベルの剣戟だ。タクミが剣を振り、ダルニスが弾く、ダルニスが剣を振り、タクミが受け流す。10合ほど打ち合い、一つの剣が宙を舞い地面に刺さる。
「俺の勝ちだね」
喉元に剣を向けて声を出す。剣を飛ばされたダルニスはガハハと笑い、負けを認めた。
「一か月で俺を超えるとはな! やるじゃねえか!」
背中をバシバシ叩きながらほめる。かなり痛いんだけど......。ジンジンした背中をさすりながら剣を片付けに行く。片付けを終えてミラを見る。ミラの方も終わったようで、グレイに頭を下げていた。
「お疲れ様ミラちゃん。今の君の実力なら、タクミ君の足手まといになんかならないはずだよ」
「今までありがとうございました!」
ミラたちも剣を戻しに来た。ミラを労い訓練場を出て、ギルマス室に行く。ソファーに座り水を飲む。
「ぬるいな......」
水魔法でコップに入る水球を氷にしてコップに入れる。うん、冷たくてうまい。水を飲んでると、隣で腰をちょんちょんとミラが突いてくる。
「どうした?」
「タクミさん、その氷私のにもくれませんか?」
「いいよ」
氷を作ってミラのコップに入れる。ありがとうございます! と、満面の笑みでお礼を言う。頭を撫でてコップの水を飲み干す。水魔法で新しい水を入れる。ぬるい水なんて好き好んで飲みたくはないだろうからダルニスたちにも氷を渡す。氷は高価らしく、普段は使わないらしい。
雑談をしていると、家の話になった。ダルニスとグレイは、王城の近くに家を持ってるらしい。俺も家を買おうと思ってる事を伝えると、ギルドでも家の紹介をしてるらしいから、カタログ的なものを見せてもらう。今は金貨で1100枚くらいあるから、金貨1000枚当たりで見るか。
パラパラとめくっていき、よさげなものをいくつか見つける。
王城近辺、元公爵家の別荘宅。3階建て、地下室あり。金貨1030枚 分割10回可
王城近辺、元伯爵家別荘宅。2階建て、金貨980枚 分割5回可
王城周辺、元伯爵家別宅。2階建て、金貨975枚 分割5回可
選ぶならこの三つの中かなあ。これ以外の建物は俺の希望に合致するものがなかったからだ。一人で住む訳ではないからミラに意見を求める。
「ミラならどの家に住んでみたい?」
「そうですね......せっかく住むならこの一番大きい家でいいのではないですか?」
「オーケー、ならこの家にしようか」
元公爵家の別荘宅を第一希望にする。ダルニスがせっかくなら外観とか見て来いよと、そこまでの地図と鍵を渡してくれる。
ギルドから歩いて15分ほど、目指している建物の外観が見えてくる。まだ入り口にもついていないが結構大きいことがわかる。
「結構大きいですね!」
「そうだね。遠目にみてもその大きさがよくわかる」
ミラが俺の手を取り俺をせかす。自分の住む家を見に行くのが楽しいのだろう。ミラに合わせて家に向かう。
「結構きれいだな」
門から家まで100メートルほど歩く。家に向かう途中に家の周りを見る。左側には花が植えられているがいくつか枯れているものがある。右側には半径50メートルほどの大きな池があり、その奥には木々が生い茂っている。
肝心の家を見てみる。外壁に目立った汚れはなく、白い壁が輝いてるようにも見える。扉は内開きの両扉で、まさにザお城の扉みたいな扉だ。どうでもいいことだが、トビラトビラ言ってると頭がこんがらがりそうだ。
中も見てみたが目立った傷や汚れもないからここにしようと思う。
「ミラ、この家にしよう、と、......ミラ?」
屋内にミラがいなく、外に出ると花が咲いているところにミラがいた。どうやらたくさんの花を見て感動してるようだ。目がキラキラしてる。
「ミラ、この家にしようと思うんだけどいいよね?」
「はい! ぜひここにしましょう!」
鍵をすべてかけて、ギルドに向かう。その間にミラがもっとお花を増やしたいと言っていたので花を手に入れる方法を考えていた。ギルドに着き、購入すると伝え一括で金を払う。一括で払うのは珍しいのか、すごいなお前とダルニスに言われた。
宿に帰り、ルナに新しい家のことを伝えて、自宅に必要なものを買いに出かける。いろんな店を回って日用品を買う。買い終わるころには夕方になっていた。宿に帰り、3人で家の話をし、その日は早く寝た。
翌日、宿をチェックアウトして新居に向かう。20分程で門前に着く。ルナは初見なので、新居の大きさに興奮していた。門を通り、自宅に入る。2階からが生活部屋なので3人で2階にあがる。2階には8つの部屋がある。右に4部屋、左に4部屋だ。1部屋20畳くらいとかなり広い。
3階には部屋が二つあり、1部屋は2階の倍くらいの広さがある。俺は3階の部屋にすると、ミラとルナも3階がいいと言い出した。部屋が足りないと伝えると、ミラは俺と一緒の部屋がいいといい、ルナは屋上がいいだけで一緒じゃなくてもいいらしい。
「ならルナは3階の左の部屋で、俺とミラは右の部屋でいいかな?」
「かまいませんよ」
「問題ないです」
二階のベッドを一つ持ってきて俺の部屋に設置する。ルナは自分の部屋に行き、自分の荷物を仕舞っている。俺のベッドと少し離しておくとミラがくっ付けろと騒ぎ出す。
「くっ付けなくてもよくない?」
「だめですよ! 私はタクミさんが枕替わりなんですから!」
ミラと一緒に寝るといろいろとマズいんだよ! なんてことは言えずに、結局ベッドをくっつける。
「さて、ベッドは運んだし買った品物置いていくか」
部屋にトイレと洗面台が付いているので、店で買ったコップと歯ブラシを置いておく。歯ブラシがあることに驚いたが、昔の人が歯ブラシを開発したんだと。そういえば日用品は結構充実してたな。もしかして俺以外にも地球から来た人がいたのかな?
あらかたやることを終え時刻を見ると12時を過ぎており、お昼の時間だ。
「そういえば、宿じゃなくなったから食事は自分たちで用意しないとな」
「ならば、みんなで交代でやりましょうか」
ミラが交代制を提案する。幸いなことに俺は結構料理ができる方なので、それで問題ないかと言いルナを呼ぶ。
交代制を伝えると、ルナは気の乗らなそうな顔をする。まさか......!
「ルナ、もしかして料理できない感じか?」
「あ、いや......はい、できないんです」
始めはできると言おうとしたがしゅんとしてできないことを認めた。まあ料理ができなくても問題ないか。
「なら、俺とミラで交代交代だな」
「ですね」
「うう、すみません」
でも、冒険者なら野営とかで自炊するだろうから、簡単なものは作れるようにしないとな。
日用品以外は何も買い出しに行ってないので、外食をする。今日のメニューは、スパゲッティと1本角の兎ホーンラビットのステーキだ。どれも地球にはない味で大変美味だった。
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