第19話 ミラのやりたいことが優先だよね
本能との戦いに勝ち、心地の良い朝を迎える。ベッドを下りて太陽を浴び、背伸びをする。さっさと着替えるかな。寝間着を洗い、着替え始める。
ミラたちはまだ眠っている。すぐやらなくてはいけない事は特に無いので、ステータスで新しく手に入ったものでも確認するか。
「さてと、何があったかなあ」
ステータスを確認する。そういえばレベルもいくつか上がったんだったな。
名前:佐々木タクミ
種族:人
性別:男
年齢:17
Lv:122
HP:23587/23587
MP:29652/29652
力 :4365
防御:3885
速さ:4672
器用:4481
魔法
火魔法lv8
水魔法lv7
土魔法lv6
風魔法lv9
光魔法lv6
闇魔法lv6
空間魔法lv7
スキル
HP回復上昇lv1 MP回復上昇lv7 格闘技lv8
称号
バルディアの加護
王殺し
ゴブリンの天敵
オーガの天敵
覚醒者
まずはスキルから見てくかな。
直感…感覚が鋭くなる。戦闘以外でも自分への害意や視線に気づきやすくなる。
剣術…戦闘時、剣を自在に操れるようになる。剣を使った攻撃に補正あり。
ふむふむ。最後は称号だな。
覚醒者…レベルが100を超えたものに送られる称号。レベルアップ時に、力、防御、速さ、器用の上昇値に補正がかかる。
能力値が増えるのか。ステータス確認を終えると、ミラたちが目を覚ます。朝ごはんを食べて、今日もダンジョン攻略を頑張る。宿の人にルナに帰ってきたら鍵を渡してくれと頼み出かける。これでルナは心配しないだろう。
「昨日攻略した所までは転移できるから、転移でいこうか」
ミラと昨日いた55階層に転移する。転移すると、早速魔物が現れた。今度は4,5体いるな。体長は1.8メートル程、毛は黒で此方を威嚇している。この魔物は見たことないな......。
名前:ヘルハウンド
種族:デビルハウンド
性別:オス
年齢:――
Lv:67
HP:7852/7852
MP:5632/5632
力 :3200
防御:5700
速さ:5411
器用:5874
魔法
火魔法lv7
スキル
縮地lv2 威圧lv3 硬化lv5
称号
ヘルハウンド......。地獄の猟犬か。連携攻撃をされると少し厄介だな。相手の出方をうかがう。少しの間睨み合いが続いたが、しびれを切らしたのか、ヘルハウンドが襲い掛かってくる。一匹が前を走り、その後ろに横一列で2匹がついて来る。残りの三体がとどまって何かをしようとしている。
「やっぱり連携攻撃か!」
ミラを抱き寄せて、一番前にいた奴の振り下ろし攻撃をバックステップで躱す。躱した途端に後ろにいた一匹が右側から爪で切り裂こうとしてくる。クソッ、連携されると厄介だな!
振り下ろされる腕を読み、最小限の動きで躱し、殴る。1メートル程転がっていく。その間に、初撃を外したヘルハウンドが一瞬で距離を詰めてくる。縮地か! 縮地に驚いている間に、斬爪スラッシュクローであろう攻撃が繰り出される。ミラに当たってはまずい! とっさに体を捻り、背中で攻撃を受ける。
「うを!」
攻撃で体が吹っ飛ぶ。3メートルほど飛ぶが、上手く着地する。ラッキー! ミラをおろす。
「ここで見ててね! 入ってこれないようにバリア張るから!」
ミラの周囲に、空間魔法を使い空間をミラを覆うように固定する。酸欠になっては困るから、広めに張って、空気穴をいくつか作る。火魔法を警戒して、前には空気穴を作らない。
バリアを張り終わると同時に、背後から攻撃が来る気がする。転がる様に避け、ミラから離れる。気を引かせるために水球を今来たヘルハウンドに当てる。怒り狂って俺に襲い掛かってくる。
ミラから離れるために敵陣に突っ込む。縮地を使ったのか、背後から攻撃が来る。半身になって躱し、無防備な背中に思いっきり肘を振る降ろす。ヘルハウンドの背骨を粉々にして動けなくさせる。動けなくさせたと同時に、最初に突っ込んでこなかったヘルハウンドが火魔法を放つ。数は3つ。大きさはバスケットボール程。なかなかに速いそれを水魔法の球で相殺する。
「あ、やっちま――」
魔法がぶつかった瞬間に蒸気が爆発的に広がる。視界が一気に悪くなり、周りが白一色になる。ここぞとばかりにヘルハウンドたちがヒット&アウェイで攻撃を仕掛けてくる。まったく見えねえ! 攻撃無効化がなかったらやばいだろ。背後、横からバシバシ攻撃を食らう。ここで攻撃無効スキルの意外な弱点が分かった。強い攻撃の振動が何回も続くと気持ち悪くなる!
まずはこの霧を何とかしないと......。とりあえず風か。台風並みの風を周囲にばらまく。周囲の霧が一瞬で晴れた。よし!
ヘルハウンドは一瞬驚いたが、構わずに攻撃をする。一匹が真正面から襲い掛かり、後ろにいたもう一匹が、左に移動しながら攻撃を仕掛けてくる。前方のヘルハウンドのあごを蹴り砕き、左からくる奴は土魔法を使い、円柱を作り腹を貫かせようとする。
気配察知でわかったのか、サイドステップで避けて襲い掛かってくる。殴り倒そうとするが、魔法組が火魔法を放つ。同じ火魔法を使い、相殺する。
目の前まで来ている振り下ろされた爪を、腕をクロスさせてガードし、がら空きの胴につま先蹴りを放つ。ヘルハウンドの身体が少し浮き、黒い煙になる。
倒れているヘルハウンドもとどめを刺して、魔法組の始末にかかる。俺が迫っているのに驚き、火魔法を放ってくる。ミラの方に行かないことを瞬時に確認してすべての火魔法を進みながら躱す。三匹は横一列に並んでいたので、風魔法を使い切り裂く。
「あれ、両断できない......」
魔法耐性か、この先こういう耐性スキル持ってる魔物が沢山出てくると厄介だなあ。先のことを考えてげんなりしながら先ほどの魔法の3倍の魔力を使い、風魔法を放つ。そうすると両断でき、黒い煙になる。
「終わった~!」
ミラに近づき、魔法を解除する。
「ミラ、けがはない?」
ミラは無言で頷く。何かを考え込んでいる。さすがにこの状態で潜るのは危ないかな......。
「今日はもう帰ろうか」
そう伝えると、ミラは驚き、大丈夫です! と言うが、流石に今のミラを気にしながら戦うっていうのは今の俺には無理だしな......。
「ごめんね。俺の技術がもっとあったらその状態でも進めるんだけど、今の俺じゃあちょっと厳しいんだ。宿で何を考えているのか話し合お?」
なるべくミラを傷つけないように言葉を選ぶ。ミラは数秒黙っていたが、帰りましょうと言って手をつないでくる。
転移をして、宿に戻る。1時間もいなかったがミラの方が重要だ。着替えて、ベッドに腰掛ける。珍しくミラはと割に座る。
「ミラの考えていることを教えてくれる?」
はいと頷き、ゆっくりと口を開く
「今日の戦い私すごい邪魔だと思ったんです。正直邪魔だと思いましたよね?」
ドキッとする。どうしよう、しっかり言った方がいいのか、それとも......。俺が回答に困っていると、正直に言ってくださいと真面目な顔で言われた。
「わ、わかった。確かにあの場面でミラは......邪魔だった、と思う。でもそれは俺の技術がなかっただけでミラがどうとかは......」
やっぱりですか。と、少し悲しい顔をする。でも、そのすぐ後に何かを決めた顔をする。
「タクミさん。私に戦い方を教えてもらえませんか?」
そういうことか。だが俺はあいにく戦い方なんてわからない。ミラのお願いを叶えられないことがすごく悔しくて手を強く握りしめる。感覚的に血が出たがそんなの気にならないくらいに悔しい。
「ごめん。俺は戦い方を教えるほど魔物と戦い慣れていないし、スキルの使い方もまだ素人なんだ。対人戦なら教えられるんだけど」
ミラはそうですか......。としゅんとしてしまう。まずい、何かミラに戦い方を教える方法を探すんだ。
本気で脳みそをフル回転させる。普段の何百倍のスピードで考える。1秒も立っていないだろうが俺の中では1時間以上考えていた感覚がある。そして一つの考えに至る。
「よし! ミラ、今すぐギルドに行こう」
ギルドに向かう。5分ほど歩きドアを開けてすぐに受付嬢の方に向かう。
「ギルマスと会いたいんですが」
受付嬢が少々お待ちくださいと言って席を立つ。今度10分も待たせたら今の俺は何するかわからないぞ!
待つこと2分ほど、お会いになると言われたので、受付嬢に案内される。案内したらすぐに受付嬢が元の場所に戻る。ノックをして返事を聞かずに開ける。
「ギルマス話があるんだけど」
お前はハイどうぞって言うまで待てねえのかよ......。ため息をつきながら言う。
「で、話ってなんだ?」
「戦い方を教えてくれ」
は? 何言ってんだみたいな顔をするが、俺が本気なのに気づき話を始める。
「何でだ? お前レベルの男なら戦い方なんてわかるだろ」
ぐっ......。痛いとこついてくるな。
「感覚で戦ってるから何とも言えないんだよ......。あとこの子にも教えてほしい」
ミラの頭をポンとする。ミラは、よ、よろしくお願いします! と頭を下げる。ギルマスがミラを見つめる。たぶんステータス見てるんだろうが、なんか気に食わないからギルマスをおちょくる。
「ギルマス、人の女をあんまり見つめないでください。このギルドを破壊したくなります」
「何言ってんだ。ステータス見てんだよ、お前はわかってんだろ!」
案の定俺は怒られた。予想済みだったさそんなこと。で、ミラはどうか尋ねる。
「嬢ちゃんがなに使うかわからんから何とも言えんが、教えるのは構わんぞ。ただ魔法に関しちゃあんまあてにすんな」
立ち回り方や、心構えを教えてくれればいいので問題ないと答える。
「魔法は俺が教えるんで大丈夫です」
「魔法使えんのか、何属性使えるんだ?」
誰にも言わないなら教えますよ。というとわかったよと同意してくれた。
「全部です」
......は? 間抜け顔で聞き返す。
「まじか?」
マジですと簡潔に答えて、空間以外のすべての属性の球を無詠唱で出して目の前に一列に並べる。
「おお、すげーな。全属性なんて初めて見たぞ。空間魔法はアイテムボックス使ってたよな」
転移も使えますけどねと言うと、何でもありだなと言われた。魔法は頑張って覚えたからね!
「そうだな、なら嬢ちゃんが何の武器を使うか決めて、戦い方。主に受け流しと立ち回りを重点的に教えるか」
大まかな内容を伝える。ギルマスは、だがな、と言い机に目をおろす。
「依頼がもっと少なくならないと教えるに教えられんぞ」
そういえば事務仕事もしてんだったか。なら、ミラのために一肌脱ぐかな!
「何の依頼があるんですか?」
あ? ええっと、と言い依頼を確認する。
「キラーウルフ5体の討伐と牙の採取、薬草100本、オーガの睾丸採取5体分、村の近くの森にゴブリンの集落があるからそれの壊滅、難しいのはソニアスタ大森林最深部にある生える、解呪の花の採取だな」
花の採取が難しいのは、あそこの最深部だからか。キラーウルフとオーガは森林にいるな。
「ゴブリン集落がある場所はどこですか?」
ちょっと待てよ、と言い地図を広げて指でここだと教えてくれる。ここって俺が最初にいた町やん。
「その依頼全部受けるんで、処理しといてください。あと、ミラをと訓練内容について話しといてください。色目使ったりしたらいくらギルマスでも本気で殺しますからね?」
そんなことしねーからさっさと行ってこいと言われたので全力で片づけに行く。
まずは採取依頼。大森林に転移して全力で最深部に向けて駆け出す。マップで花の位置はわかってるから、一直線で向かう。途中で、オーガジェネラルとオーガがいたので瞬殺して睾丸を分捕り駆け抜ける。
「あった、これとって次だ」
キラーウルフを探して倒していく。サーチ&デストロイじゃー! 30分程で、オーガ、キラーウルフと花の依頼を終わらせる。薬草は群生地を検索してそこで乱獲する。よし、薬草の依頼も終わり! ここまでで1時間半。
ラスト集落壊滅じゃあ! 転移であの町のギルド調質に転移する。ギルマスがびっくりしているけど問題ない。
「王都で依頼受けに来ましたよ! ゴブリンの集落はどこにあるんですか?」
君は入り口から入ってこれないのかいと言いながら、地図でこの辺だと教えてもらう。
「了解です! では、行ってきます」
転移で最初にこの世界に降り立った場所に行く。マップを開き、集落を探す。15分ほど走ると、全貌が見えてくる。
「ゴブリンジェネラルいるじゃん。うわ、プリンスもキングもいるし......。あの村じゃこの集落は荷が重すぎるな」
風魔法に魔力をいつもの20倍ほど込めて放つ。ほとんどのゴブリンが気付かずに両断される。ジェネラル、プリンス、キングも両断だ。ジェネラル達を回収して、生き残りがいないか確認する。
「ん? なんか敵じゃない反応が......」
集落の奥の方に行くと、洞窟があった。洞窟に入り、分かれ道を右に行くと、ドアがあった。蹴り開けて、中を見ると、獣人や人、様々な女が収容されてた。
「大丈夫ですか?」
真っ暗だったので光魔法で明かりをつけながら尋ねる。みんなが一斉に助けてくださいと駆け寄ってきたので、みんなを村の前まで転移させる。
俺はもう一方の分かれ道が気になるので瞬間移動で先程の部屋に戻る。分かれ道を先ほどとは逆に進無と、また扉がある。蹴破ると、宝物庫だったらしい、全部回収し、他には何もないことを確認して町のギルマス室に転移する。
「さ、終わりました! 確認は個々の冒険者に任せます! では」
ギルマスが何かを言っていたがすぐに転移したので何を言ったのかよくわからなかった。
「ただいま!」
依頼をすべて終わらして帰ってくるのに2時間ほど。頑張ったぜ!
「マジで終わったのか?」
半信半疑な状態で聞いてくる。依頼の品をギルマスの机に出そうとすると、解体室で出してくれと言われた。なんで受付じゃないのか聞いたら、絶対にうるさくなるからだと言われた。
「よし、見せてくれ」
依頼の品を一つずつ出していく。全部出し終わると、お前本当にすげえなと感心している。
「他の魔物も売りたいんだけど出していいですか?」
構わないから出してくれと言われたので、オーガジェネラル、ゴブリンジェネラル、ゴブリンプリンス、ゴブリンキングを出す。
「キングもいたのか......」
驚いているが、俺がすることには慣れたようで、取り乱すほどではなかった。
「集計するから待ってな」
ギルド院の人が大急ぎで集計する。合計金額金貨985枚、白金貨9枚分だ。金貨985枚をもらい、無限収納インベントリにしまう。依頼も片付き、明日から訓練を始めると言って今日は解散になった。
「ミラの武器を買いに行こうか」
手をつなぎ武器屋を目指す。ミラは両手剣を選んだ。俺と並んで戦う日も近いなと思うとほおが緩む。はたから見たらだいぶキモイと思うのでキッと真面目顔になる。
宿に帰り、ミラと明日の話をしていると、ルナが帰ってくる。今日Eランクに上がったらしい。それのお祝いで外食して、満腹状態でベッドに横になる。3人とも疲れていたのかすぐに眠ってしまう。
明日から戦い方を学ぶんだ。頑張るぞ。
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