第20話 訓練だ!

 朝日を浴び起床する。ミラも、訓練初日だから早く起きてきた。




「おはよ、今日はちゃんと起きれたんだね」


 きょ、今日は頑張ったんです。恥ずかしがりながらも答えてくれる。朝食を食べてギルドに向かう。今日はルナも一緒だ。ギルドに入ると、結構な人数の人間がいて驚いた。




「では、タクミ様行ってきます!」


 行ってらっしゃいと言いルナを送り出す。さてと、俺たちはギルマスだ。受付でギルド長と会いたいと伝えると、受付嬢はギルド長室にいるので行っていいですよと言って業務に戻ってしまう。あれ、案内してくれないのか。




 ギルド長室にミラと向かいドアを開ける。ん、中に誰かいるな。




「おお! 来たか。ほれそこ座れ」


 ギルマスが対面のソファーを指さす。ミラと共に座る。




「ギルマス、この方は?」


 30代くらいだろうか、体つきもしっかりしいて、服の上から筋肉が物凄い主張している。見た目から伝わる、こいつ......できる! 感がビンビン伝わってくる。




「ああ、こいつは俺の友人のグレイだ」


 グレイさんか。名前に負けてないな。顔もイケメンだし。




「君がタクミ君か。話に聞いていた通り強い雰囲気スゴイ感じるよ。で、そちらがミラさんだね。君も戦い方を学べばダルニスとも戦えるようになるよ」


 ギルマスがまだ負けねえよと笑いながら言う。ミラも2,3か月は頑張んないとな。




 数分ほど雑談をして、訓練場に向かう。朝一だからか、訓練場で練習してる人はいない。訓練場の中ほどまで進みギルマスことダルニスが話し始める。




「よっしゃ、今から訓練始めんぞ」


 木剣を肩に担ぎながら言う。


「訓練って何するんですか?」

「そりゃ、まずはどこまでできるのかのテストをするぞ」


 なるほど、体力テストとかそんな感じだな。ダルニスがこの訓練場を20周して来いと言って、いきなりテストが始まる。1周400mほどだ、全部で約8キロか。




「ミラは、今できる限界を確かめるんだよ」


 頑張りますと言って走り出した。ミラの頑張りを見ていると、




「お前も走るんだよ!」


 ダルニスに怒られた。8キロなんてすぐ終わるし俺に必要ないのではないか? 思ったことを言うが、いいからさっさと行って来いと言われた。しかたない、なら本気でいくか。ミラの邪魔にならないように端っこギリギリを通る。もちろん俺が走った時に出る突風も風魔法で打ち消す。




「では、行きます!」








 3分程で走り終わる。久しぶりに走り回ったから少し息が上がる。深呼吸をして落ち着けていると、あきれ顔のダルニスと目を見開いたグレイがいる。




「王国正規軍の隊長クラスのスピードだね。ここまで早いとは思ってもみなかったよ」


 褒められるのはうれしいが、魔法とか色々使えばもっと早くできるけどね。グレイ達と話していると、ミラも走り終わったようだ。




「お疲れさま。息が落ち着いたらおいでね」


 走り終わり、膝に手をついて息を整えているミラの頭を撫で、次のステップに移ってもらうためにダルニスに話しかける。




「さて、次は何をするのですか?」


 次は剣での打ち合いでもするかなと、言っている。こいつ......まさか何も考えてないな? 昨日話しておけって言ったのに。




 木剣を訓練場の倉庫から借りる。いろいろな木剣があるな。長剣タイプと短剣タイプのを各一本ずつを持って行こうかな。短剣は先が反ってるタイプの剣だ。まっすぐだと少し使いにくいんだよね。短剣を無限収納インベントリに入れる。




 倉庫からダルニスたちの方に戻るときに、ダルニスがグレイと話していたので、無言で気配を消してダルニスに切りかかる。




「うを! お前いきなり何してんだよ!」


 左にステップして躱し剣をこちらに向ける。すごいな。真後ろからの斬りつけを躱すか、悪いと言って剣を収める。




「お前、いきなり斬りつけるとかどうかしてるだろ......」


 まあまあ、と宥めて打ち合いをするためにお互いに向かい合う。グレイとミラが20メートルほど離れて観戦モードになる。




「ミラに戦い方を見せたいので、徐々に剣劇を速めてもらってもいいですか?」


 もちろんだと言いながらダルニスが俺に袈裟懸けで斬りかかる。剣を当ててそれを受ける。数秒の間鍔迫り合いになるが、ダルニスが剣を大きく振り俺が後退するのと同時にバックステップで距離をとる。




 次はお前から来いよと言われたので俺から行く。走りながら喉に突きを入れる。




「なかなかにえげつない攻撃してくんなあ!」


 首に向かう剣を右に弾く。弾いた勢いを使い回転して首を斬りつける。肘を素早くたたみ、剣で受ける。受けきってすぐにダルニスの足を払おうとする。うおっと、とバックステップで躱し、頭を狙って剣を振り下ろす。素早く体勢を直し剣がぶつかった瞬間に剣をスライドさせるように流す。受け流しきった瞬間に、受け流しの反動を使いダルニスの頭に剣を振り下ろす。




 それを右に転がるように避けて回避する。器用な避け方するな。ダルニスの次の行動を見極めるために敢えて追撃はしない。転がった勢いで立ち上がり剣をこちらに向ける。




「スゴイな。こんなに打ち合ってて楽しい奴は久しぶりだぞ。いったい誰に剣を習ったんだ?」




「漫画ですよ」


 ダルニスはいまいち理解してなかったが、書物を読んで独学でやったというと驚かれたが納得してくれた。俺が今やってる剣劇のほとんどが漫画とアニメで見た物ばかりだ。




「今度は攻め方を変えますよ!」


 木剣を長剣から短剣の物に変え、短剣を胸の前で構える。漫画とアニメでしか見たことないけど、この体のスペックならいけるだろ!




 ダルニスに駆け寄り、右肩に突きを繰り出す。ダルニスは体を半身にして躱す。だが、それは予測していた。すぐに剣先を顎に向けて突き出す。




「マジか!」


 バク転で避け、3歩ほど後退する。休む暇は与えないよ! すかさず間合いを詰めて今度は心臓部に突きを繰り出す。ダルニスは剣の腹で突きを止めるという離れ業をしてのけた。にゃろ、まだ余力残してんな!




 ダルニスが受けた剣を弾き反撃をしてくる。頭を狙って振りかぶる。落ち着いて剣筋を見て、剣と自分にダメージが逝かないように完璧にいなす。完璧に受け流しができたので、スムーズに反撃に転じれる。次は踏み込んでいた右脚を狙う。次からはフェイントも混ぜてくか。




 太ももに刺すと見せかけて顎を斬りつける。いきなり剣の方向が変わったので一瞬動きが止まる。もらった! と思ったが、現実は甘くなくバックステップで避けられる。




 フェイントを混ぜながら、徐々に剣速を上げていく。初めは受け流したり弾いたりして余裕がある感じだったが、だんだんダルニスから余裕が無くなっていく。速度を上げるごとに動きがトリッキーになってくので対処が難しくなっているのだ。




 開始から100合程打ち合っていると剣の方が持たなく、結構な強さで打ち合ったとたんに粉々になった。




「ありゃ、折れちゃった」


 でも結構楽しかったな。地球じゃこんなに剣振り回せないし、こんなに思い描いたような剣撃出せなかったからな。




「一回の試合で粉々になるなんて初めてだわ」


 ダルニスも取っ手だけになった木剣を見てガハハとでかい声で笑っている。レベルの高い戦いはやっぱり面白いな!




「どうでしたか、俺の剣捌きは」


 ダルニスはお前に訓練とかいるのかよ......。と溜息を吐きながら答える。今度は鉄の剣でやりましょうねと約束する。ダルニスと話し終わった後に、観戦していたミラに感想を聞く。




「改めてタクミさんがスゴイことが分かりました! 初めの方はちゃんと理解できたのですが、途中から頭がコンガら合っちゃいました。でもスゴイのは良くわかりました!」


 えらいぞといい頭を撫でる。えへへとはにかみながら撫でられて喜んでいる。




 ミラを可愛いなと思っていたら、グレイが話しかけてくる。




「私は剣術を鍛えていて、ある程度は相手がどう動くかはわかるんだが、君の動きはどの剣術にもない特殊な動きだった。途中から剣術のスタイルが変わったように見えたがあれは意図して変えていたのかい?」


 そうですよと伝えると実に興味深いな......。と考え込んでしまった。




「さ、次はミラの番だよ。頑張ってね」


 はい! と言ってダルニスの方に行くが、ミラの相手はグレイらしい。ちゃんとした戦いを教えるなら俺には無理だとのこと。




 ミラが倉庫から木剣を持ってくる。長剣タイプのようだが、子供用の剣とでも言えばよいのか、普通の長剣よりも短い。




 観戦するために20メートルほど離れる。ミラとグレイが向かい合い、剣を構える。グレイは鍛錬していると言っていた通り、剣にぶれがない。ミラはまだ剣になれていないので剣先がぶれている。




「いつでもきていいですよ」


 グレイさんは完全に教官モードだ。ミラは、行きます! 言い終わると同時にグレイに駆け寄る。

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