第15話 王都に到着だ!

「ミラ?」


 名前を呼ぶとビクッとしたが泣くのは止まらない。




「ご、ごめ、んなさい......」


 どうやらミラの仕業だったようだ。




「大丈夫だよ、洗って干せばいいんだから」


 ミラの頭を撫でて、ベッドを下りる。しかし俺が漏らしたのかと思ったよ......。自分の膀胱を疑ったことを心の中で謝罪し、お湯球を二つ作る。一つはお風呂用のボディーソープ入りの球、もう一つは洗濯用の洗剤を混ぜた球だ。




「ベッドはどうするかねえ」


 濡れた衣服を洗濯し、体を洗いながら考える。そういえばミラの服も洗濯しないと。




「ミラ洋服汚れちゃったんなら洗濯するよ」


 ミラはすすりながら服を脱ぎ渡してくる。今は真夜中なのでミラの輪郭がぼんやりとしか見えない。そういえばミラの下着とか服とか買わないとな。




 ミラ用のお湯球を作り入らせる。その間にベッドを包むくらいの大きさの水球を作り洗剤を混ぜる。確か中性じゃないとダメなんだよな。マットレスを包み汚れを浮き出させる。洗濯とお風呂が終わったので、ミラに服を渡し、俺も着替える。マットレスも綺麗になった。前よりもきれいになった気もするな!




「ミラ、こんなこと気にする必要ないからな、いつでも頼ってくれ」


 あくびをし、ミラを寝かしつける。




「す、すいませんでした」


 ミラが申し訳なさそうに此方を見る。俺はため息をつく。




「ミラ。俺は謝ってもらうよりも感謝された方がうれしいな」


 ミラはニコッと笑いながらありがとうございますと言い目をつむる。頭を撫でているとすぐに寝息が聞こえてくる。さてと俺も寝るかね。目をつむるとすぐに意識が遠くなる。












 太陽が昇ってきて鳥の鳴き声が聞こえてくる。もう朝か。伸びをしてベッドを出て着替える。




「ミ~ラ、起きないとおいてっちゃうよ?」


 ミラはまだ寝ていたいらしくもう少しだけ......と言いまた寝始める。まったく。ミラを抱っこして宿を出る。今日の昼頃には王都に着く予定だし、早く馬車に乗ってしまおう。




 昨日馬車を置いていた場所に向かうと、御者さんがもう待っていた。




「おはようございます。お早いですね」


 近づきながら声をかけると、御者も気づく。




「おはようございます。御者はいつでも出発できるように早めに起きるのですよ。早速向かいますか?」


 お願いしますと伝え馬車内に入る。お連れ様を起こさないように静かに向かいますね。と気を使ってくれた。この人はいい人だなあ。






 馬車で出発して3時間ほど、時刻は10時32分。串焼きを食べていると、ミラが目を覚ましたようだ。




「ん、もう朝? あれ、何で私抱かれてるんだ?」


 俺を顔を上げてみてくる。




「お、今頃起きたかお寝坊さん」


 ニコッと笑いながらミラに挨拶をする。ミラはすぐに馬車内にいてもう出発したことに気づいた。




「すすすすいません! 私寝ちゃったまんまタクミさんに抱っこしてもらって」




「ミラ、ありがとうでしょ?」


 夜中のことを思い出したのか、あ、っと声を出して少し恥ずかしそうな顔をしながら笑顔で。




「運んでくれてありがとうございました」


 言うと恥ずかしくなったのか俺の胸に隠れてしまった。10分もするとお腹がすいたのか、串焼きを要求してきたので、4本ほどあげた。遅めの朝食をとりながら、雑談をしていると、御者席から声がかかる。




「お客さん! そろそろ王都に着きますよ」


  馬車の窓を開けて顔を出すと、大きな城壁が見えてきた。




「おお。城壁が建ってるよ......」


 ミラが輝く俺の目を見つめてくる。




「そういえばタクミさんは異世界の方でしたね」


 微笑みながら俺を見つめてくる。見つめられると恥ずかしいんだけど......。




「ミ、ミラ! 王都に着いたらまず服と下着買いに行こうね!」


 恥ずかしくなって無理やり話題をそらす。




「そうですね。タクミさんの服をいくつか買っときたいですよね」




「ん? 買うのはミラの服と下着だよ」


 え? っと不思議な声を出すが、俺の服はもうあるし、ミラの服は奴隷が着るような麻の服なので早くかわいい服を買ってあげたいのだ。




 王都で何をするか話していると、王都に着いたようで関所で身分確認している。




「馬車の中の物も身分証を提示してくれ」


 ギルドカードを渡すと、急に態度を変えた。




「Aランク冒険者様でしたか! どうぞお通りください」


 ミラの確認はよいのかと聞いたら、Aランクの方が連れているので問題ないとのことらしい。




 馬車の停留場、で降りて御者にお礼を言い王都を探索する。




「さてと、服屋に行きますかね!」


 マップを開き服屋を探す。450メートル先に1軒見つけたのでそこに行く。




「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか」


 店に入ると女の人が声をかけてきた。




「この子に似合う服と下着をいくつか選んでくれないかな」




「ご予算はどれくらいでお選びしますか?」


 一着の相場を聞くと、大体銀貨1枚らしい。




「予算は特に気にしなくていいや。あまり動きを阻害しないものがいいかな」


 かしこまりましたと言いミラを衣類があるところへ連れて行く。その間に俺はダンジョンで何をするか考える。数分経つと、紙袋に何着か衣類と下着を入れて持ってきた。麻の服ではなく白いワンピースを着ている。




「どうですか? タクミさん」




「......あ、ああ、ごめん見とれてて返事をするのが遅れちゃった。とても似合うよ」


 えへへと笑いながらその場でターンをする。裾がきれいに広がる。ミラの白銀の髪と合わさって破壊力抜群だ。




 合計銀貨30枚と少しお高くなったがすぐに買い店を出る。ミラも気分がいいのか鼻歌を歌いながら手を握ってくる。




 ミラの可愛さを再確認して今日の宿をとる。宿り木亭という宿をとった。料理は小鳥のさえずり亭の方が美味かった。すごいな! 小鳥のさえずり亭。




 明日は早速ダンジョンに行こう。Sランク昇格はダンジョンを攻略してからでもいいだろう。風呂に入り、寝間着に着替えて夢の世界に旅建つ。ダンジョン攻略頑張るぞ......。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る