第14話 王都へ向かう
「ん、朝か......」
体を起こそうとすると体が動かないことに気づく。あれ、金縛りか? でも腕は動くな。布団をめくってみると、腹の上でミラが寝ている。ああ、そうだった。ミラと一緒に寝たんだった。
「ミラ、起きて朝だよ」
背中をポンポンしてミラを起こす。
「ふにゃ? ああ、おひゃようごじゃいましゅ~」
寝ぼけてるのか、ろれつが上手く回ってない可愛さ爆発してるやん......。ミラがしっかり目を覚ますのに5分ほどかかった。ミラは朝に弱いのか。
顔を洗い、口をゆすいで着替える。着替え終わった後に、ミラの方を見ると顔を真っ赤にしてベッドに蹲っている。さっきの寝ぼけがよほど恥ずかしかったようだ。
「ミラ王都に行くために準備しないと、早く支度してね」
早く立ち直ってほしいので一人で食堂に降りる朝食が来る前には降りてくるだろう。
席を確保し朝食を待っていると、ミラが食堂に入ってきた。
「おはよ、ミラ」
「お、おはようございます......」
顔に出さないようにしているが恥ずかしいのかしっぽがへにゃっとなっている。可愛いけどいじるのはやめとこう。
ミラと朝食を取り、宿を出る。出るときにガディアが見送りに来てくれた。
「元気でなタクミ。また偶にはこっちにも顔出せよ」
見送りなんてガディアはいいやつだな。
「もちろん。この場所は結構気に入ってるから必ず戻ってくるよ」
ガディアと握手をし、宿を後にする。宿から出て冒険者ギルドに向かう。
ギルドの中に入ると、ギョッとした目で見るやつ、尊敬の目で見てくる奴が様々だ。ギルドの中に喧嘩を売ってきたハゲがいた。そいつは俺を見るとこちらに歩いてくる。
またか、と思っていたが雰囲気が喧嘩腰じゃないから一応話を聞こうと思う。
「何か用ですか?」
ハゲは気まずそうに頭をかきながら俺に頭を下げてきた。
「この前はすまんかったな。そ、それだけだ」
そういい俺に背中を向けさっきいた場所に戻っていった。なんだ。あいつも性根は腐ってなかったんだな。感心しながら受付に向かう。そうすると受付の人から話しかけてきた。
「タクミさんですね。ギルマスがお呼びです」
そういってギルマスの部屋に連れて行ってもらう。受付の人が案内を終えて戻っていった。
「はいりますよ~」
ノックもせずに扉を開ける。
「......できればノックをしてほしいかな」
ギルマスが呆れた顔をする。なんかこの人には遠慮はいらない気がしてるんだよね。
「まあまあ。それよりランクと報酬の話をしましょうよ」
話題を転換させると、そうだったねと言いギルマスが話し始める。
「そうだったね。まずは飛び級制度達成おめでとう。これで本来ならCランクに昇格だったんだけど、Aランクに特例昇格にする。これは前回話したね」
「そうですね。そんなことを聞いた気がします」
「それでこのことを王都にあるギルドの本部に通達したら、君の実力を見て、相応しかったら即Sランク昇格にするらしい」
まじか!もうSランクがすぐそばまで来てるなんて最高だな!
「でも、Sランクになるには一度王都の方に行ってもらわないといけないんだ」
「ならちょうどよかった。これから王都に向かうところだったんですよ」
ギルマスは都合がいいと喜んでた。俺がそんなにSランクに上がるのがうれしいのかと思ったらどうやら仕事が減るらしいから喜んでいた。......なんて奴だギルマス。ってか俺ギルマスの名前を知らんな。
「そういえば俺ギルマスの名前知らないな。教えてくださいな」
そういえばそうだったと言い教えてくれた。ガネストというらしい。
「よろしくガネスト」
互いに握手をした後に、報酬の話に移る。
「君が倒したのはキラーウルフ1体とオーガキング1体そしてオーガメイジ2体とオーガファイターの5体だね」
キラーウルフとキングはわかったけど他のは確認してなかったからなんともいえないな。
「はいたぶんあってると思います」
確認を取った後に、ギルマスがゴブリンを大量に狩ったことあるかと聞かれた。あると答えると、ため息をつかれた。なんでや。
「ゴブリンだけじゃないけど、魔物がが大量に現れたってことは大群で攻めてくる可能性もあったんだよ。指揮個体が生まれなかったのが唯一の救いだけど」
それを未然に防いだ件で報酬が上乗せされるらしい。
「では報酬を渡そうか」
ギルマスが従業員を呼び2つの袋を持ってこさせる。一つは片手に収まるくらいで、もう一つは両手では収まらないくらいの大きさだ。
「ランクアップ報酬が金貨397枚と銀貨78枚。スタンピードを未然に防いだ報酬が銀貨50枚だ」
袋を渡される。俺1日で4000万近く稼いじまった......。金持ちだね! 楽観的に考える。貰った袋を
「君はアイテムボックスが使えるのか」
そういえば無意識に使ってた。なんか勘違いしてるからそういうことにしとこ。
「そうなんですよね。結構便利です」
報酬の話をすべて終え、少し雑談をして部屋を出ようとする。ガネストが王都には何しに行くのかと聞いてきた。ダンジョンに行くと伝えると、君ならちゃちゃっと攻略できそうだと笑いながら言った。ちゃちゃっと攻略する予定だから任せとけと伝え部屋を出る。
ギルドを出て、野宿や生活に使うものを買い。串焼きを100本ほど追加で買う。おっちゃんニコニコ俺もニコニコでいい買い物をしたと思っているとミラが、
「タクミさんは本当に串焼きが好きなんですね」
と柔らかい笑みを浮かべて俺に話しかけてくる。
「そうなんだよね。ここの串焼きは火入れも絶妙だし、使ってるタレも絶品なんだ。だからいくら食べても飽きないんだよ」
つい熱くなってしまった。あははと照れ笑いをしながら話を変える。
「王都にはどうやっていくのかな? 歩きでいくのかな。それとも馬車?」
基本は馬車でいくらしい。送迎をしてくれる人がいるんだと。バスみたいなものかと理解して、馬車があるところに向かう。
10分ほど歩くと場さが溜まってる停留所みたいな場所がある。
「ミラ、どの馬車に乗るの?」
ミラは二人で乗りたいらしく近くにいた馬車の御者に2人乗り用の馬車がある場所を聞きそこへ向かう。大人数用の馬車よりも作りが良くて値段が高そうだ。
「すいません。2人乗りの馬車を探しているんですが乗れますか?」
御者に聞くと乗れるらしい。よかった。これにするか。
「では早速王都に向かってもらえますか?」
「ええ、構いませんよ。片道銀貨3枚です」
それなりに高いがまあいいだろ。銀貨3枚を払い。馬車に乗り込み、ドアを閉め座ったことを確認すると、馬車が動き出す。
城門を出て、数時間が経つとミラに異変が起こった。
「タクミさん膝の上に乗せてもらっていいですか?」
どうやらお尻が痛くなったようだ。サスペンションもついてないからなあ。仕方ないか。
「いいよ、おいで」
許可を出すとしっぽを振り振りしながら俺の膝に座る。俺の目の前にミミがあったからモフモフしたい衝動にかられた。
「ミ、ミラ。ミミをモフモフしてもいいかな?」
今すぐも降りたい衝動をこらえミラに尋ねる。
「モフモフが何かはわかりませんがいいですよ。タクミさんになら何されてもいいですから」
ミラの顔が赤くなる。こっちまであずかしくなっちゃうよ......。でも! 許可が出たからモフモフするぞ!
「タ、タクミしゃんモフモフすごいです~」
とろけた様な顔になり、俺に全体重を預けてくる。ふふふ、俺のモフモフテクに魅了され骨抜きになったか。昔から猫や犬など動物をモフらると、猫はスリスリしてきて、犬はお腹を見せてくれるくらいにテクニシャンだったのだ。
「気持ちよかった?」
頭をなでながら尋ねると、モフモフの余韻に浸りながら答えてくれる。
「最高でした~。パパやママよりも上手いです。人生で一番うまいモフモフです!」
喜んでもらってよかった。そんな感じでまったり馬車の中で過ごす。4時間ほどミラとイチャイチャしてると、今日の中継地点の村に着いたらしい。
馬車を下りて村を見てみるとそこそこ賑わってる村だという印象を受ける。近くの宿を取り夕食を食べて眠る。夕食はガディアの宿の方が上手かったな。
部屋でちゃちゃっと洗濯と風呂を済ませて、就寝する。さすがに10時間以上あの馬車はケツが痛くなる。
「お休みミラ」
一緒にベッドに入り、ミラにお休みのあいさつをする。
「おやすみなさいタクミさん」
目をつむるとすぐに意識が落ちた。
今俺は夢を見ている。なんでわかるかっていうと、俺のお腹より下に水を永遠にかけられているからだ。そんな謎な夢を見てると唐突に意識が浮上する。
ん、やっぱり夢だったか。目を開けずにぼんやりそう思い濡らされてた場所を触ると、濡れている。嘘だろ!? この年でおもらしは恥ずかしすぎるぞ!?
目をカッと開き体を起こす。布団をどけるときれいに水玉を描いていた。放心状態のまま座っていると、となりからすすり泣く声が聞こえる。
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