第12話 抱き着かれた状態だと犯罪者にみられる

「オーガキング!? これは一体どういう事かな」


 先程までの余裕を持ったかをとは一変して、ギルマスがすごい顔で此方を見る。顔が怖いよ......




「どうもこうも、依頼の途中に出てきたから倒したんですよ。結構大変でしたよ......」


 キングとの戦いを思い出してうんうんと頷いていると、ギルマスが黙りこくって何かを考えている。1分程でギルますが何かをまとめられたようだ。うん、と独り言を言い俺に話しかける。




「一応ギルドカードを見せてくれないかい?」


 ギルドカード?なんで今なんだろう......。言われた通りにギルドカードを渡す。ギルマスがカードを見て、何かを確認し俺にカードを返してくる。




「一体何してたんですか?」


 俺が尋ねると、普通に教えてくれた。名前とランクが書いてあるの面の裏にモンスターの討伐履歴が出るらしい。初めて知ったよ。裏面を見ると確かに討伐したモンスターが書かれている。カードの機能に感動していると、ギルマスが口を開く。




「タクミ君。君はオーガキングがどのランクの人間が受ける依頼かわかるかい?」


 確かめるように聞いてくる。そうだな、BかAランクくらいならいけるんじゃないか? 思ったことを伝えるとため息をつかれた。なんでやねん。




「オーガキングはね、Aランク冒険者が最低でも5人は必要なくらい危険度の高いモンスターなんだ」


 おおう。まさかパーティーで受けるものだったとは。




「まあ、俺だけじゃなくて、ミラがいてくれたからってのもありますけどね」


 いまだ抱き着いて離れないミラは何も言わないがしっぽが左右に揺れている。モフモフしたい......。ミラをモフモフしたい願望に取りつかれていると、ギルマスが決心した口調で尋ねる。




「Aランクには今すぐ上げられるけどどうする?」


 Aランク! また随分と上がるなあ。さすがにSランクには上がらないか。そう聞くとさすがにSランクにはまだ上げられないらしい。Aランクでさえ例外なのだということ。とりあえずAランクで我慢するか。




「お願いします」


 モンスターの金額査定とギルドカードの更新に時間がかかるから明日もう一度来てほしいと言われ、宿に戻る。






 宿に戻ると、ガディアに出会う。


「お、タク......ミ。まさかお前、攫ってきたのか?」


 ガディアが犯罪者を見る目で見てくる。




「違うわ! 助けたんだよ。俺はそんなことするわけないだろ!」




「だよな、やってたら本気で軽蔑するとこだった......」


 こいつ......ぶん殴ってやろうか。俺がぶん殴るか迷っているとガディアから話しかけてきた。




「そういえば、昨日帰ってきてなかったな。依頼で遠くに行ってたのか?」




「ああ、ソニアスタ? 大森林の南部分でモンスターを狩ってたんだよ。飛び級でランクアップするための試験だったんだ」


 ガディアがあの制度使う奴いるのかよ......。とスゴイ驚いている。早くランクアップした方がいいって言ったのはガディアじゃないか......。




「タクミはすげえな。飛び級制度使うなんてな......。で、どのランクまで上がったんだ?」




「それなら、明日からAランクだよ」




「......さすがタクミとでもいうべきなのか」


 ガディアの中で俺は予想を軽く超える存在認定されたようだ。




「あと少しでSランクだよ。そうなったらちょっかい出してくる奴はいないよな」




「ああ、Sランクまで上がったらさすがにちょっかいは出せないわな」


 1階でガディアと話し込んでたので、ガディアの奥さんからそんなところで話すなと怒られ雑談は終了した。




 自分の部屋に入りミラに話しかける。肉体的には全く疲れないけど精神的に疲れる。




「分かりました」


 しぶしぶといった感じで離れてくれた。まだ抱き着いているつもりだったのか......。落ち着いたところでしっかりミラを見てみる。奴隷だったからか汚れてるし少し臭う。さっさときれいにするか。




「ミラ、身体綺麗にしようか。いつまでも汚れているのはいやでしょ?」




「タクミさんがそ、そう望むなら!」


 行き良い良く着ていたボロッちい麻の服を脱ぐ。その瞬間にミラの生まれたままの姿を目にしてしまう。




「うを!?」


 びっくりして目を塞いでしまう。もともと学生だった俺にそれは刺激が強過ぎるよ......。この場面はまだ俺にはレベルが高いよ! ミラの足先から首元まで覆えるお湯球を作る。中に洗剤を生成して、お湯を濁らせる。




「タ、タクミさんは無詠唱魔法が使えるんですね!」


 俺が無詠唱できることに驚いてるミラには悪いけど早くお湯の中に入って! 理性が持たないよ! 




 「あ、温かい! すごいですタクミさん! お湯ですよ!」


 お湯の中に入ったようだな。目を開けてミラを確認する。




「ミラ!手を入れるんじゃなくて、そのお湯の中に入って!」


 すぐに目を閉じる。驚いたよ、入ったと思ったら手を入れてるだけだった......。持ってくれよ理性。入ったことをしっかり確認して目を開ける。お湯から首を出してるミラが見える。よし、ちゃんと入ったな。




「じゃあ洗浄始めるから、動いちゃだめだよ」


 球を洗濯機のように回し始める。ミラが、う、動きましたよ! すごいです......。と魔法に感動している。可愛いな。そんなことを思ってると体はきれいになった気がする。汚れが浮き出て濁りだしたとたんにきれいにしてたら汚れが出なくなったからだ。






「次は頭洗っちゃうね」




「や、優しくお願いします」


 ミミがピコピコ動いている。は、早くモフモフしたい......。そんな欲望にも打ち勝ち、頭を洗うお湯球を生成する。お湯の中に洗剤を生成して耳以外の髪を包ませて体と同じように回し始める。身体よりも手ごわかったが無事綺麗にできた。次は洗剤入りの球を手に纏わせる。今度はミミをきれいにする。




「ふ、や、やん、くすぐったいですう......」


 いやらしい気持ちにさせる声を出さないでくれ......。ミミは下手すると中耳炎になっちゃうかもだから慎重に洗っているのだ。5分ほど丁寧に洗い、ミミも綺麗にする。全部綺麗になったのを確認すると、手と頭の球は消す。ミラの髪の毛は乾かしたいので水が滴らない程度に濡らしとく。




「ミラ、ちょっと今は服が合ないから俺の服を着ていてくれ」


 無限収納インベントリからティアが着ても問題なさそうな服とズボンを用意する。パンツはサイズが合いそうになかったから我慢してもらう。




「それ着てね、着終わったら呼んで」


 後ろを向きながら服を着るように言う。わかりましたと聞こえたので体の球も消す。き、消えました......。と驚いている。愛くるしいなあ。




 数分き終わったと声をかけられたのでミラを見る。上は俺が家でよく着ていた白地の服に黒文字で背中に『俺は世界一』と書かれた、外で着るのをはばかられる服だ。まあ今は普通に来ているけど。下はミラでも履きやすいように、ひもで調整できる黒いハーフパンツだ。




『びっくりするほど似合ってるな』


 めちゃくちゃ違和感がなくてびっくりする。




「あ、ありがとうございます」


 顔を少し赤くして俯きながら言う。しっぽはぶんぶん振っているから多分喜んでる。服も来たことだし俺も風呂にしよう。上を脱ぎ、頭から上半身丸ごと洗剤......。シャンプーとボディーソープで言い換えよう。なんか自分が食器みたいだ。




 髪の毛を覆っているお湯球にはシャンプーを、それ以外にはボディーソープを混ぜて回し始める。鼻はだしているから、息苦しくはならない。下半身は恥ずかしいのでズボンだけ脱ぎ、パンツとともに洗う。3分程で全身を洗い終える。球を消して無限収納インベントリから寝間着を出して着替える。




 今日着た衣服とミラの服を新しい衣服洗剤球に放り込んで洗浄を開始する。その間にミラを乾かす。




「ミラこっちおいで。髪乾かしてあげる」


 手招きすると、トテトテとこちらに来る。ベッドに座ると膝の上にミラがちょこんと座る。遠慮してるのか膝の先にしか座っていない。もうちょっと深く座ってほしいで、ミラに深く座るよう言うと、しっぽがぶんぶん振り回しながら深く腰掛けてくれる。風魔法と火魔法の熱だけ出して温風を作り上げて髪を乾かす。一時期親戚の姉さんがやっている美容室にドライヤーとシャンプー担当で入っていたことがあるから、シャンプーもドライヤーもお手の物さ。俺の実力は指名で俺が呼ばれるくらい上手かったのさ!




「はふう。タクミさん髪の毛触るの上手ですう」


 ぶんぶん振れてたしっぽがクタアッと垂れる。なんでもミミやしっぽは敏感で、その付近の部分も敏感になるらしい。気持ちよさそうで何よりだよ。




 髪の毛を乾かし終えるとミラが身体を俺に預けてくる。




「ミラ? 疲れちゃったかな」


 ミラは俺に体重を預けたまま眠りについていた。ミラをそっとベッドに寝かせ布団をかける。マップを開き時刻を見る。現在時刻は13時22分。中途半端な時間だなあ。転移魔法で部屋の外に出て街に出る。まずは武器屋だ。5分ほど歩き武器屋に着く。




「お、こないだの坊主じゃねえか。今度は何を買いに来たんだ?」


 おっちゃんが受付から声をかける。




「武器が壊れてしまったので新しいのを買いに......」


 そういうとおっちゃんの目が鋭くなる。




「昨日かおとといかっただけで剣はそうそう壊れんぞ、いったいどんな使い方をした?」


 なんでこんなに起こった口調なんだ? ......ああ、俺が適当に使て壊したと思ってるのか。




「いやあ、あのレベルの剣じゃ、キラーウルフくらいにしか効かなくて、オーガキングには木の枝レベルでしたよ」


 隠す必要もないので真実を話す。伝えると同時に、オーガキングに驚いたようだ。




「それが本当ならあんな剣じゃあ倒せんだろう」


 まだ半信半疑なので明日ギルドカードを持ってくるというと別にいいらしい。それより使った剣を見せろと言ってきた。無限収納インベントリから根元から折れた剣と剣先をを取り出す。自然を汚したくないので、剣の葉の部分はしっかり回収していたのだ。




「ほほう......これは適当に使った訳じゃなさそうだな。この傷は受け流そうとして失敗した跡か」


 す、すごい。剣を見ただけでどうやって戦ったかとかを見抜いてる。さすが専門職。感心しているとおっちゃんが、口を開く。




「お前さんが使うとしたら、武器は最低でも最上級の武器じゃないと先に剣が逝っちまう」


 武器の投球なんてあるのか。それについて説明してもらった。






 武器ランク


 一般級→希少級→上級→最上級→伝説級→ダンジョン級→神器級と別れている。右に行くほど強力な武器である。伝説級からは武器が意思を持っている場合がほとんどである。




 なるほど、ダンジョン級っていうからにはあるんだよな。




「ダンジョン級というのはダンジョンというものがあるのですか?」




「なんだ、そんなことも知らんのか。ダンジョンはあるぞ。○○の迷宮と書いてあるところだな。ダンジョンをクリアすると金銀財宝やダンジョン級のものすごく強い武具が手に入るんだよ」


 すごいな。次の目標はダンジョン攻略だな。ワクワクしてきた。前回買った剣より質の良い剣を買う。値段は鞘込みで金貨25枚。足りないから明日まで待ってもらう。




 取り置きしてもらい店を出る。帰りにいつもの串焼きを100本ほど買って帰る。串焼き屋の人はホクホク顔だ。宿に戻り部屋に戻る。鍵を使い扉を開けるとそこには仁王立ちしたミラがいた。




 え? なにこの状況......。

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