第11話 南の魔物は強かった

 オーガキングに近づき、あと10メートルの所でキングが気付いた。




「グアアアア!」


 キングの咆哮で、足がとられそうになる。そのすきに、キングが持っていた棍棒を俺に向けて振ってくる。躱すことができずに腹に当たる。




「うを!」


 ダメージはないが地面より、3メートルほどの所を水平移動している。どんなパワーしてんの!? そののまま300メートルほど飛ばされる。途中でミラを追い越してしまった。落ちる直前に両手両足を地面につけて滑る。さらに10メートルほど滑って止まる。ひえ~これは攻撃無効がなかったら1発ミンチだよ。




 立ち上がり転移でオーガの前に行こうとするとミラが俺を呼ぶ。




「どどどどうしたんですか!?」


 空中で追い抜いたから大変驚いたことだろう。




「いやあ、オーガキングにぶっ飛ばされちゃって......」




「え!オーガキングが出たんですか!?」




「うん、大丈夫まかせて!」


 あんまり見せたくはないけど、時間をかけると王国にまでキングが行っちゃうからね。




「じゃあ行ってくるよ。転移!」


 ミラは何かを言おうとしたが転移で聞こえなかった。キングがいた近くに転移する。あまり遠くに入ってないようだ。もう一度転移をしてキングの後ろに転移する。キングはまだ気づいて無いようで、のそのそ歩いている。剣をしっかり持ち、左の足首を斬りつける。




「グァアアアアア!」


 痛みでキングが暴れ始めた。クソ! あんまり深く入らなかった! 転移を使い20メートルほど後方に下がる。転移が終わった直後に先ほど俺がいたところに棍棒が振り落とされる。




「攻撃力3万は伊達じゃないな......」


 棍棒を振り下ろしたところが半径2メートルほどのクレーターができる。あれは剣でいなしたりできるのか? 再び俺はキングの目の前に転移して足首を斬りつけまくる。気を抜いていないからか、深い傷にはならない。キングが俺に向けて棍棒を振り下ろす。棍棒をいなしてみるが、




「クッ」


 いなしきれずに剣が吹っ飛ぶ。5メートル先に刺さっているが、キングが俺を逃がしてはくれない。先ほどよりもコンパクトに振って確実に当てようとしてくる。半身になって避けたり、転がって避けたりして何とか躱している。5分ほど避け続けていると、キングが肩で呼吸し始めた。今がチャンス!




 転移して剣をつかむ。今度は完全にいなして見せる。剣を構え、キングに突撃する。キングは棍棒を振り上げて叩き潰そうとしてくる。今度は完全にいなす。いなす事に全神経を集中させる。剣の腹に充てて剣を滑らすようにいなす。まだ完璧にいなせないが一応いなすことができた。キングがよろけて膝をつく。




「くらえ!」


先ほど斬りつけた左足首の健の部分に思いっきり突き刺す。




「ガァアアアア!?」


 剣はへし折れたが、左足首は破壊できた。無限収納インベントリから短剣を取り出して、某王宮剣術の構えをする。確かこんな感じだった。構えたとたんにキングが肩膝をついて棍棒を横なぎに払う。膝を曲げながら前傾姿勢をとる。頭の上をブオッと棍棒が通り抜けた瞬間に全力で駆け出す。肩膝をつき、左足首を庇いながら戦っているので今のキングはたいして怖くない。左足は破壊したから次は右足だ。




 右足首に向け駆けだす。キングもわかってたのか思いっきり俺を叩き潰してくる。今度は短剣だけどいなしてみる。剣の腹を滑らすイメージ......できた! 完全にいなされた棍棒は俺のすぐそばに振り下ろされる。いなした直後に駆け出した俺はキングの右足の健に短剣を深々と突き刺す。短剣が足首にすべて埋まって根元の部分でへし折れた。両足を破壊されたキングは立つことができなくなり倒れこむ。




「買ってきた剣は全部使っちゃったしな。どうしよう。魔法で仕留めてみるか?」


 風魔法のかまいたちで頸動脈付近を攻撃する。レベルが上がったからか、風魔法は頸動脈を深く傷つけ、オーガキングを絶命させた。オーガキングを無限収納インベントリに入れて少し経つと昨日の力が沸き上がる現象が起こる。だが、昨日の沸き上がりよりもさらに力があふれてくる。




「っく、これは少しつらいな......」


 5分近く力の沸き上がりと戦っているとようやく収まる。ふう、すごい湧きあがり方だったよ。とりあえずステータスを確認するかな。








名前:佐々木タクミ

種族:人

性別:男

年齢:17

Lv:92


HP:13540/13540

MP:16904/16904

力 :2500

防御:2222

速さ:2692

器用:2787


魔法

火魔法lv8

水魔法lv7

土魔法lv6

風魔法lv6

光魔法lv6

闇魔法lv6

空間魔法lv7


スキル

HP回復上昇lv1 MP回復上昇lv7 格闘技lv8 無限収納インベントリ 状態異常無効化 攻撃無効化 獲得経験値10倍 鑑定 マップlv4 成長率増加 魔力操作lv10 魔力消費軽減 直感lv6 剣術lv8



称号

バルディアの加護

ゴブリンの天敵

王殺し






 レベルアップがすごいな。スキルレベルも上がってるし。オーガキングは倒したし、ついでに残りの2匹も狩るか。マップを見てみると、こちらに近づいてくる反応がある。敵反応じゃないな。2分ほどすると、こちらに近づいてくるものの輪郭が見えてきた。




「ミラかこんな所でどうしたんだい? あぶな――グフッ」


 ミラが鳩尾めがけて抱き着いてきた。スキルさん仕事してくださいよ......。鳩尾をさすりながらミラに話しかけようとすると。ミラが泣いてるのが分かる。




「ど、どうしたのミラ? なんか嫌なことあったの?」


 聞くとミラはギュウっと抱きしめる力を強くしてくる。




「し、しん、ぱいしたん、ですから」


 どうやら心配をかけてしまったようだ。そのあとも声を詰まらせながらも、俺のことをどれだけ心配だかを説かれた。1日しかかかわってないんだけどな。まさかそんなに心配かけるとは......。








「分かりましたか? 私はすごーく怖かったんです! あんなにやさしいタクミさんが死んでしまったらって考えるといても立ってもいられずに来てしまったんです!」




「ごめんねミラ。そんなに心配かけたとは思わなかった。今度からは君を置いていかないから」


 そう言って俺からも抱きしめ返す。ん? なんか告白みたいなこと言ってないか? これ引かれるやつじゃないだろうか。ミラを見てみるが抱き着いてるから顔はわからないが、しっぽが左右にふらふら揺れている。しっぽを眺めていると、ミラが決心した顔で此方を向く。






「タクミさん。わたしは奴隷です」




「うん」




「たった1日しか一緒にいなかったけど、タクミさんはすごくかっこ良かったです。惚れてしまいました」




「それは、ピンチだったからたまたま俺がかっこよく見えただけかもしれないよ?」




「いえ、タクミさんと出会って、優しくしてもらって、そんなタクミさんの全部が好きになったんです。戦う姿だけじゃありません」




 抱きしめていた腕を解いて俺の目を見つめる。


「だから、タクミさん。私をお嫁さんにしてくれませんか」




 まさか彼女になるのをすっ飛ばして婚約してくれと言われるのは予想してなかった。ミラは真剣に言ってくれたんだ。俺も真剣に返さなければ。




「ミラの気持ちよく分かった。だけどお嫁さんにするのは難しいかな。まだ結婚とかはあまり考えていないし」


 そういうと、ミラが泣きそうになる。ああ、違うんだよミラ、




「まだ途中だから。話を聞いて」


 ミラがこくんとうなずく。




「婚約はまだ難しいけど、恋人からなら全然いいよ。ミラはそれじゃあだめかな?」


 ミラの顔に笑顔が戻る。初めてこんなこと言ったから心臓バックばくだよ。




「はい! ぜひ恋人からお願いします!」


 そういって抱き着いてくる。めちゃんこ可愛いな。ミラの頭を撫でていると、50メートル程後方からオーガの唸り声が聞こえる。......せっかくいいムードなんだから邪魔しないでくれ。かまいたちを結構強めに放つ。オーガの首と胴が分かれた。倒れた音的に何匹かいたようだ。




「ミラ、魔物を取りに行きたいんだけど......」




「や! まだタクミさんとぎゅってしてたいです」


 んん、なら仕方ない。ミラを抱っこする形で抱き、片手で回収する。今のでちょうど5体倒せたようだ。南門近くに転移して、中に通してもらう。ギルドに行く前に、まずは奴隷商だ。




「すみませーん」


 ドアの前で声をかけると、小太りのおじさんが出てくる。




「ようこそ、ベディア奴隷商へ。今日はいったいどんなご用件でしょうか」


 にこやかな顔をして接客をしてくる。




「この子の奴隷紋を消したいんだ」


 そういうとこちらへどうぞと奴隷商の中に招き入れてくれる。個室に入り。おっさんが話し始める。




「この子の奴隷紋解消でよろしいですかな?」




「はい、あってます」




「では、刻印の解消代で金貨2枚でございます」


 随分高いんだな。なぜか聞いてみるか。




「金貨2枚とは意外に高額ですね。なぜその値段なのか教えてもらっても?」


 奴隷商の人がもちろんですと、話し始めた。この国というよりは、ラグナストに奴隷紋の付与や解消をすることができる人が非常に少ないらしく、使用MPも多いことから、日に何度も使えない高度な技らしい。だからこんなに値段が上がるらしい。




「なるほど、そういうわけが。では金貨2枚お支払いしますね」


 ポケットから金貨を出す感じに無限収納インベントリから金貨2枚を出す




「確かに受け取りました。では専門の方を呼んできますので」


 5分ほどして専門業者がやってきた。彼らのことは刻印師と呼ぶらしい。刻印解除はすぐに終わった2~3分程だった。用も済んだので、ギルドに向かう。




 ギルドに入ると一斉にこちらを冒険者たちが向いてくる。ガン無視をして、受付に向かう。




「あの、ランクアップ試験の報告に来ました」


 そう伝えるとすぐにギルマスの部屋に行ってくれと言われた。言われた通りにギルマスの部屋に向かい入る。




「私はまだ入ってよいと言ってないんだが......それに、その抱きかかえている子は誰だい?」




「まあ、そんなことはいいじゃないですか。依頼を達成したんですし」


 そういうとギルマスの目つきが厳しくなる。




「それは本当かい?」




「嘘をつく理由がないです」




「それでは証明できるものは何かあるかい?」




「ありますが、ここで出すにはスペースが足りません」


 なら解体室を使えばいいと言って一緒に解体室まで行く。




「ここならいいだろう、出してくれ」


 言われたままにモンスターを一体一体無限収納インベントリから出す。




 ギルマスがモンスターを出すたびにほう、とか素晴らしいなど言ってくる。最後にキングオーガを出すとギルマスが驚きだした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る