第10話 尋ねてきた子は訳ありでした

「あ、じゃあ中入って」


 女の子を怒鳴りつけちゃったことを後悔しながら部屋に上げる。おばあちゃんが俺が小さいときに女の子には優しくするんだよと教えてくれたからな。俺はおばあちゃん子だったからその約束を守ってたのに......。




「で、でももうすぐ魔物が......」


 魔物に襲われてたのか。ていうか真っ暗過ぎて誰だかわかんないな。光魔法の球を部屋に作る。




「キャっ。まぶしい」


 女の子は目をつむってしまったがそんなことはどうでもいい。光に照らされて表になっているこの子の姿が問題だ。




「君......そ、その耳は本物かな?」




 そう、この子はケモ耳なのだ! 異世界転移したなら必ず見ておきたい種族ナンバーワンだ。




「は、はい。獣人ですので......」


 いいね! いいね! これはモフモフさせてもらうために助けてやらねばいけないね!




「まあ、まずは入って。話はそれからでも大丈夫でしょ?」


 現在時刻は2時15分外は肌寒い。すぐに扉を閉めたいのだ。獣人の子を部屋に入れ、話を聞こうとするがイスがないことに気づいた。




「ちょっと待ってて、今イス作るから」


 土魔法でイスを作る。座る部分の土を柔らかく作る。これでケツは痛くならないだろ。獣人の子がイスに座る。柔らかいことに驚いている。日本のソファーをイメージした柔らかさだからね。柔らかいのさ!




「で、何でこんな時間に外にいるの? 夜中に出歩かなきゃ理由があるの?」


 聞いてみると、しゅんとした顔をして下を向いてしまう。え、なんか地雷踏じゃった?




 あわあわしてると、獣人の子が話し始める。




「私は奴隷で、リニアスト王国に運ばれる途中でした。でもそのときに大森林の方からオーガジェネラルが現れたんです。その時に奴隷商の人が私を放り投げて囮に使ったんです。私話怖くなって逃げたんです。その時にこの家を見つけて......」




 なるほど、そんな理由があったのか。オーガジェネラルってのがよくわかんないけどオーガの進化形だろう。マップを開いて敵がいるか見るが、マップの端っこにいくつか反応がある。オーガは仲間を連れているようだ。なぜわかるかって?マップ機能に検索機能がついてるからさ! 




「そんなことがあったのか。今日は疲れてると思うから眠りなベッド使っていいから」


 ベッドを指さすが、奴隷なんかがベッドなんか使えません! とめっちゃ断られたが、無理やりベッドに入れて寝かしつける。そうするとよほど疲れてたのかすぐに寝息を立てる。肩口まで伸びたくすんだ白の髪が獣人の子の可愛さを引き立てている。綺麗にすればもっと白くなりそうだなあ。




 獣人の子は奴隷だと言っていたから、風呂も入っていないのだろう。明日入れてやるか。オーガジェネラルもマップ的に今日中にはこれなさそうだしな。新しいウォーターベッドを作り光の球を消し就寝する。






「朝か......」


 太陽の光が目に当たり目が覚める。そういえばオーガジェネラル話どこにいるんだ?マップを開き探すと、だいぶ近くにいるようだ。1時間もすればこちらに来れるほどだ。




「顔を洗うか」


 水の球を出して顔を洗う。水の球を消して、朝食を食べ始める。串焼きはいつ食べてもうまいなあ。




 黙々と食べ始め、3本目に手をかけようとしたとき、隣のウォーターベッドからグウっという音が聞こえる。後ろを振り向くと、獣人の子が串焼きを凝視してる。串焼きを上にあげたり左右に振ったりすると、顔が動かした通りに動く。可愛いな......。




「こっちおいで、一緒に食べよ?」


 ピクッと身体が動き、恐る恐るこっちに来る。隣に座った時に串焼きを上げると、すごい勢いで食べ始めた。10本食べたあたりでお腹がいっぱいになったっぽい。幸せそうな顔をしてお腹をさすってる。うん可愛い。




「お腹いっぱいになった?まだあるけど」


 そう聞くとハッとした顔になり顔が赤くなる。




「だ、大丈夫です。すみませんいっぱい食べてしまって......」




「いいよ、まだ100本近くあるし」


 そういえば名前すら聞いてないじゃないか。




「そういえば自己紹介してなかったね。俺はタクミって言うんだ」




「あ、私の名前はミラと言います」




「ミラね。じゃあそろそろオーガジェネラルがここらへんに来るし、少し移動しようか」


 ミラが、へ? という顔をして急に顔が真っ青になる。




「オーガジェネラルが来るんですか!? なら早く逃げないとタクミさんもやられちゃいます!」


 オーガジェネラルはそんなに恐ろしい敵なのか。なら、早くその脅威を消し去らないと。




「大丈夫、俺はこの大森林のモンスターを討伐しに来たんだ。だからオーガジェネラルでも勝てるから安心して」


 うわ~ちょっとカッコつけすぎたかな......。引かれてないといいけど。ミラを見ると驚いている。




「タクミさんは名だたる冒険者の方なのですか?」




「いや、全然有名じゃないよ」


 頭をかき、笑いながら言う。登録して数日しかたってないしね......。そんなことを話していると。大森林から地鳴りにも似た唸り声が聞こえる。




「な、なんだ?」


 俺が大きな声に驚いてると、ミラが青を通り越して白くなる。




「あ、あ、きちゃった。は、早く逃げてください! 私が時間を稼ぐので!」


 ミラは俺の服をつかみ逃げることを提案してくる。女の子にそんな辛いことさせられないよ。男たるもの女の子は守らなくてはいけないからね。これもおばあちゃんとの約束の一つだ。




「ミラは逃げていいよ。この小屋を出て、ひたすらまっすぐ行けば王都の南門に着くから」


 それだけ言い残し俺は外に出てオーガジェネラルを探しに出る。だが探す必要がなかった。




「でか過ぎねーかこれ......」


 小屋を出て200メートルほど先にいるのだが、確実に4メートル以上はあり、肌は薄紫。腕は俺の身長くらいある。オーガジェネラルってこんなにでかいのか......。




 オーガジェネラルに近づきながら鑑定をする。






名前:オーガキング

種族:オーガ

性別:オス

年齢:――

Lv:85


HP:38625/38625

MP:1753/1753

力 :27532

防御:12543

速さ:75

器用:53


魔法


スキル

指揮lv3  狂化 肉体強化lv1 重撃lv3 精力上昇lv5


称号

オーガの王

狂暴化








 ......オーガジェネラルじゃないじゃん! キングって確実に進化しちゃってるよね。これはちょっと大変だな......。 剣を抜きオーガキングに斬りかかるために駆け出す。

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