第4話 ギルドのテンプレは適当に回収するのが吉

無限収納インベントリを開くと、いくつか物が入っている。


・バルディアの手紙

・金貨10枚、銀貨10枚、銅貨10枚

・タクミの衣服上下5着づつ

・タクミの下着5着

・ゴブリンの死骸




お金があるのはうれしいな。宿で泊まるときに払えるだけあればいいな。まずはバルディア? あのじいさんの名前かな。それから見てみよう。




 タクミへ

 これを読んでるということは無事にラグナストに着いたようじゃな。この手紙には儂が教えきれんかったことを書いておこうと思って書いている。まず、リニアストに言っていると思うが異世界の言葉や文字が理解できたのは、儂の加護についている異世界語理解が働いてるからじゃ。読み書き会話は問題なくできるはずだからそこら辺は心配せんでもいいぞ。次にこの世界の貨幣についてじゃな。これは銅貨1枚が10円程度と考えてほしいの。銀貨は千円、金貨は10万円ってとこじゃの。そこんとこは実際に使ってなれとくれ。最後に、地球産のの物がないと落ち着かないと思ったからおぬしの衣服を入れといてやったぞ。さすがに使い物にならなくなったらかわいそうだと思ったから、今着ている衣服と靴含めて不壊の力を宿しといたぞ。まぁ、お主を召喚したのは儂の気まぐれじゃからの、せいぜいこの世界を楽しんでおくれ。


バルディアより

P・S

お主の部屋にある如何わしいものは全て消しといたから安心して楽しんどくれ。





......このじいさん。感謝してもしきれないぜ!




 じいさんに感謝をしながら冒険者ギルドへ向かう。赤い屋根と言っていたな。10分程道を歩くと冒険者ギルドが建っている建物は学校の体育館くらいの大きさだ。憧れの冒険者になれるのか、興奮してくるな!




 ギルドのウエスタンドアを開く。入って左が受付で、右には掲示板、その奥には食事ができる場所がある。ギルドに足を踏み入れると冒険者たちが一斉に俺のことを見てくる。これがテンプレの品定めというやつか!




 ひとりうなずきながら受付嬢に向かう。向かう途中に、食事スペースの椅子に座ってたスキンヘッドで筋骨隆々のおっさんが突っかかってくる。




「おいおい、いつからギルドは子供の遊び場になったんだ?」


 明らかに挑発してきているスキンヘッド。その取り巻きと思えるやつらが大声で笑っている。これがテンプレのギルドの絡み! 創造通り過ぎて吹き出しそうだ。




 笑いをこらえながら再び受付に歩いていく。無視されたのが面白くないのかスキンヘッドが怒り出す。




「てめぇに言ってんだよクソガキ!」


 俺の方に歩いてきて頭を殴ろうとしてくる。攻撃無効化があるから意味ないんだけどね。ってか酒臭えよ。


 おっさんの拳は、寸でのところで何かに弾かれた。そんなことを予想してなかったおっさんは数歩よろめく




 その隙に受付の前に行き冒険者登録を始める。




「すみません。冒険者登録をしたいのですが」


 受付の女性は呆けた顔をしている。あのおっさんが気になるのか? 大丈夫ですかと声をかけるとハッとした顔になり、受付の人が話し始める。




「あ、すみません。冒険者登録ですね! では、こちらの用紙に必要事項をお書きください」


 受付嬢が出した紙にはいくつか各項目があった。




・名前

・年齢

・得意武器

・得意魔法






これくらいならすぐに書けるな。用紙に記入しようとしたら、さっきのおっさんがぶ千切れたようで、助走をつけて殴りかかってくる。どんだけ殴ったってダメージは入らないけどね。先ほどと同じようにおっさんは何かに弾かれ尻もちをつく。




 正直今は冒険者登録に集中したいから待っていてほしいよ。用紙に必要なことを書く。




・タクミ

・17

・剣

・なし




 よし、うまく書けたよ。早速受付の人に渡す。


「よろしくお願いします」

「はい、確認しますので少々お待ちください」


 おっさんのことは気にしないようにしたのか、処理を始める。肝心なおっさんは、訳も分からずぽかんとしてた。




 待つこと10秒ほど、受け付けの人の確認が終了し、ギルドカードが渡される。再発行は銀貨5枚だそうだ。道中に料理屋があり、看板を見たら1食銅貨20枚ほどだったので相当高い。200円で料理が食える場所もなかなかだけどね。




「ギルドについて説明は必要ですか?」

「お願いします」


 そういうと受付の女の人がコホンと咳ばらいをし説明をしてくれた。まとめるとこんな感じだ。




・ギルドランクはF~Sの7段階

・ランクを上げるには依頼を受けなくてはいけない

・依頼を失敗すると違約金を支払わなければならない

・Dランクまでは依頼達成数でランクが上がるそれ以外は昇格試験を受けなくてはいけない

・特例として大きな功績をあげた者はランクが上がることがある

・ギルドでの争いごとに関してはギルドは一切責任を負わない

・例外としてギルド員立ち合いの元互いにかけるものとルールを決め、争うのはよしとする。その際はギルド裏の修練場を使用するものとする

・それ以外の争いはギルド員の判断によりギルドカードがはく奪される場合有り




 という感じだね。ルールが多く無くて助かるよ。まぁ、荒くれ者が多い冒険者にルールがどうのとかあんまり言ってられないのだろう。ここまでで質問があるか聞かれたのでないと答えると、説明が終了した。そうだ、ギルドの職員ならいい宿を知ってたりするよね。




「あの、最後にここらへんで比較的安くていい宿を知りませんか?」


 受付嬢が少し考えるそぶりを見せて、ひらめいたのか俺に教えてくれた。




「なら、ギルドを出て右に進むと小鳥のさえずり亭という宿がございます。料理もおいしく部屋も綺麗なのでおすすめですね」


 なるほど、小鳥のさえずり亭か。いい名前だな。宿はそこにしよう。




「ありがとうございました。ではそちらに行きたいと思います」


 お礼を言い、おっさんを素通りしギルドを出ようとするが、さすがにおっさんは許してくれず、性懲りもなく殴りかかってくる。




「死ねクソガキ!」


 おっさんの腕が動き出した瞬間におっさんの懐に入り股間を蹴り上げる。いくら筋骨隆々だろうとここは鍛えられなかったようだ。泡を吹いて倒れる。




 ギルドはだいぶざわついている。あのザックがやられたよ......あの新人何者だよなど、周りを騒がせちまった。ギルドの人たちにうるさくして済まないと言ってギルドを出る。




 言われた通りの道を歩くこと五分。目的地の小鳥のさえずり亭が見えた。早速中に入る。受付の所に歩いていくが、誰もいない。忙しいのかなと思いながらも声をかけてみたら、奥の部屋から女の子の声がした。この声はかわいい子に違いない!そう胸を躍らせながら待つと、その部屋から人が出てきた。




「え˝?」


 自分でもびっくりするような声が出た。

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