第3話  初戦闘はゴブリン

「ん......ここは?」


 目が覚めて、あたりを見回す。木、木、木。本当に森に居るのか......




「まじで異世界転移来たー!」


 年甲斐もなく全力で叫ぶ。でも仕方ないでしょ! 夢にまで見た異世界転移、これは叫ばない方がおかしいさ。幸いにも周りに人間はいないわけだしね。




 叫んだ直後、後ろのしげみからガサガサと音が聞こえる。




「ひ! な、何の音?」


 素早く立ち上がり、2、3歩後ずさる。いつでも逃げられるように準備をしながら。




「グギャ?」


 しげみから出てきたのは、身長1メートルほどの棍棒を持った全身緑色の人型の生き物だった。魔族かもしれないと思い、恐る恐る声をかけてみる。




「あの~こんにちわ」


 できるだけ気さくに声をかけてみるが、グギャグギャ叫びながらこちらに向かってくる。違う!これ絶対に魔物だよ!




 そう直感で理解し、速効で反転して全力で走り出す。魔物が追いかけてくるが、幸いあの魔物は足が速くないのかどんどん差が広がっていく。そこで思い出したかのように頭に一つのスキル名が浮かんだ。




 そういえばがあるじゃないか! 今は50メートル以上差がついているので、逃げる姿勢を取りながら鑑定を発動する。




「鑑定!」








名前:――

種族:ゴブリン

性別:オス

年齢:――

Lv:03


HP:35/35

MP:0/0

力 :30

防御:10

速さ:8

器用:8


魔法


スキル

棍棒lv1 精力上昇lv3


称号








 HPと力以外は俺が勝ってるか。ならそれを駆使し......ん? 俺逃げる必要あったか? 自分のステータスを確認する。








名前:佐々木タクミ

種族:人

性別:男

年齢:17

Lv:01


HP:20/20

MP:350/350

力 :20

防御:18

速さ:15

器用:25


魔法


スキル

HP回復上昇lv1 MP回復上昇lv1 格闘技lv1 無限収納インベントリ 状態異常無効化 攻撃無効化 獲得経験値10倍 鑑定 マップlv1 成長率増加


称号

バルディアの加護








 ......攻撃無効あるから逃げる必要なかったよ! そうと決まれば逃げる必要はない。こちらから迎えに行ってやる! 




 いきなり全速力で突撃しに来た俺にビビったのか、ゴブリンの動きが止まる。安全に攻撃できる範囲まで近づき、思いっきりパンチをお見舞いする。痛った! ぶん殴るのって結構手が痛いんだな......




「グギャ!?」


 助走に加え、俺の全体重が乗ったパンチ。2メートル程ごろごろ転がり、数秒動かなくなる。だがすぐによろよろしながら立ち上がる。まだダメージが足りないのかよ。もう手が痛いぜ。




 拳をボクシングのような感じに構える。格闘技スキルのおかげか、やったこともないボクシングスタイルが身体になじむ。スキルってのはすごいな!




 スキルに感心していると、ゴブリンはお構いなしに棍棒をあてに襲い掛かってくる。振り降ろされた棍棒をバックステップでかわし、すかさず距離を詰める。ゴブリンはよけられたことに驚いてるようだが、そんなに余裕はないので、全力であごにストレートを打ち込む。白目をむいて倒れる。息はしてないようだ。




「う......」


 初めて生物を殺してしまったからか、吐き気を催す。30分程気持ち悪さと戦い、ようやく気分が落ち着いたところで、ゴブリンを無限収納インベントリに入れる。




 まだ気持ち悪さがあるが、早くリニアスト王国を目指さなきゃ。


「マップ」


このスキルはすごい便利だよね、自分が今どこにいるかすぐにわかるし、左上に時間がついてるから今が何時なのかすぐにわかる。ちなみに今は14時だ。マップの上側に道があるから、まずはそこを目指そう。








「......おかしいな、一時間で着くとか言ってなかったか?」


 もうかれこれ2時間近く歩いてる。日が傾き始めて来ちゃったよ。そんなことをぼやきながら森林を歩いていると、ようやく街道が見えてきた。マップを確認するとすぐ近くに建物があることが分かった。




 20分ほど歩くと、門が見えてくる。やった!久しぶりの人工物だ! 門の近くまで歩いていくと、鎧を着た人に止められた。




「君、ちょっと待ちなさい」


 これはあれか、ラノベでよく見た展開だな。身分を証明するものを見せるとかそんな感じだったな。




「はい、なんでしょうか」

「こんな時間に何の用だ」


 何の用かって、たまたま近くがここだっただけなんだよな。




「旅をしていまして。ここに来る途中に道に迷ってしまいまして。本当ならもっと早くつけたのですが」


 よし、怪しくない言い訳が出てきたな。




「なるほど、それは災難だったな。何か身分を証明できるものはあるか?」


 身分証。そんなの異世界転移2時間ちょっとの俺が持ってるわけないだろ。確かラノベではこんなことを言ってたよな。




「道中ゴブリンに襲われてしまって無くしてしまったのです」


 こんな感じにいえば問題ないだろう。




「そうか、ならちょっと詰め所に来てもらおう」


 門番の人がほかの人を呼び門番を変わってもらっている。そのまま門番の人についていくと、詰め所に着いた。中には椅子に長机、水晶玉が置いてある。




「この水晶に触れてみてくれ」


 門番が促す。なんだろう、この水晶。言われた通りに水晶に触れる。水晶が青色に光りだす。すごい!あれはどうやって光ってるんだろう。水晶を見つめていると、




「うん、犯罪は犯してないな。仮証明を作ってやるからちょっと待ってな」


 この水晶は犯罪を感知するものだったか、水晶に感心していると門番が紙に何かを書いて俺に渡してくる。




「ほれ、これが仮身分証だ。七日以内に新しい身分証作り直せよ」


 門番が渡した紙には、俺の身分を証明すると書いてある。異世界語なのになぜか読める。なんか不思議な感覚だな、見たことない文字なのに日本語と同じレベルで自然に読めるぞ。




「ありがとうございます。簡単に身分証を作るにはどこに行けばいいですかね」


 冒険者ギルドがあればいいな。




「ああ、なら冒険者ギルドに行くといい。門からまっすぐ進めば赤い屋根のでかい建物があるはずだ。そこが冒険者ギルドだからすぐに分かるぞ。ようこそリニアスト王国へ」


 なるほど、やはり冒険者ギルドはあったか。楽しみだな!




 詰め所を出て門の中に入る。門の中は何度も夢見た中世ヨーロッパ風の建築物ばかりだった。興奮しながら少し歩くと、ここが異世界なんだと実感が強くなる。




 登録の前に神様のじいさんから貰ったプレゼントを確認したいな。道のわきに置いてある木箱に腰掛け、無限収納インベントリを開く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る