第29話 平成31年4月29日(月)「勉強」
土曜日は朝から気怠く、少し熱っぽかった。疲れが出たのだと思う。10連休の初日はほとんど寝て過ごすことになってしまった。翌日には体調は回復し、わたしはお姉ちゃんと渋谷へ。そこで、”じいじ”とお祖母ちゃんと合流し、ひたすらショッピング。わたしたちを元気付けてくれるためだったと思う。わたしは元気一杯になったけど、買い物に付き合ってくれた3人は人混みもあってくたくたになっていた。
ご馳走を食べた後、車で北関東の”じいじ”の家へ。週末までここで過ごす。長期休暇恒例だけど、今回はお姉ちゃんが一緒で他の従兄姉たちは来ない。のんびり過ごせそうだ。
しかし、この連休は休んでばかりもいられない。わたしは4月に休みすぎた。4月にあった登校日16日のうち、おたふく風邪で6日、忌引きで3日休んだので、出席は半分以下だ。しかも、学校に行けたのは始業式や体力測定など学校行事のある時期が多く、授業を受けたのは数えるほどしかない。
実際に連休前の金曜の授業はさっぱり分からなかった。1年の時はそこそこ成績が良かったのに、このままではダメだ。わたしは危機感を覚えた。この連休中になんとか追いつかないと。
幸い日野さんのノートがある。日野さんと言えば、転校してきた3学期に半分ほど欠席したのに、学年末テストでかなりの成績だったらしい。それを聞いた時にも凄いと思ったけど、自分がそれに近い状況になるとその凄さが身をもって分かった。頭の出来が違うのだろう。彼女のノートを見てもそれが分かる。
お姉ちゃんも日野さんのノートを見て、「私が教えるよりそれ見て勉強した方が良さそう。分からないところがあったら聞いて」と言って自分の宿題をやり始めた。10連休だけあって、宿題も結構あるしね。わたしは日野さんのノートをしっかり理解してから、宿題をやってちゃんと分かっているか確認することにした。
問題は数学だ。理科も少し怪しかったりするが、国英社はこれまで成績が良かった。ノートをざっと見た限り、数学以外はそれほど難しいそうには見えない。単語などをちゃんと覚えなきゃいけないけど、なんとかなりそうだ。数学は……中学生になってから、難しいと感じるようになった。それだけにこれまでも他の教科より時間を掛けて勉強している。テストでも50点を切ることはない。でも、分かってるっていう感触がない。
日野さんのノートを見ても、まったく分からないということはない。なんとなくは分かる。ノートに書かれた例題と同じような問題なら解けるだろう。しかし、応用問題になるとどこから手をつけていいか分からなくなる。
「お姉ちゃん、数学なんだけど……」
お姉ちゃんはこちらを見るなり、うげっという顔をした。さすが姉妹。こんなところはよく似ている。嬉しくないけど。
お姉ちゃんの説明も分かったような、分からないような感じで要領を得ない。どこが分からないかが分からないので、先生に聞くのも困ってしまうんだよね。お姉ちゃんもわたしと同じような感じなので、ふたりでああだこうだ言っていても理解が進んだ気がしない。数学なんて何の役に立つんだあ! と叫び出したい気持ちになる。それでも、ノートを貸してくれた日野さんの好意に応えるために、わたしは勉強を続けた。
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