第18話 平成31年4月18日(木)「退屈」
「ひまー!!!!!」
普段は時間が全然足りないと思っているのに、なんで時間がある時はこんなにヒマに感じるのだろう。現在、お昼過ぎ。お姉ちゃんが朝作ってくれたお昼ご飯を食べたところ。窓の外は春というより初夏に近い日差し。ああ、太陽が恋しい。紫外線は私の大敵で、いつもならこんな日は外に出るのを躊躇うんだけど、今はこの日差しを浴びたい。
熱が出て、学校を休んだのは金曜の朝だ。日野さんと入れ替わるように私が欠席となった。ただの熱ではなく、両方の耳の下あたりに腫れがあり、病院に行くとおたふく風邪を疑われた。そして、土曜日曜と熱と痛みにうなされた。
月曜日から体調が少し持ち直し、火曜日にはだいぶ腫れが引いた。昨日の水曜日は身体の怠さは残っていたものの、ほぼ大丈夫かなといった感じになった。今日は身体も動く。ようやく治ったと心は弾むが、まだ安静にしておくように言われている。
明日まで休みだって。
わたしもお姉ちゃんもワクチン接種はしていた。それで罹るのは珍しいらしいが、まったくないという訳ではない。お母さんは子供の頃にかかったそうだが、お父さんは記憶にないというし、お姉ちゃんはかかったことがない。家の中でも隔離され、お父さんやお姉ちゃんとの接触は差し控えるようにと言われた。
感染症の怖さ、他の人にうつさないことの大切さをお母さんから教えられた。分かってはいたけど、自分がかかるとより身近な問題に感じる。それに、日野さんは免疫力が低くて困っていると聞いた。わたしがうつしでもしたら大変だ。今はじっと我慢。
とはいえ、ヒマに感じるのも止められない。ファッション誌を読んだり、お気に入りの映画を見たりしていたが、それにも飽きた。インターネットは時間潰しに最適だけど、あまり見過ぎないように気をつけている。本当は休んだ分の勉強をすべきなんだろうけど・・・・・・。
おしゃべりしたいなあ。
わたしはおしゃべりが好き。話すことも聞くことも好き。面と向かって、相手を見ながらおしゃべりすることが大好きだ。相手の表情や仕草、声や言葉のひとつひとつから相手の気持ちを読み取る。わたしにとっておしゃべりは全力で楽しむものだ。
だから、電話だと調子が出ない。メールなどの文字のやりとりは苦手。今時の女子中学生らしくないと思うこともある。とはいえ、今できることは限られている。わたしはお姉ちゃんに借りてきて欲しい映画のタイトルをLINEで伝えた。
「純ちゃん」
「うん」
夜、純ちゃんに電話する。メッセ送っても気付かれないので、純ちゃん相手だと電話がいちばん確実だ。
「だいぶ、元気になったよ」
「よかった」
「ありがと。そっちはどう? 変わったこととか、なかった?」
「特にない」
「そっか」
しばらくおしゃべりを続けた。ほとんどわたしが喋ってるんだけど、ふたりの間ではそれが自然。純ちゃんのお蔭で、おしゃべりがしたいという欲求は少し満たすことができた。ありがとう、純ちゃん。
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