読書

僕は窓際で本を読む。外は緑に囲まれていて、森閑に鳥たちの声が響く。人の気配はまるでなくて、読書をするのには最適の環境だった。


昼寝がてら、僕は色んなことを考える。生とか死とか、存在意義とか。結局答えは出ないまま、気づけば辺りは薄暗い。


けれどいいんだ。誰かが昔言ってたように、僕みたいな奴にとっては、哲学は惰眠のお供くらいがちょうどいい。答えはいつか出ればいいのさ。


夜になる。月を一人で眺めていると、うさぎが一匹寄ってくる。「置いていかれてしまったんだね。僕と同じだ」そう言って背中を撫でてやる。目が赤かった。きっと泣いていたんだろう。大丈夫、そのうち一人にだって慣れるさ。


明日に向けてそろそろ寝よう。何かがあるわけでもないけれど。一曲だけ音楽を聴く。昔流行ったバンドの曲。僕は名前も知りはしない。「生きた街を遠ざける」随分遠くにいってしまった。


朝になった。目をこすって大きく伸びる。また、一日が始まる。


僕は窓際で本を読む。外は瓦礫に囲まれていて、森閑に鳥たちの声が響く。人はたぶんどこにもいなくて、読書をするのには最適の環境だった。


本はまだまだたくさんある。時間もまだまだたくさんある。


読書は飽きない。今までも、これからも。だから、それくらいしかやることがなくても、毎日それなりに楽しい。


でも、一つだけ。新刊が読めないことだけは、少し、残念だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る