57話

 光が霧散していく。

 カルディヤの体が傾く。翼をはためかせようとするが、桂馬兵に穴をあけられ、羽ばたくことはできなかった。

「こんなことでは……」

 新たに表れた翼のあるモンスターが、カルディヤの体を支えようとする。が、支えきることができず、絡まりあいながら落下していった。

「魔力が足りなかったのか」

「呼ばれたモンスターの力は召喚者の魔力に依存するんだね。一つ勉強になった」

 ふっと、気が抜ける。俺の召還兵が、二体とも消えた。

「さすがに疲れたよ」

「あんたは休んどいて。行くぞ、レミス」

「うんっ」

 二人は、力なく地面に這いつくばるカルディヤのもとへ駆け寄った。魔族は、もう声を発する力もないようだった。

「聞きたいこともあるが、とどめを刺すべきだね」

「……」

「先を急がせてもらう」

 黒い鎧を着た女は、魔族の胸に剣を突き刺した。しかし、魔族の目からは輝きが失われないままだった。

「これでは死なないのか」

「ぼくがっ」

 剣の柄に、コキノレミスが手を添えた。そんなに力はないはずだが、カルディヤの顔色はみるみる悪くなっていき、そして、ついには瞼を閉じた。

「どういうことだ、レミス」

「からだじゃなくて、こころをころさないとっ」

「よくわからない」

 俺もよくはわからない。けれども魔族には、心と体を分離する技術があるというのは、身をもって知った。人間とは体の持つ意味が違うのかもしれない。

 光から解放されたキクノスは、意識がないようだった。

「息はある。……山小屋の親父はいないようだな。強さもわかないけどね」

「カルディヤの目的は時間稼ぎだった。おそらくダスカロスを逃がすためのだろう」

「おとうさん……」

「コキノレミス、覚悟ができているなら……行くぞ。父親を殺しに」

「……うんっ」

 気合を入れて立ち上がろうとした。が、ふらついて膝をついてしまった。

「まったく。少しは足止めは有効だったみたいね」

「面目ない」

「あんたがいなければうまくはいかなかった。仕方ないさ。キクノスも目が覚めるかもしれない。少し休んでから、追おう」

 深い息をついた。敵がいない時間は、久しぶりだ

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