新手

56話

 コキノレミスの呼び出した盾が、横に広がる。盤術、風車。

「守りですか。賢明でしょう」

 カルディヤは笑っている。確かに風車は低く構えて、相手の出方に合わせる戦法だ。しかしこの戦いは、一対一ではない。

 俺の手からは角兵が、そしてステノの手からは飛車兵が出現する。攻撃の準備も、できた。

「隙ができたら攻撃する。攻撃の対処はまずはコキノレミスに任せる」

「わかったっ」

 カルディヤの足元の光が伸びて、こちらに向かってきた。それほど勢いはない。だが、光の先から黒い渦が発生していた。そしてそこから、モンスターが召喚される。

「やはり、あいつは召喚しかできない」

 産み落とされたモンスターを、まずはコキノレミスが受け止める。動きが止まったところを、俺とステノの召喚兵が仕留める。

「そんな方法でいつまで持ちますかね」

「それは、こちらも同じだ」

 モンスターがいなくなった隙を突き、俺はさらに駒を使う。めったにこの技は使うことがないが、使うとしたら今がそのときだろう。

「召喚、桂馬兵!」

 二体召喚。自分も含めると三つの視点で戦わなければならないうえに、体力の消耗が激しい。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。

「やるな、フリソス」

「長期戦は無理だぜ」

 次に次に呼び出されるモンスターだったが、こちらもきちんと対応できている。強力なモンスターを呼ぶ余裕もないのだろう、苦労せずに倒せるものばかりが現れる。そしてその隙間を縫うように、跳ねながらカルディヤに迫る桂馬兵。

「そんなものが……そんなものが私には届きません!」

 光がカルディヤの体の前に広がり、そこから亀のようなモンスターが現れる。だが、出現しきる前に桂馬兵が甲羅を蹴り飛ばした。やはり、桂馬の足は速い。

 カルディヤの動きが止まった。

「今だ」

「うんっ」

 モンスターを全て蹴散らし、一気に全軍が前進した。

「まだ……まだもう少し……」

 魔族はうめいていた。光が不規則に渦巻き、何も生み出せずにいる。

「終わりだ」

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