54話

「やっぱりあんたたちか」

 姿を現したのはステノだった。近くの牢にいたようだ。

「弓使いをやった」

「レミスが、か?」

「ああ」

 合流して三人になった俺たちは、警戒しながら町を進んでいく。人の気配がない。まさかエレガティス以外、魔力が断たれて死んでしまったということはないと思うのだが。あと、魔法使いキクノスの姿もない。

 結局、町の中には誰も居なかった。

「フリソス、これ、どうやって帰るんだ」

「そこが問題だ」

 どこかでキクノスが見つかるのではないか、という期待があった。この階層から徒歩で帰るとなるとかなりの距離になる。モンスターも新たには生まれていないはずだが、最初からいる奴に関しては倒していかなければならないはずだ。

「レミスだったら……どう読む?」

「えっ、ぼくっ?」

「あたしは、読めていなかった。あいつらは弓使いだけ残して、どうするのが最善と考えたんだ?」

「……じかんかせぎ……かな……」

「時間稼ぎ」

「えっと……その、なにかおおきなわざのための……」

 コキノレミスは、うつむいている。「大きな技」を使うとしたら、それは父親ということだろうか。何かを知っているのかもしれない。

「とりあえず食料や駒は確保できた。王が魔力を止められる時間にも限界がある……となれば、進むしかない」

 タブレットで本部に連絡を取ってみたものの、返答がない。町に来てから、ずっとだ。おそらく現在このダンジョンは立ち入り禁止で、本部の人間も退避してしまったのだろう。残されたわずかばかりの冒険者のために、わざわざ残るという選択肢は確かに賢明ではない。

 何が起こるかわからない危険な穴。ここは今、そういう場所だ。一瞬かつてより安全になっていることを知るのは、俺たちだけだ。

「この先って……あの部屋だよな」

「ああ。いつぶりかね、この町を出るのは」

「滞在したって感覚でもないけどな」

「確かに」

 扉を、開ける。

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