40話

 奥にも部屋があった。それほど広くはない。薄暗いが、光はあった。四角い光。

 背中が見えた。広い背中。男が腰かけていた。

 さらに、モニターが見える。いくつもの盤面が映し出されていた。一つだけ、駒の動いている盤があった。

「あっあっ」

 コキノレミスが、今までで一番大きな声を上げた。そして、ナイフを手に駆け出した。あっという間に座っている男のもとにたどり着く……かに思われたのだが。

「そこまでです」

 光のように、矢が走った。

「うあっ」

 矢は、コキノレミスの右の腿を射抜いた。加速していた少年は、もんどりうって倒れる。

「レミス!」

「てめえ!」

 倒れたコキノレミスに駆け寄るステノ。俺は、エレガティスに向かう。しかし、たどり着くことはなく、視界がぐるんと回った。

「なっ」

「ごめんね」

 地面に組み伏せられる。山小屋の親父が、俺を抑え込んでいる。

「あんたまでグルだったのか」

 すべては、計画の範囲内だったということか。それにしても、「この瞬間」のために二人をここに導いたというのは、なんという用意周到さだろうか。

「おとうさんっ、おとうさんをころさなきゃっ」

 コキノレミスの、震える声が響く。会わなければいけない理由が、そういうものだったとは。いろいろなことが起こりすぎて、頭の中の処理が追い付かない。

「くそっ」

 すでに弓使いは、キクノスへと照準を合わせていた。これでわかった。キクノスは敵ではない。

 用意周到さにうならされる。全ては計画通りだったということか

 ……ん?

「おい、どうなってるんだ!」

 視線が、集中する。コキノレミスの横で、鬼の形相になっている女。

 彼女は今、自由である。

「ステノ、暴れろ!」

「は?」

「お前は、自由だ!」

「……はあ?」

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