36話
「よし、解けたぞ」
重たい石の扉が、横にスライドしていく。ようやく、このだだっ広い部屋ともお別れだ。
俺、コキノレミス、ステノ。さらにキクノス、山小屋の親父、そして弓使い。動けるようになった六人は、とにかく出口を探した。そして見つけたのがこの、一見他の石棺と見分けのつかない扉である。
キクノスの魔法により表面の偽装がはがされ、問題が出現した。かなり厄介な必至問題だったが、何とか答えを導き出すことができた。
扉が、ゆっくりとスライドする。新たな部屋の出現だ。
「おい、なんだこれは」
進もうとしていたステノが、半歩下がった。俺は、動けずにいる。
「……牢屋か?」
キクノスも一目ではわからないようだ。そして、俺も感想は同じである。
細長い廊下が奥まで続いている。そして左右には、鉄格子の扉がいくつもある。
「地底人かもしれないですね」
最初に進んだのは、弓使いだった。彼は、何にしても行動が早い。おかげでパーティーで唯一生き残ったともいえる。
体は細く、顔も細い。歳は俺よりは下だろうか。名前はエレガティスというらしい。
「地底人は実在するかわからんが……とにかくモンスターには気を付けよう」
俺も、弓使いに続く。ここにいても何も始まらないのだ。
奥まで廊下と扉は続いている。
「ぱんっ」
コキノレミスが指さす先には、板に書かれた確かにパンのような絵があった。扉の横に掛けられている。
「こっちは鍛冶屋かのう」
キクノスの前には、槌のマークが。他にもところどころ、店を表すような印があった。
「町……なのか?」
自分の言葉に、確信が持てない。人の気配は全くない。どの扉も鍵がかかっていて、中には入れなかった。
「普通、一つぐらい壊れてそうなもんだが」
そう言いながら、力づくで扉を開けようとするステノ。びくともしなかった。
確かに変なのだ。かつて町だったかもしれないが、今は誰もいない。放棄された家々だとしたら、鍵がかかっていなかったり、さび付いて壊れたものがあってもよさそうなものだ。しかし、一つとしてそういうものが見つからない。
「ダンジョンの一部、ということじゃろうな」
「だとしたら、ギミックがあってもよさそうなものだけど」
どこを探しても、問題や仕掛けは見つからない。冒険者を想定しているようには見えない。
「あっ」
「どうした、ステノ」
「これ……」
ステノは、目の前にかかっている看板のほこりを払った。そこから、五角形のマークが浮かび上がってくる。
「駒か!」
「なんじゃと」
そこには、「王将」の文字が刻まれていた。間違いない、将棋の駒だ。
「こまのおみせ?」
「いやあ、それはどうだろう。道場とかだったかもしれない」
このダンジョンにはどこまでも将棋がつきまとう。もう、将棋に関することなら何があったって驚きはしない。
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