24話

「魔族……」

「レミスが魔族!?」

「ま、まぞ……?」

 三人とも驚かざるを得なかったが、とりあえず目の前に実物がいる以上、魔族が存在していることは疑いようがなかった。

 ネクロマンサーなどという生易しいものではなかったのだ。魔族。

 かつてこの土地にいたとされる、ヒト型の生き物。魔力が強く人間と敵対していたが、知恵によって人間が討ち勝った、と言われている。ダンジョンの中には魔族の遺したものもあるとされ、一種のロマンとして「魔族探し」が語られることもあった。

 俺はまったく会いたくなかったけれど。

「正確には魔族の血を引くものですね。今は一人でも多く、そういう者が必要なんです」

「二人目、と言ったね。お前は、すでに一人見付けているのか」

「説明する義務はないですけど、いいでしょう。見つけていますよ。この子と違って、大人を」

「なるほど。コキノレミス、お前の父親かもしれないぞ」

「えっえっ」

「ちょっと待て、レミスが本当に魔族と思っているのか」

「魔族が何なのかわからないから、どうともいえない。ただ、コキノレミスには人間離れした点があるのも確かだ」

 最初から変ではあったのだ。無茶苦茶足の速い少年。そして、一人でダンジョンを進んでいく父親。

 そうだとしても、すぐに人間でないことが納得できるわけではない。

「わかってくれましたか」

「いいや、完全には。そもそも俺たちは、魔族が何なのか、それ自体詳しくない」

「……嘆かわしいことです」

 魔族の男が、こちらに近寄ってくる。そして、右手を大きく上げた。

「出てきてください」

 ガタガタと音を立てて、テントが崩れた。

「えっえっ」

「なんだ、うわっ」

 骨がふにゃふにゃになっていた。これ、高かったのに。こうなってしまうと特殊効果も発揮されない。

「仕方ない。出よう」

 三人で、テントをはい出る。見回すと、思っていたよりもさらに広い空間だった。俺たちの背後にも、びっしりと魔法陣が描かれている。

「都詰めだな……」

「暢気な感想だな! おい、そこの魔族。ここまでするからには目的があるんだろう。いったい何のつもりだ」

 ステノは剣の鍔に手をかけている。彼女は今、盤術を使えない。俺はかろうじて棋力ポイントが回復しているが、そんなに長くは戦えないだろう。そもそも魔族相手に何が通用するのか。

「あっ、あのっ」

「どうした、コキノレミス」

「ぼく、ききたいっ、おとうさん、どうなったのっ?」

 魔族の口角が、キリっと上がった。

「安全なところでお預かりしていますよ。ああ、申し遅れましたね。私の名前はカルディヤ。魔族の王の血筋に連なる者です。そして、王の魂を、迎えに来た者です」

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