第58話 リリム、頑張ります!
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どーも!皆んなのアイドル、リリム・パトリッジです!!
セツナ様と別れて行動するのは忍びないけど、マリーヌちゃんからのご褒美を貰うため、ここはグッと我慢するしかないですね。
そう、かの伝説の透明マントをこの手に!!
そんなスーパーアイテムがあればセツナさまにバレる事なく常に側にいることが出来る。寝ている時も、お風呂の時も!!
……そうか!トイレだって一緒に入れるんじゃないでしょうか!?
「(リリム先輩、鼻血が出てますけど大丈夫ですか?)」
考えてたら愛と一緒に鼻血が溢れてきちゃいましたよ。止まらないですね。
「ラック、この勝負は負けるわけにはいかないわよ。セツナさまが相手であろうと勝ちを譲ってはダメだからね!」
「(もちろんです!自分もマリーヌに約束してますからね。セツナさまを騙すような事をしたのは心が痛みますが……。
それより鼻血、大丈夫なんですか?)」
「これは鼻血じゃなくて愛液よ!何も問題なんてない!!」
「(は、はい……。)」
セツナ様からこっそり離れて、地下に入ってすぐに分かれ道へとやってきたわけだけど、これからどうするのかは具体的に聞いていない。
そのまま進んでいれば案内が来るって言ってたけど、どこまで行けばいいんでしょう?
それにしてもこの地下広いですね。そして薄暗い。足元が見える程度に光石が置いてあり、薄っすらと地面を照らしている。
あ、暗がりでセツナ様に襲いかかりたいかも。戻ろうかしら……。
「お待ちしておりました。」
ふとそんなことを考えていると、目の前に白い執事服を着たお爺さんが現れた。
マリーヌちゃんの言っていた案内の人だろう。ピシッとした服に裕福な顎ヒゲを生やしている。
目尻は下がっており優しそうな雰囲気です。
「貴方が案内してくださるんですか?」
お年寄りにはきちんと敬語を使わないとですよね。私もそれくらいの教養はあるんです。
「左様でございます。お二人の事はマリーヌ様より聞き及んでおりますので、リリム様とラック様でよろしいですね?」
「そうです。」
「ワン。」
前々から思ってましたけど、ラックってやっぱ犬ですよね?進化して羽なんか生やしてますけど、中身はどう考えても犬です。
「私はヌイ様の下で執事をしておりますロイズと申します。お見知り置きを。
それではスゴロクのルールのご説明を致します。
この度は二人一組の三チームで行います。お二人は第一ペアですね。サイコロを交互に降ってゴールを目指します。」
普通のサイコロと違うのは二人一組ってことくらいですね。ルールの説明なんてする程の事でしょうか?
「そして、入ったマスにはお題があります。見事クリアすれば、次のターンです。失敗すれば一回休みになりますのでご注意ください。
あと、サイコロは此方の十二面体のものを使用します。」
サイコロを受け取ると、一から十の数字と二つの絵が描いてある目があった。
「これは?」
「天使と悪魔でございます。天使の目、悪魔の目は共にそれぞれの絵柄をストックします。悪魔のストックが増えるとペナルティがありますのでご注意下さい。
天使を獲得すれば、悪魔のストックを相殺できます。」
悪魔と天使、それからペナルティですか。
「ペナルティって何があるんです?」
「お題の難易度が上がるなど様々です。悪魔を増やさないよう頑張ってください。」
なるほど、悪魔が出ないように祈ってればいいんですね。逆に天使を獲得しておけば悪魔が出た時に相殺してくれるから、天使は出てもいいのね。
なるべく天使をストックしておけば安心ですね。
「なんとなくわかりました。場所はどこでするんです?」
「ここでございます。」
「ここ?」
ロイズさんが指をパチンと鳴らした。すると薄暗かった部屋がライトアップされる。とても広い空間が現れたが、そこには何もなかった。
「スゴロクは?」
その何もない空間に疑問を抱いていると、ロイズさんから一枚の板とペンを手渡された。
「リリム様が代表して、此方に参加者の名前をご記入ください。」
板には名前を書けそうな欄がある。空欄は隣り合って二列、縦に十行ほどもあったが、ここに名前を書くと何かあるのだろうか?
「ペアになる人を隣にご記入ください。」
「リリムと、ラック。次はセツナさまと、じゃなくてヌイとマリーヌちゃん。
あとはセツナさまと…………おじさん。」
「プリムラさまでございます。」
おぉ。おじさんで名前が伝わるのか。
そう言えばそんな名前でしたね。見た目の印象が強すぎて忘れてました。マリーヌちゃんとセツナさまが一緒になるのは癪なので絶対に却下です!
「プリムラ…‥っと。」
言われた通りに名前を書いて板をロイズさんへ手渡した。
「では、これより巨大人間スゴロク、ファンタジスタを起動致します。」
ロイズさんが手に持った板を床に置くと、眩い光が放たれた。
と、次の瞬間。目の前に巨大なスゴロクが出来上がっていた。
「すごいですね!!」
「(すごい!)」
とてつもなく広くて何もなかった空間が、一瞬にして色とりどりの景色とスゴロクの地面に変わった。
お花畑のような場所、火山のような背景。海に川に山に空。
アトラクションにでも来たかのような光景だ。
まずいです。なんか思ってたよりすんごく楽しそうですよ!!
「あと、此方の様子は他の皆様方にもご覧頂いております。
他の方々の様子も彼方のスクリーンからご覧になれますよ。音声もお互いに届きます。」
「あっ、セツナ様!」
言われた方の壁を見ると、デカデカとセツナ様が映っている。
『二人とも〜、準備オッケーかな〜?』
スクリーンから声が聞こえてきた。
「おぉ!ラック、ホントに声が聞こえたわよ。
準備できてますよー!!お〜い!セツナさま〜!!
私を見ていてください!わ・た・し、を見ていてくださいねぇー!!!」
あ、セツナ様ったら照れちゃって。そっぽを向いてしまわれた。
でもそれはそれでいいんです。だってこのローアングル、座ってるセツナ様の足の付け根が見えそうなんです!!
って!!今日もスカートじゃないじゃないですか!!
スカートの隙間からコスモを見させてくださいよぉ!!
『よし、じゃあスゴロク始め〜!』
ヌイが私のもどかしさを邪魔するように声を上げた。まぁ今は我慢です。
透明マントを手に入れたらさらなるセツナ様の神秘に近づけるんですからね!
「行きますよ〜!それ!!」
サイコロを投げるとコロコロと転がって、三の目が上を向いた。
「三かぁ、でも悪魔じゃないからいっか!ラック、足を引っ張らないでよ?」
「(善処します……。)」
さて、進もうか。
と思って歩き出そうとすると、突然光の玉に包まれた。
「おわわわ!?」
光の玉はラックと私を包んで浮き上がり、三マス先へと運んでくれた。
辿り着くと光の玉は消え失せて、私たちはマスの上に止まった。どうやら自動で運んでくれるみたいです。
便利!
そういえば、お題があるんですよね?何もないマスだと嬉しいんですけど。
『ゴブリンロードを一体倒せ、制限時間は五分。一分以内に撃破で天使獲得ボーナス。』
目の前にウインドウが現れて、カウントダウンが始まった。
『開始まで、十……九……八……。』
こんなお題なの!?ゴブリンロードって、そこそこ強いはずだけど……。
でも、なんとかなりそうな気がしますね。レベルも上がってるし!
『二……一。』
「ラック、ぶちかますわよ!」
周りのスゴロクが視界から消えて、円状のフィールドに変わった。
そさしてその真ん中にゴブリンロードが出現する。
よし!透明マントのために頑張ります!!
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