第56話 新手のパーティー詐欺

 さて、ハリボテなんてかましてくれた戦士ヌイのところまで来たわけだが、本当にパーティーなんてするのだろうか?

 そもそも場所が地中だし。

 モグラか!?


「さ、入って入って〜。」

 

 ヌイに案内されて怪しげな地下への階段を降りていく。中は薄暗く、入り口の扉を閉めると小さな魔光石が足元を薄ぼんやりと照らしている程度だった。

 

「本当にこんなトコでパーティーすんの?」

「するとは思いますけど、私も実際にココへ入るのは初めてですし、この子は直感で動くタイプなのでよく分かりません。」

 

 マリーヌがそう答えると、前方を歩いていたヌイが振り返った。


「安心してー。ちゃんとパーティーするから!この人数は想定してなかったけど、全部で六人で偶数だから大丈夫!」

 

 偶数って、何かパーティーと関係あるのだろうか?どうしてだろう、何故か嫌な予感しかしない。

 そもそも六人ってどういう事?

 私、マリーヌ、変態とおっさん、それからヌイ。もしかして、ラックも頭数に入ってるのかしら?それとも他に誰かいるの?

 

 にしても、何故に偶数?

 どうしよう、本当に嫌な予感しかしない。引き返した方がいいかしら……。

 

「さ、着いたよー。」

 

 そうこう悩んでいるうちに、何処かへたどり着いてしまったようだ。人数に縛りがあるなんて、絶対私の思い描いているパーティーじゃない。

 

「あら、素敵じゃないのぉ。」

  

 おっさんが一番に開口した。たどり着いたのは無駄に広々とした地下空間。部屋の一角にテーブルと食事が用意されている。

 しかし、その場所はこの広い空間の一割も締めていない。そこを除くとただただ何も無い空間だ。

 

 これ、素敵か?

 このおっさんの感覚がわからん。とりあえず期待できなかったが食事はしっかりと準備されている様で安心した。

 なんなら食べたらすぐにでも帰りたい。

 だって絶対わけわかんない事起こりそうだもん。フラグ立っちゃってるもん。

 

「あっちのテーブルだよ!」

 

 ヌイが案内してテーブルまで移動する。私は何か起こるんじゃないかと警戒しながら進んだが、取り越し苦労で何も起こらない……。

 私の考えすぎだったんだろうか?


「うわー、期待を裏切って美味しそうなご飯!」

 

 マリーヌが目を開いてテーブルを見た。期待を裏切ってって、私を誘った本人がそんな事言っちゃダメでしょ。

 あれか、一人だと心細いから道連れに連れてこられたのか?で、何でリリムとラックは一言も喋らない訳?

 

 少し不審に思って振り返る。


「あれ、リリムとラックは?」

 

 リリムとラックがいない。地下に入る時には一緒にいたと思うんだけど。何で?

 

「あ、二人は先にパーティ会場へ行って貰ったよー!多分爺やが案内してると思う。」

 

 テーブルに備え付けられた椅子に腰掛けて言った。パーティ会場とはどう言う事だ?ここではないのか?

 

「それ、どう言うこと?

 パーティってここでするんじゃないの?」

 

 やはり嫌な予感しかしない。


「違うよー。ここはご飯食べる小休憩スペースで、会場は別。

 よーし、それじゃあパーティを開始しましょー!

 ポチッとな!」

 

 ヌイが発声と同時に何やらボタンを押した。ブン……と言う音が聞こえたかと思うと、後ろの広々とした空間から光が漏れる。

 

 それに気づいて振り返ると、そこにリリムとラックがいた。


「え?二人ともいるじゃない!

 どう言うこと?」

 

「へっへーん!それは立体映像です!

 カメラみたいに映したモノを、そこに映し出してるだけなんだなー!

 これからグループで順番にやるよ!!」


「なにを!?」


「スゴロクゥゥゥゥゥ!!

 イエェェェェェェイ!!!!」

 

 ヌイが拳を突き上げて叫ぶ。


「イエェェェェーーーーーイ!」

 

 それに合わせてオッさんが叫ぶ。なんで受け入れちゃってんだコイツ……。


「イエェェェェェェイ!!」

マリーヌあんたまで乗せられるな!!!」


「す、すいません……。」

 

 話についていけないんですけど!!しかも私以外全員顔馴染みって……。若干の置いてけぼりを食らった感が半端ないわ!!

 

 でもスゴロクって、最近そんな話を聞いたわね……。

 

「あっ!!

 マリーヌ、あんたスゴロクの事知ってたわね!?」

 

「な、なんの事でしょう?わ、わ、わ。私がそんなスゴロクやるなんて知ってたわけ無いじゃないですか!」

 

「粛正のレベル上げとこうかしら。」


「すみません!知ってました!

 ごめんなさい!私が悪かったです!!

 手紙もう一枚入ってました!!」

 

 やっぱりそう言うことか、いきなりカジノやらスゴロクやらって単語が出てきたのはこれがあったからなのね。

 

「お姉さん、怖い顔しないで楽しくいこーよ!」

 

 事の発端である少女がうさ耳を震わせてニコニコと笑っている。

 

「新手のパーティー詐欺じゃないの!

 とりあえず、私は食べるわ!」


 椅子に座ってご飯を頂くことにした。やはり予想通りまともなパーティーではないようだが、食べなきゃそれこそ無駄足だ。

 こんがり焼かれた鳥肉を片手に、私のパーティーはムシャムシャと音を立てて始まったのだった。

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