第53話 ヤベーやつだ
スクアローズの街は冒険者が多い、と言うのもここは東西南北に分かれて異なる強さの魔物が生息している。
冒険初心者〜中級者向けには東に広がる平原とダンジョン。
西と南に向かって中級〜上級の大きな密林が広がる。
さらに北には見上げるほどに大きな山、上級者しか臨むことのできない強大な魔物が住み着いている。
この山は魔界へ続いていると、実しやかに囁かれているが、実際に魔界へ行ったなんて話は聞いたことがない。
と、マリーヌから聞いた。
リリムもギルドで働いていた経緯から、スクアローズの街のことはよく知っていた。
自らを高めようとする冒険者や、研究者なんかがこの街を拠点としているそうだ。
確かに、広がる街並みはかなりの大きさだった。マリーヌにフラップの魔法をかけて貰って空から眺めたが、直結10キロ以上はあるんじゃなかろうか?
「本当にでっかい街なのね〜。ギルドがこんなに賑わってる所を初めてみたわ。」
私の村では大した冒険者もなくガランと静まり返っていたし、アクアパールでも数人見かける程度だった。
流石は冒険者の集う街なだけある。
このロビーだけで100人はくだらない程の人数がいるんじゃなかろうか?
私の用事にもぴったりな場所だ。
用事とは人をテイムすること。魔人王になって、従者の獲得した経験値を得られる能力を最大限に活かすのだ。
「さてと、二人とも。私がやる事に、口出ししないわよね?」
「勿論です、おお姉さま。」
「ブツなら平手で!」
一人は聞かなくても良かったわね。
じゃ、さっさとやっちゃいましょう。
《人王覇気》
スキルを使うと、バタバタと周りの冒険者が倒れ始める。屈んで身を震わせる者、尻餅をつく者もいるが、かなりの人数に聞いたようだ。
それでも、やっぱりスキルが効かないものも数人いる。
彼らが一番の狙い目だ。
「リリム、立ってる人に敏感肌使って。」
「畏まリリム!えい!」
リリムが魔法を使うと、男も女も関係なくソワソワし始めた。
準備OK。
《乱れ調教!》
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
「「きゃぁぁぁぁあああ!!!」」
「ああぁぁぁぁぁん❤︎!!!!」
『122名の調教に成功しました。』
途中変な声が聞こえたが、とりあえず無視だ。
『1名の調教に失敗しました。』
む、一人失敗した。成功した時点で捕獲は解けるので、残りの一人に対象を絞って再び調教をする。
「あぁぁぁぁん❤︎もっとぉぉぉぉおおおお!!!」
お前かよ。
残った一人に目をやると、青髭を生やしたおっさんだった。
『調教に失敗しました。』
またか!?
どんだけしぶといんだ?
「リリム、重ねがけ!」
「羨ましいぃ!!!」
「黙ってやってよね!!」
「は〜い、敏感肌!」
「あ、え!?なになに!?ぬ、ぬ、ぬ、ぬのずれぇぇぇえ!!
私ったらどうしちゃったのぉぉぉおお!?」
あ、こいつヤベーやつだわ。
最初の反応も怪しかったし、こりゃやべーやつだ。
でも、ここまで耐えるという事はマリーヌ並みの大物の可能性もある。せっかくだからやっぱり捕まえとこう。
《調教》
「またキタァァぁぁぁあああ!!!?」
『調教に成功しました。』
よし、変なオヤジゲット。
「は〜い。ちゅーもーく!一同、命令するまで何も無かったように解散!」
「「「畏まりました。セツナ様!」」」
やっばい、これやっぱ楽しいわ。
優越感に浸れる上に、楽までできる。こんな能力なかなかないっしょ!!
「嫌だわ解散なんて、大人の女をからかったらダメよぉ〜?」
さっきの青髭の親父がやってきた。
何故女をの様な喋り方なんだ?
「ぷ、プリムラさんじゃないですか!?」
「あらん?マリーヌちゃんじゃないの?おひさ〜!
元気してたかしらん?」
「え?プリムラって、大賢者の?」
マリーヌが苦手と言っていたあのプリムラ?魔王討伐パーティの?
「はい、その通りです・・・。」
「そうよん。私が
変わり者っていうか、変態じゃん!
リリムよりヤバいやつ引き当てちゃったんじゃないの!?
「ぷ、プリムラさんがなぜスクアローズに?」
「何って、依頼の品を引き取りに来たのよぉ〜。そしたら、そこのお嬢ちゃんに魅せられちゃったわん。」
私を指差してウインクを飛ばしてくる。
何かが背筋を走って、避けようのない攻撃を躱すように身体が動いてしまった。
「と、兎に角ここでの用事は終わり!マリーヌ、行くわよ!」
「は、はい!それじゃあプリムラさん、またお会いしましょう!!」
「え?もう言っちゃうのん!?」
マリーヌのテレポートでラックの下へと移動して、すぐにスクアローズを離れた。
あいつはヤベーやつだ。
関わってはいけない気がする。
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