第51話 必殺セツナパンチ!
「あんた、いくら寂しいからってそれはないでしょ。」
まさか私の人形を作ってくるとは思わなかった。マリーヌの入れ知恵だろうか?
まぁ変に襲われる危険がなくなればそれはそれでありかもしれない。
「私の旅のお供なんです!」
やってることだけを見てると子供みたいで微笑ましいわね。完全に、昔のリリムのイメージは崩れ去ったわ。
今や頭の壊れた悲しい娘だもの。リリムの両親もやりきれないわよね。
「まあいいわ。もう少ししたら出発するけど、どうせリリムもくるんでしょ?」
「勿論です!」
その後も再びクエストの続きを再開した私たちは、マリーヌの活躍で呆気なくクエストを完了した。
「久しぶりに動いたので、体があったまってきました。もう少し狩に行きませんか?」
マリーヌが何故か張り切って、時間も早かったので別の場所までやってきた。見る限り怪しげな場所だ。
と言うか墓地だ。
「すごい場所ね。」
見渡す限りのお墓、そして何故か昼間なのに薄暗い。
「ここは魔界の入り口、ミストグレイブです。死霊系の魔物が多数存在してるデンジャラスゾーンなんですよ!」
死霊系って、相当強い魔物じゃない?魔王に仕えていた側近なんかも、死霊系の魔物が多いと聞いたことがある。
「それって、このパーティで勝てるの?」
「私である程度は相手にできますけど、リリムさんには聖魔導師系の魔法を使ってもらいたいですね。
死霊を弱体化させたりと、色々有効なものが多いですし。」
そう言ってマリーヌはリリムを見た。今までまともな魔法を覚えてこなかったリリムだが、危険ともなれば必要な魔法を覚えざるを得ないかもしれない。
それに、私の言いつけを守っていればJPもかなり多いはずだ。
「それなら任せてください!セツナ人形を手にした私は無敵です!」
全く説得力がなく意味がわからないが、何やらやる気は持ってくれているようだ。
「じゃあ、リリムは聖魔導師の魔法を覚えて頂戴。あと攻撃魔法でも強そうなのがあれば、そろそろJPを使ってくれて構わないわ。」
「畏まリリム!」
意味がわかりまセツナ・・・。
やだ、ちょっと面白い。
私は引き続きする事が少なそうね。死霊系なんて、どうやって戦えばいいのかわからない。
魔法の仕えない私が有効な攻撃手段なんてあるのかしら?
ボコッ。ボコボコッ。
ごそごそと準備を始めた私たちの向かいにあった地面が盛り上がり、グールの群れが現れた。
「気持ち悪っ!!」
目玉が落ちそうなやつに、肉が腐って異臭を放っているやつ。
とにかく見ていたくないような気持ち悪さだ。
「さぁ!じゃんじゃんやっつけちゃいますよ!」
マリーヌは湧き出すグールに火炎魔法をぶちかましていき、あたりは一瞬で火達磨になったグールで埋め尽くされる。グールはそのまま焼け落ちて、どんどん灰に変わっていく。
「さすがマリーヌちゃんです!私も続きますよぉ〜!新しく覚えた必殺魔法!!
ホーリーフィールド!!」
リリムが魔法を発動すると、半径50mくらいに渡って光のドームが出現した。中に入ったグールは次々と灰に変わっていく。
「リリムがまともな魔法を使ってる!!?」
「そんなに驚かなくても良いじゃないですか!私だってやるときはやるんですよ!!」
そんなこと、初めてな気がするのは気のせいじゃないはずだ。
「さらに習得したのは、これだけじゃないんです!私がセツナ人形を手に入れた理由は、これにあると言っても過言じゃありません!!」
リリムが凄く興奮している。一体何を習得したと言うんだろうか?
「マリオネット!!」
リリムは安物の杖を掲げて叫んだが、マリオネット?まさか、人形を操って戦うって言うの!?
「いけえ!セツナ人形!!」
お、ホントに立って歩き始めた。
でもちっちゃいわよね?
武器も持ってないわよね?
素材ってワタよね?
グールに向かっていくけど、ホントに戦えるの?
セツナ人形はトコトコと駆けていき、短い腕でグールに殴りかかった。
ぽふん。
そんな効果音が聞こえた気がする。
「可愛いすぎますぅぅ!!!」
「バカなのか!?」
呆れてそれ以上の言葉が浮かばなかったが、次に起こった事に我が目を疑った。
突然セツナ人形の殴ったグールが花火の様に弾け飛んだのだ。
「はぁ!?」
何が起こったっていうの?
「ふっふっふっ。セツナ人形のパンチはダイヤモンドすら砕く必殺の拳です。
ただのふわふわで可愛らしい人形とは訳が違います。
その名も、《セツナパンチ》!!」
「そのまんまやん・・・。」
もはや突っ込む気力も無くなってくる。しかし凄いわね。高い不死性を持つグールをいとも簡単に殴り倒していくなんて。
若干リリムを見直したわ。
頑張れ、セツナ人形。
グールが粗方片付くと、続いてバンパイヤが現れた。
しかし、マリーヌとセツナ人形の活躍により戦況は変わらずこちらが優位に進めている。
「あぁ、全ての動きが愛おしいです❤︎」
リリムは人形を見ながらブツブツと独り言を言っている。その言葉、一つ一つが恐ろしいですけどね。
またも微妙な感覚を覚えさせるリリムの魔法に、褒めて良いのかいけないのかを葛藤しながら、私たちは夜まで戦い続けた。
ちなみにラックも少しは戦ってくれたけど、敵との相性が悪くてあまり使い物にはならなかった。
だから、途中から私の話し相手になってもらい、手持ち無沙汰なオートバトルをやり過ごしたのだった。
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