第49話 結局必要な物
「お姉さまはカジノに行った事がありますか?」
マリーヌが唐突に聞いて来きた。カジノなんて、私が住んでた様など田舎とは全くの無縁のものだ。行ったことなどあるわけがない。
そもそもある程度裕福な人たちための娯楽なんだから、貴族の沢山住んでいるような都会にしがない筈だしね。
「カジノなんて無縁の生活だったわよ。貴方は行った事があるの?」
マリーヌは割とお金を持っているようだし、あるのかもしれないわね。
「実は私も行った事はないんです。昨年に入ろうとした時は、年齢制限に引っかかりまして・・・。」
年齢制限なんてあるんだ。まぁ場所が場所だから、子供の入場なんてさせないわよね。
「というか、マリーヌって幾つだっけ?」
前に聞いたような、聞いてないような・・・。
「17です。私の行ったカジノは16歳以下は入れなかったのですが、今年からは入れますよ!」
背も高くないから幼く見えるけど17歳か、私の3つ下なわけね。でも、カジノとレベル上げって何か関係あるのかしら?
双六って言ってた筈だけど。
「そっか。で、それはさっき言ってた双六とどんな関係があるの?」
カジノなら経験値じゃなくてお金が入りそうなものだけど?
「はい、ある街のカジノには冒険者専用施設が存在します。そこは誰が運営しているのかは全くわかりませんが、お金の代わりに経験値を得ることが出来るんだそうです。」
冒険者専用ときたか、そんなカジノがあるなんて知らなかったわ。それに、経験値ってどうやって稼ぐの?
お金で経験値が買えるんじゃあ、高レベルの人が大勢いてもおかしくないわよね?
「それって本当に経験値が得られるの?胡散臭いんだけど。」
「そうですね。真相は私もよくわからないんですが、勇者ハイゼルはそこでレベルを上げたと言っていました。
実際、彼はレベル99の勇者となって魔王を倒しましたからね。
ただ、来客自体は少ないらしいです。なんでも、下手をすれば死ぬ事もあるらしいので。」
下手をすれば死ぬ!?お金取られるだけじゃないの?ギャンブルや双六ってのはすごく興味があるけど、ちょっと行きたくなくなったわ。
「死ぬのは勘弁ね。」
楽をしたいだけであって、そんな危ないかけをしたいわけじゃない。
「あ、でも私が一緒に参加すれば死ぬ事はないんじゃないでしょうか?ほら、私はこれでも魔王を討伐した一員ですし。」
確かにそうだけど。何、行きたいの?
「もしかして、マリーヌが行ってみたいだけ?」
「あはははは・・・。」
この子に命を預けて大丈夫だろうか?リリムに預けるよりは万倍ましだろうけど、ちょっと心配。
でも、考えてみればそうよね。マリーヌが付いていればちょっとやそっとの事では死ぬような事は無い気がする。それに、忌々し勇者が生きて出てきたという事実もある。
やるかどうかはどんな場所なのか確認してからでも遅くはないし、なんならここで引いてしまうと勇者に負けた様で気分が悪くなりそうだ。
と言うか、勇者の力はギャンブルで得た力だったなんて・・・それってどうなのよ?
「まぁいいわ。なら一度行ってみる?」
「はい!」
とは言うものの、元手となる資金の確保は重要だ。まずはクエストを受注して少しお金を稼いでおきたいわね。
どれほどの予算が必要なのかがわからないが、なるべく手元に残るようにしておかないと生活ができなくなる。何においても、結局必要な物はお金なのよね。
「行く前に、やっておきたい事があるんだけど。」
私はマリーヌとラックを連れてクエストの受注をする為ギルドへと出向いた。リリムは何かやりたい事があるらしいので、珍しく別行動だ。
煩いのが一人減って、今までで最高の一日になりそうね。ラックとマリーヌだけならスムーズに事が運びそうな気がする。
「昨日より依頼書が増えてるわね、しかも割と美味しい金額のが。」
依頼書を漁っていると、昨日に比べて割と高報酬の依頼書が増えている。
一件数十万ルクもの報酬が付けられている依頼が散見された。
「昨日大量に依頼が届きましたので、依頼書の審査・整理が出来たものから追加しています。数が多すぎて、全部の依頼書が出揃うのは今日いっぱいかかりそうですよ。」
隣のカウンターから受付嬢が教えてくれた。朝早い時間にやって来たので現在ギルド内はガラガラだ。
受付嬢も手持ち無沙汰そうにカウンターの前に座っている。
「依頼って、そんなに纏めて来たりするもんなんですか?」
「魔物が活性化する時期に纏めて討伐依頼が来たりする事はありますが、今回は全て同じ依頼者さんからです。」
言われて依頼書を確認する。紙には右下に依頼者名が書かれている。匿名となっているものも中にはあったりするが、この高額報酬の依頼書は全て同じ名前が記載されている。
「プリムラ・スレイニーベル?」
聞いた事も無い名前だけど、何処かの貴族だろうか?見る限りの依頼書は魔物の素材調達の様だけど、何に使うのかしら?
グレイトデビルの目玉、ドレイクの鱗、闘虫の羽。他も使用用途のわからない物ばかりだ。
「あっ!?」
突然、マリーヌが驚きを声にした。先ほどから依頼書を丁寧に読んで、受注クエストを選定している。一体どうしたと言うのだろうか?
「このプリムラさん、私の知り合いです。勇者パーティの一人でリリムさんと同じ、大賢者ですよ。」
「なんですって!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます