第48話 私は楽がしたい

 リリムとマリーヌが騒がしかったので、意思伝達で一方的に脅しをかけた。


「(黙らんと粛正すっぞ!!)」


 それから二人は素直に言う事を聞いて、ピタリと静かになった。ラックには、どちらかが近づいてきたら教えてくれと頼んでおいた。

「(任せてください!)」と頼もしい返事を貰い、私は安心して眠りにつく事ができたのだった。

 

 朝、窓から入った陽の光に起こされたが、ゆっくりとした目覚めに頭もスッキリしている。

 既に起きていたラックに昨日買った肉の余りを食べさせて、その間に顔を洗いに行く。洗面台で鏡を見ながらシミやおかしな日焼けがないかをチェック。


 異常なし!さて、朝ごはんをと思ったけど、昨日の夜に食べ過ぎてあんまりお腹が減ってないわね。

 朝は食べなくてもいいかも。お腹が空いたらお菓子でも食べて昼まで持たそう。

 

 リリムとマリーヌは起きたかしら?なにせ昨晩は二人でうるさく騒いでいた、リリムを誰かと一緒な部屋にするのはやめた方が良さそうよね。

 

「二人とも!そろそろ起きなさいよ!!」

「「はいっ!!」」

 

 私が声を張り上げると、二人の驚いた様な叫びが同時に聞こえてきた。大方、昨晩私に脅されたんで寝ぼけながらも飛び起きたってところかしら?

 

 まぁ、言うこと聞かないよりはましね。二人が起きてきたら今日やる事を決めないとね。私としては、早くレベをあげたいんだけど。

 実際戦うのって面倒くさいのよね。魔人王のスキルをフル活用してサクサクレベルを上げられないかしら?

 

 従者が獲得した経験値をそのまま貰えるんなら、冒険者を大勢テイムすればかなり捗りそうよね?昨日テイムした中にもいないかしら?

 

 そう思って従者一覧を確認してみると。大抵の職業欄は村人だったが、戦士や魔導師と言った職業持ちも数名いた。

 しかし全員レベル30前後で、大した期待は出来そうにない。

 

 さて、どうしたものかしらね。とりあえず、マリーヌが割と色々と知ってるから、後で相談してみよう。

 ラックみたいに魔物を従者にして戦わせると言うのも一つの手だけど、結局そいつと戦わなくちゃいけないのよね。

 

 目標は勇者を陥れる事ができるだけの実力。リリムの魔法を使わせてでも、必ず達成してみせるわよ。

 

「おはようございます。セツナさま。」

「お姉さま、おはようございます。」

 

 そうこう考えていると、二人して寝間着姿で階段を降りてきた。二人ともやけに眠たそうに目をこすっている。

 リリムに至ってはクマができているほどだ。


「あんたら、もしかして寝てないの?」

 

 静かになったからてっきり眠ったと思っていたのに、そうでもなかったのか?

 

「わ、私はレイ兄ちゃんの悪夢にうなされて・・・全然寝つけませんでした。」

 

「私はリリムさんの魔法の所為で、身体中が敏感になって寝れませんでした・・・。

 声は殺してたんですけど、魔法が解けたと思ったら、リリムさんがかけ直すんですよ・・・。今でさえ魔法が切れましたけど、身体中を触られている様な変な感覚が残ってます・・・。」

「だって、一人で起きてると怖いんですもん!」

 

 

「アホかお前は。」

 

 リリムの寝れなかった理由はさて置き、有能なマリーヌを陥れるような真似をしないで欲しい。


「今夜から、リリムは一人で寝てね。」

 

「そんなぁ!!それは酷いですよセツナ様!!」

 

 あの魔法を忘れさせる事は出来ないのだろうか?いや、使い所さえ間違えなければ使える魔法だから、意図的に使えなく出来れば一番いいんだけど。

 まぁ、そんな都合のいい事なんて出来ないわよね。

 

 複雑だ・・・。この際人柱となるべく人をテイムできないだろうか。

 

「あ、そうだ、リリムさん・・・。」

 

 マリーヌは何やらリリムに耳打ちし始めた。何を話しているのかしら?

 

「勿論あるある・・・・・え!?

 それなら寝れるかも!・・・わかった。」

 

 リリムがボソボソと声を出しながら、何か納得した様だ。

  

「何をコソコソと話をしてるのよ。」

 

 それも物凄くわかりやすいし。


「リリムさんに、一人で寝れる様アドバイスをしたんです。今夜からは、お一人で寝てくれるはずですよ。ね?」

 

「私、やれる気がします。」

 

 よく分からないけど、一人で寝てくれるのなら別にいいか。マリーヌに任せよう。

 

「そう言えば、マリーヌに相談があるんだけど。」

「なんでしょう?」

 

 先ほど考えていたレベル上げについて、マリーヌに相談してみた。先日連れて行ってもらったエレメンタルパレスも戦闘ありきなら物凄く効率は良かった。

 が、私はもっと楽をしたい。マリーヌには知恵を絞って欲しいと思っている。

 

「そうですねぇ、エレメンタルパレスでもう少しレベルを上げる方がいいと思いますけど、65位からあまり経験値も入らなくなってきます。

 もっと強い敵を倒すか・・・・。

 最悪はギャンブルなんてのもありますね。」

 

 レベル上げにギャンブル!?どんな方法なのか気になるわ。


「ギャンブルって、どんな?」

 

「まぁ、双六ですね。割と経験値も入ったりしますけど、下手するとお金が一瞬で消えて無くなります。」

 

 お金と引き換えに経験値を得られる?もしかして、サブ職である遊び人の出番なんじゃない?

 ギャンブル系のスキルなんて覚えてないけど、もし覚えられたら私の独壇場よ?

 

「ちょっとその話、くわしく!」

 

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