第47話 相当効いてる様だ
とりあえず、リリムの事は一旦放っておいて何処かへ泊まろう。が、マリーヌが着いてくるとなると最高級の宿なんかには泊まれない。お金を持っているとはいえ、二人分となるとかなりの額になりそうだし。
仕方ないけど節約するか。あまりいい暮らしに慣れるとすぐにでもお金が底をつきそうだしね。
「今日もマリーヌの家で寝ましょう。温泉は諦めてね。」
「わ、わかりました。でも、明日は一緒に温泉に・・・ダメですか?」
マリーヌは落ち込んだ様に下を向き、とぼとぼと家の方へ向かって歩いていく?
「入るだけなら良いわよ。変なことしないでよね?」
「何にもしませんよ!!」
なら安心してもいいか、この前改めて温泉に行く事は約束してたしね。
私の害にならないなら、そこまで縛り付けるつもりは無い。リリムの如くしつこい様なら、そうも言っていられないけど。
そう言えば、マリーヌの家でラックを留守番させてたわね。一番役に立って優秀なのに、手がかからなすぎて逆に忘れちゃうわ。
あの子には、何かご褒美をあげないとね。さっきの店で肉でも買って帰ろうか?
思い立ってマリーヌを引き止め、肉を買いに先ほどの店へと戻った。
「いらっしゃいませセツナ様!戻って来られるとは、何か忘れ物でも?」
先ほどテイムしたウエイターが入店と同時に私を見つけて駆け寄ってきた。従順な反応で安心する。
やっぱり従者はこうでなくちゃね。
「肉を持って帰りたいの。魔物に食べさせるから生でもいいわ。1万ルクで買えるだけ頂戴。」
かしこまりました。と言葉を残してウエイターは奥の厨房へと駆けて行った。
「セツナ様、もしかして、私にも人間の後輩ができました?」
あれ?マリーヌって、テイムされてる自覚あるの?
あんまりリリムとはそう言うそぶりを見せなかったけど、ちゃんと従者としての自覚がある様な発言だ。
まぁ言うこと聞いてくれればどっちでもいいけど。
「そうね、67人もできたわよ。」
「そ、そんなに沢山!?先輩として、しっかり教育いたします!」
マリーヌがなんだか張り切っている。
「やめて、あんたやリリムと違ってちゃんと言う事聞いてるから。」
張り切っているところ悪いけど、要らぬお節介だ。害虫を増やさないで頂きたい。
「そ、そんなぁ。」
しょぼくれたってダメよ?事実なんだし。リリムなんて調子に乗りそうだから、教えてやる気にもならないくらいだわ。
「お待たせ致しました。ちょっとサービスしてありますよ。」
ウエイターは早々と戻ってきて、大きな袋を渡してくれた。
「ちょっとって、かなり入れたんじゃない?大丈夫?」
およそ1万ルク分とは思えないほど大きな袋だ。グラム千ルクでは足りなさそうなのに、1キロなんて量じゃない。倍はありそうだ。
「我々からの気持ちですよ。また、お店の方もご贔屓に!」
「それなら、有り難く頂いておくわ。また来るわね。」
ウエイターに見送られて、私たちは店を後にした。まさかこんなにも得するなんて。魔人王様様ね。
ここからマリーヌの家まで少し距離がある。歩いて帰ってもいいけどやっぱり少し面倒くさい。
マリーヌに頼んで家までテレポートで運んで貰った。
「ラック、待たせちゃってごめんね!」
「(問題ありません、セツナ様。)」
マリーヌの家に着くと、ラックが尻尾をブンブン振り回して出迎えてくれた。
長々と待たせていたのに、なんていい子なの?リリムにも見習わせたいわ。
「これ、お詫びとお昼に貢献してくれたお礼。生にくだけど、食べれるわよね?」
買ってきたばかりの新鮮な肉を取り出して、ラックに差し出す。骨がついてるから持ちやすいわ。
「(有難うございます!)」
ラックは私の手から骨つき肉を咥え取り、モシャモシャと食べ始めた。こんだけ尻尾を振って喜んでくれると、買ってきた甲斐があったってもんね。
見てるだけで癒されるわ。
「さて、まだあるけど、とりあえずそれを食べたら中に入りましょう。」
「(承知しました。そういえば、リリム先輩は既に帰っておられますよ。)」
げ、マジか。アイツ家の鍵とかどうしたんだよ。
「あ、合鍵を渡したんでした。」
マリーヌはそう言って、目線だけを私に送った。私もため息を吐いたが、どうなってるのか確認したい気持ちもあったのでとりあえず中に入る事にした。
でも、ラックが食べ終わってからね。護衛にもなるし。・・・なるのか?
「それじゃあ入って寝ますか。」
ラックが食べ終えたのを確認して、家の中へ入る。リリムが帰っているにもかかわらず、家の照明は全て消えていた。
マリーヌに灯を付けてもらいながらリビングへと向かったら、ソファーの上でリリムがシクシクと泣いていた。
「せ、セツナ様・・・
あんまりですよ・・・・・・。
あんな仕打ちはあんまりです。」
どうやら粛正が相当効いている様だ。なんかもう目が死んでる。
「あんたが言う事を聞かないのが悪いでしょ。」
まるで子供を躾けているような感覚になったが、こんな子供は嫌だ。子供の性欲を制裁する親なんて聞いた事がないぞ?
「も、もうしませんから、、
あの人だけは出さないで下さい・・・吐き気が止まりません・・・・・・。」
思った以上にレイ兄ちゃんの幻が効いたのね。頭痛とか腹痛はいいのに、従兄弟は拒絶するってどんだけ嫌いなのよ。
まぁ、私にとっては手綱を握る手段になってくれて助かるけど。
「じゃあ、兎に角変なことしないでよ?やったら有無を言わさず粛正するからね?」
イかれたリリムを制御できれば、賢者として有用に使えるはずだ。リリムも上限解放のお陰で大賢者になっているみたいだし、少しは様子を見てやろう。
「わかりました。何もしないので、おんなじ部屋で寝てください・・・。あの人が怖くて一人じゃ寝れません。」
げぇ。鬱陶しいな。
「マリーヌと寝たら?」
「わ、私とですか!?」
何を驚いてるのよ、別にあんたを襲ったりはしないでしょ?兎に角、私は一人がいいの。一緒にいても許されるのはラックくらいよ。
「もぅ誰とでもいいです。マリーヌちゃん、今夜は一人にしないでください。」
シクシクと泣き続けながら、マリーヌを引っ張って二階の寝室へ上がっていった。
よし、今夜は安心して眠れそうだ。
「ちょ、リリムさん!?だ、ダメですよ!!」
「マリーヌちゃん、慰めてくださいよぉぉおおお。」
「ちょ、まって!?だ、だめ!!その魔法は使わないでぇぇええ・・・あぁぁぁぁぁぁあ!!?ふ、布団が擦れて・・・」
「うぇっへっへっへ。」
「あぁぁぁぁぁぁん❤︎」
「黙って寝ろやぁぁぁあああ!!!!」
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