第42話 新たな職業

「お腹すいたー・・・。」

 

 マリーヌに街まで連れて帰ってもらった私たちは、真っ直ぐにギルドへと向かった。ホーンホースを9体も連れての大所帯だ。早めにギルドに引き取ってもらい、報酬を受け取りたい。

 

「すみません。ホーンホースを捕まえてきたので、確認をお願いします。」

 

 私はホーンホースとリリム達をギルドの外へ待機させて、一人で受付へ行った。

 

「わかりました。ホーンホースはどちらですか?」

 

 ギルドの受付嬢を案内して、ギルドの外へと向かう。早く終わらせて、美味しいご飯を食べたい。

 そして温泉にゆっくり浸かって、布団でゴロゴロしたい。

 お金が入れば少し高い宿に泊まるのも良いわね。あと数匹捕まえれば充分手に余る程の金額になる。

 

「それで、ホーンホースはどこですか?」

  

 玄関先までやってきて、受付嬢はそこに何もいない事に不信感をいだく。

 大所帯で騒ぎになる事を避けて、あらかじめ姿を消させておいたのだ。

 

「そこに居ますよ。アンタたち、姿を見せなさい。」

 

 私の命令で、ホーンホースが次々に姿を現した。何度見ても、鼻から生えた角に違和感しかない。

 でも、刺さると痛そうよね。

 

「す、すごい。本当に生け捕りに出来たんですね。

 正直疑ってました!」

 

 あのね、そう言う事は思ってても口に出さない方がいいと思うわ。

 私も傷付いたわよ。

 

「何処に連れて行けばいいの?」

 

 でも、それより報酬よね。早くお金ちょうだい!!

 

「ギルドの裏手に馬小屋があります。とりあえず、そちらにお願い出来ますか?

 依頼人への連絡と引き渡しはギルドで行いますので。」

 

 私はホーンホースを引き連れて、ギルドの裏手側へとまわって、馬小屋へ移動した。

 そして報酬を受け取る為、再びギルドの受付へと戻った。すぐにギルドにて魔物の確認が完了して、報酬を受け取る事が出来た。

 

「270万ルクになります。まさか一度にこれほどのホーンホースを捕まえてくる方がおられるなんて思いませんでした。さすがはマリーヌ様率いるパーティーですね。」

 

 受付嬢から賛辞を受け取ったけど、マリーヌが引き連れている訳じゃないのよね。

 でも普通に考えたら、勇者のパーティーであるマリーヌがリーダーと思うわよね。

 そう言う事にしておきましょう。

 

 別にしゃしゃり出る必要なんてないし。

 

「えぇ、大魔導師さまですからね。」

 

「そう言えばお昼の強盗の件ですが、こちらも報酬が出ておりました。こちらの150万ルクも、受け取りをお願いします。

 やはり指名手配中の元貴族と断定できました。それと、その男が連れていた奴隷は、掛けられていた奴隷契約を解除して解放されております。」


 よぉぉ〜し!!!

 あまり当てにはしていなかったけど、ラックの行いが良い方向へ転んだようだ。むさかまさかの大金をゲットした。

 私は表向きは平静を保っているが、既にお金の計算が始まっている。

 

 クエストの270万に加えて150万!上限解放しても残りは120万も残る。

 またあの高原に出かける必要なんてないじょないの!

 

「あの、この報酬で職業レベルの上限を解放したいんですが。」

 

 まずは目的を今の果たす!


「マクシム薬ですね。では、こちらの150万ルクを指し引かせて頂きます。」

「あ、二人分お願いします。」

 

 私は今受け取った270万ルクから、150万ルクを取り出して渡した。

 今まで見たこともないような大金が、受付嬢に取られていく。こんな大金を使う日が来るなんて・・・。

 

「では合計300万ルクを確認致しました。しばらくお待ちください。」

 

 受付嬢は奥への部屋へと入っていき、しばらくして小瓶を二つ持って帰ってきた。

 

「こちらがマクシム薬になります。

 ご使用の際は、ひと瓶を一度にお飲みください。」

 

 小瓶を受け取って、仲間達の下へと戻る。ギルドの外には2人と1匹が腰を下ろして待っていた。

 

「なんと、ラックの働きのおかげで目標額を達成しました!!

 お腹がすいたけど、まずは職業レベルの上限を解放するわよ!

 そしたら温泉に行ってから宴にするわ!」

 

「もしや、お昼の件ですか!?お姉様に貢献するとは、ラックもなかなかやりますね!!」

 

 察しの良いマリーヌは、強盗を捕まえた報酬だと理解したようだ。

 

「私のはあるんですか!?」

「あるけど、貸しよ。」

「そんなぁ・・・。」


 役には立ったけど、調子に乗せたらダメだからね。リリムには厳しくしておかなくちゃ。

 でも、捕獲調教師の上位職って何なのかしら?

 魔導師は大魔導師。賢者は大賢者とかかしらね?

 テイマーならテイマーロード、魔物使いはモンスターマスター。

 大捕獲調教師ってのは、なんだか語呂が悪い。魔物も人間もテイムできるって事は、魔物と人を統べるテイムマスター的な?

 それともテイムエンペラーとか!

 なんにしても楽しみだわ。

 

 私は小瓶の蓋を開けて、中のものを一気に飲み干した。若干甘みがあって飲みやすい。

 というか、普通に美味しい。

 

「さて、どうなったかしら?」

 

 新たな職業名が気になって、目を閉じてステータスを確認した。


 職業【魔人王】


 そうきたかぁぁぁぁあああ!!

 待って!!なんか誤解を招きそうな名前なんですけど、これって人として扱われるの!?

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