第39話 おまけ
私が武器の値段にあたふたしていると、そんな事を御構い無しにリリムが杖を取り出してきた。
「私、この杖にします!」
それは細く艶のある、棒のような杖。杖の先端には丸い宝玉が埋め込まれていた。宝玉はリリムの髪の色に似た鮮やかな桃色をしている。
先端に付いてる物の価値はわかんないけど、そんなに高そうじゃ無いわね。
どうせコイツはお金を持っていないんだから、私へのツケになるんだ。あまり高いものは買えないわよ。
「これまたシンプルな杖を選んだな。しかし嬢ちゃん、見る目があるな。
実はそれ、かなり希少な宝玉なんだ。モモイロカネって言う、クリスタルの魔物から取れる核で出来てる。
強さはお墨付きだぞ。」
モモイロカネって全然聞いた事ないけど、どうなのよ?
チラリとマリーヌへ視線を送ると、それを察してくれた。
「モモイロカネはその名の通り桃色をしたい魔物です。鉱物で出来た魔物ですが、固くしなやかなクリスタルで出来たその体は頑丈で武器や防具などの素材として優秀です。さらには魔力を蓄える性質を持っていますので、おそらくあの杖、かなりの値段がするかと思われます。」
マジか、一体いくらなのよ!?
不安になってリリムと店主の方へ顔を戻した。
私の剣でさえ20万よ?聞くだけで高そうだわ。それ以上なら絶対買わない、と言うか買えない。
「いくら?」
まぁ既に買う気は無いのだが、今後の参考までに聞いておこう。
「通常なら150万だが、100万までまけてやるよ!」
「却下!!そんな金ないわ!!
リリム、選び直し!」
無理だって、元値が私たちの欲しい薬一個分もするじゃないの。絶対無理。
「そんなぁ、せっかく持ち手のイボイボも気に入ってたのにぃ。」
「やかましいわ!!」
お前がそれを選んだ理由はそれか!?ほんとクズだな!!
「お、お姉様。私がプレゼントしましょうか?」
「ダメ!あんな杖アイツには早すぎるわ!!」
そうよ、マリーヌがいるんだから借りればある程度なら買えるわ。手持ちでなんとか足りるけど、使ったら何も買えなくなっちゃう。
最後の手段として取っておこう。
「リリム、私は自分の分しか買えないから、そもそも貴方に出すお金は持ってないわよ?」
「えぇ!!?ここまで来てそれは無いですよ!私は杖なしですか!?」
まぁ、お金がギリギリだから店主のテイムも考えてたけど、よく考えたらリリムの分まで私が出す必要ないのよね。
無理な事して、失敗した時の反感を買う必要は無いわ。
「マリーヌちゃん、私にお金を貸してください!!」
おい、さっき薬を買うのに自分たちの力でなんとかするとか言ってたのはどこのどいつだ?
「さっき、マリーヌは頼らないって言ってなかったっけ?」
「さっきと今は、違いますから!!」
どこのガキ大将だよ。
「マリーヌ、あまり甘やかしてはダメよ。」
私を騙そうとしていたんだし、これくらい困らせたってバチは当たらない。むしろもう少し困って反省すればいい。
「おじさん、やっぱり私のだけ会計お願いするわ。お金ギリギリだけど、気に入っちゃったし。」
リリムを放って会計をしてしまう事にした。
「毎度!あっちの嬢ちゃんのはどうすんだい?」
「あぁ、アイツお金持ってないから、多分今日は変えないと思うわ。
私も自分ので手一杯。」
そう言うと、店主は少し眉を落としてリリムの方を向いた。
「それもなんだしな。よし、嬢ちゃんの短剣に、一番安いコッチの杖をおまけしてやるよ。
弟子が作った物で値段は付けてねぇんだ。まぁ、それなりには役に立つはずだ。」
そして店主はカウンターの下から一本の杖を取り出した。先端に水晶の様な物がくっ付いているが、何処にでもありそうな普通の杖だった。
しかし、サービスしてくれるのならありがたい。リリムには勿体ないくらいね。
「いいの?」
「あぁ、また稼いできた時には、贔屓にしてくれよ?」
本当にフランクで気前のいい店主だ。マリーヌがオススメしてくれるのも頷ける。私の短剣だってさっきの杖と比べては安いけど、剣にしてはかなりの値段だ。
当分新しいものを買うつもりはないが、機会があればまた是非立ち寄らせてもらおう。
「リリムもよかったわね。これで武器も揃ったし、稼ぎに行きましょう。
稼いだら、今度は自分で買いに来なさい。」
「わかりました・・・。」
少し不服そうだが、まぁ自業自得だ。
ホテルを壊さなければもう少しまともな杖を買えただろうに。
武器を購入して、外で待つラックと合流した。
次はいよいよ初クエストだ。
ホーンホースが生息する、アルペティア高原へと向かう。
「さぁ、稼ぐわよ!!」
「お姉様!防具や道具は買わないんですか!!?」
そ、そうでした。
でも、もうお金ないのよ・・・。
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