第30話 精霊達の楽園

 おはようございます。

 みんなのリリム・パトリッジです。

 

 昨日の夜は色々ありましたけど、今日からまた気を取り直して、セツナ様の誘惑に全身全霊取り組んでいきたいと思います。

 

 セツナ様ったら、ひどいスキルを習得されていたんです。

 粛正っていうスキルらしいですけど、今日も朝から肌を擦り合わせようとしただけなのに、スキルでお腹を壊されました。

 

 出る物がなくなってもお腹の痛みは中々引かないので、朝からトイレに篭ってます。

 

「リリム〜、早くしないと置いてくわよ〜。」

 

 ドアの向こうからセツナ様が私に嫌がらせの様に声をかけてきます。

 弄られるのは好きですけど、置いていかれるのは絶対嫌です。

 

「もうちょっと・・・待ってください・・・。」

 

 お腹、痛いです。

 これからはセツナ様に襲いかかるのも、捨て身で行かなければならない様ですね。

 しかし、私は諦めませんよ!

 

 トイレからやっとの事で這い出た私は、荷物を持って外へと出ました。

 家の入り口には二人と一匹が待っています。

 

 マリーヌちゃんがドアの鍵を閉めて、これから出発します。

 どこって?

 

 私もよくわかってません!

 だって、セツナ様ったらマリーヌちゃんと二人だけで意思伝達で話をしてるみたいなんです。

 

 ちょっとジェラシーです。

 でも、セツナ様の一番を譲るつもりなんて毛頭ありませんけどね。

 私には今まで幼馴染として培ってきたアドバンテージがあるんですから。

 

「ほら、リリムもこっちきて。

 テレポートで移動してもらうから。」

 

 セツナ様が私を呼んでいる!

 笑みを顔いっぱいに浮かべてセツナ様の胸に飛び込み・・・そこないました。

 上手に躱されてしまって、私はその場に躓いてしまいました。

 

「テレポート!」

 

 私の状態なんて御構い無しですね。

 マリーヌちゃんにはきちんと先輩に対しての礼儀という物を教えてやらねばならない様です。

 

 フワリと体が浮かぶ感覚から、気がつくと別の場所に移動していました。

 テレポート、便利ですね。

 

 私も覚えようかな?

 賢者は習得魔法が多すぎて、何から覚えようか迷うばかりです。

 

「ところで、ココはどこてすか?」

 

 見渡す限りのお花畑。

 ピクニックですか?

 

「ここは精霊達の楽園、エレメンタルパレスです。」

 

 腰に手を当ててマリーヌちゃんが教えてくれました。

 精霊の楽園、素敵じゃないですか!

 私とセツナ様の愛を、精霊達が祝福してくれるということですね。

 

「セツナ様、貴方の気持ち、確かに伝わりました!」

 

 さりげなくセツナ様の手を取って握りしめるのも忘れません。

 

「どんな勘違いしてるか知らないけど、死なない様に頑張りなさい。」

「へ?何のことです?」

 

 仰ってる意味がよくわからないんですけど。

 こんなのどかで綺麗な場所で何が死ぬことがあるんですか。

 

「エレメンタルパレスには別名があるのよ。」

「別名?」

 

 セツナ様がもったいぶります。

 焦らされるのは好きですけど、一体何だっていうんですか!

 

「地獄に一番近い花園、ヘルズガーデンです。」

 

 まさかのマリーヌちゃんから答えが帰ってきました!!?

 右かと思ったら左!?

 前かと思ったら後ろ!?

 

「やん❤︎」

「今の喜ぶ要素なかったでしょ!!」

 

 セツナ様からいつもの如く張り手が舞ってきました。

 甘々ですねセツナ様、私は既に対処法を学習しています。

 

 敏感肌!!

 

 パシンッ!!!

 

「あん❤︎」

 

 解除っと。

 

「んのヤロォォォォオオ!!!」

  

 怒ってるセツナ様も素敵!

 

「粛正!!!」

「なっ!!?」

 

 そうでした!!

 ・・・・・・痛っ・・・。

 今のセツナ様にはこのスキルがあったんでした・・・。

 

「あぁ・・・不味いです、ここでは不味いですよぉぉぉ!!!!」

 

 不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!!!!!

  

 お花畑で出ちゃいます!!!!

 

 私は辺りを一心不乱に見渡して茂みの中へ駆け込んだ。


 ぐぎゅぅ〜〜〜ーーーーーー。

 

 お腹がなってます〜ーーー。

 

 大変です。

 まさかお花畑に肥料を上げることになるなんて・・・・・・。

 

 あれ?

 思ったより腹痛が続きませんね。

 ちょっと痛かっただけでそれ以上なんにも起きませんでした。

 

 もしかして、ついさっき粛正を受けたばっかりだから、出すものがない!!

 

「ふっふっふ。セツナ様、どうやら連続での使用は効果がない様ですね!

 ビックリしましたが、私は無傷です!!」

 

 茂みから這い出して、セツナ様の下へと戻ります。

 

「そ、そんな!?

 まさかそんなインターバルがあるなんて!!」

 

 セツナ様もどうやら知らなかった様です。

 捨て身で一度受けてしまえば、どうって事ない様ですね。

  

 いい事を知りました。

 でも、最初の1回目は計算して受けないと大変なことになりそうですね。

 セツナ様ったら容赦ないですし。

 

「リ、リリムさん。

 う、後ろ!!!」

「え?」

 

 マリーヌちゃんが私の後ろを指差して顔を引きつらせています。

 何だというんでしょうか?

 

 私は後ろを振り返って・・・・。

  

 セツナ様の下に駆け出しました!

 

「何ですかぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!?」

 

 そこには見たことも無いような巨大な魔物が佇んでいました。

 魔物!?

 

 

 勘弁してくださいぃぃ!!

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

 そこはエレメンタルパレス、又の名を地獄に一番近い花園。

 無数の精霊が入り乱れる精霊の国の一つ。

 

 彼らは無邪気な笑顔で人を陥れる。

 それが彼らの唯一の楽しみなのだから。

 

 今日も三人の人間が、その花園の美しさに惹かれてやってきた。

 実体を持たない彼らは新たな楽しみを見つけて集まり始める。

 

 

 ここは足を踏み入れた者が戻る事の出来ない楽園。【ヘルズガーデン】

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