第16話 魔物の声
昨日は本当に疲れたわ。
思った以上にマウントウルフの体力が減っていたせいで、回復させるのに苦労した。
私が思いっきり叩きつけた鼻は潰れかかっていたので、その回復をする為に薬草集めをして、リリムの秘薬精製でポーション(小)を作成し終わる頃には深夜になっていた。
有用な回復魔法をまだ覚えていないので、地道に薬を作るしかなかったとは言え・・・。
ほんと疲れたわ。
もう食事も面倒だったので食べずにそのまま眠た。
リリムも相当疲れが溜まったようで、私にちょっかいを出す事もなく眠ってしまった。
でもね、それが普通なんだよ?
いちいち無駄な事しなくていいのよ。
マウントウルフはある程度回復したので、休むように命令した。
どうなるかと心配はしたが、スライムやワーラットと同様しっかり命令を聴いてくれた。
今日は朝日に照らされて目が覚めた。
気候が安定した時期とは言え、朝は多少冷え込んでいる。
はっきり言って寝不足だ。
今日は燻製の仕上げをする。
幸いにもこのマウントウルフは焼き鳥を頬張っただけで、風乾していた肉には手を出していなかった。
燻煙に炙している間にもう一眠りしようと思う。
と、その前に。
ステータス云々も確認しておこう。
昨日はそんな暇もなかったし、まだ未確認だ。
おっ、レベルが5に上がってる。
気持ちとしてはもう一つくらい上がってくれても良いくらい頑張ったんだけど。
それはまぁ仕方ないか。
スキルをの習得画面を開いてみる。
新しいスキル覚えられないかなぁ・・・。
・・・・・・。
あった!
習得条件に職業レベル5と書かれている。
必要なJPは3。
魔法の時と違って条件に達したものは名前や詳細が書かれていた。
スキル名【意思伝達】
従者と意思の伝達が可能。
消費SP0
と書かれている。
ふむふむ。
便利じゃね?
SP無しでテイムした従者と意思の伝達、つまり会話が出来るって事でしょ?
と言うか、これこそ私がテイマーに憧れてた理由の一つ!
魔物との会話!!
テイマーは【思念リンク】というスキルがあると聞いた。
これも同じものだろう。
職業名も違うから、スキルの名前も違ってるって事よね。
もちろん習得!
『意思伝達を習得しますか?YES/No』
YES♪
『意思伝達LV:1★を習得しました。』
あれ?レベルの横に星マークがついてる。
なんだろ?
「リリム〜、スキルレベルの横に星マークが付いてるんだけど、どういう意味?」
後ろで朝食を作っているリリムに質問する。
あの子、なんだかんだで色々知ってるし。
「スキルレベルの横の星マークは、レベル最大である事を示しています。
スキルレベルはスキルによって上限が異なるので、物によっては習得時点で最大レベルの物もありますよ。
新しいスキルを覚えられたんですか?」
「うん、レベル上がってたから覚えてみた。
ちょっと試してみるね。」
意思伝達を覚えたので、早速使ってみよう。
【意思伝達】
「(リリム、聞こえる?)」
心で呟いて、リリムの方を見る。
「えっ?」
リリムはキョロキョロと首を振った後、私の方を向いた。
「あれ?近くで声がしたかと思ったんですが・・・。」
「(頭に直接話してるのよ、意思伝達ってスキルを覚えたの。
思った通り便利なスキルみたいね。)」
「(テイマーのスキル、話には聞いていましたがこんな事が本当に出来るんですね!
流石はセツナ様!私の頭の中を覗かれてるみたいでゾクゾクします!)」
よし、解除っと。
とりあえずリリムに対しては当分使うことは無いわね、喋ればいいし。
頭の中にまで気持ち悪い声を響かせられるとは思わなんだ。
しかし、これからが私の一番のお楽しみ!
まずは、マウントウルフのステータスを確認して名前を見ておこう。
ラック
マウントウルフ(♂)
無職
ラックか、呼びやすそうね。
性別はオスだったのね。
まぁ言う事を聞くのならどっちでもいいわ。
私は隣で丸くなっているラックに向けて意思伝達を使用してみた。
「(ラック、聞こえたら返事して。)」
『ワゥ』
小さくひと鳴きした。
「(ちっがうわよ!流れ考えろっての!!
頭に直接喋ってんだからそのまま意思で伝えて来いよ!)」
「(も、申し訳ありませんセツナ様!!?
このような事は初めてだったもので・・・)」
おや?
おやおやおや?
マジか・・・・!?
こいつめっちゃまとも!!?
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