第13話 VSマウントウルフ
何あの魔物。
犬や狼にしてはデカすぎでしょ!?
せっかく美味しく焼き鳥を食べてたのに、台無しじゃない!
あいつ私の肉に手ェ出してんじゃないわよ!!
肉返せ!
マウントウルフは緑がかった長く白い毛並を焚き火の炎に照らされながら、焼き鳥を貪り始めた。
私はリリムと共に近くの茂みに隠れたわけだが、よく考えたら向こうは狩りのプロ。
それも耳も良ければ鼻もいい。
こんな所にいてもすぐにバレてしまいそうだ。
足り無い頭で危機を脱する方法を思考する。
バレる前に捕獲と調教を試してみるか?
何せスキルレベルもあげた、もしかすると成功するかもしれないが・・・。
いや、リリムがテイムの基本を教えてくれたが、ある程度強い魔物は体力を削らなければテイムは難しいと言っていたはずだ。
あいつは絶対強いでしょ・・・。
そう、私は今日鶏肉の処理をしている合間にスキルレベルを上げた。
鶏を倒した事に加えて、昨日スライムとワーラットを一時テイムしたことで職業レベルが上がっていたのだ。
それも2つも。
現在職業レベルは4だが、JPを新たに10獲得していた。
リカバリーを覚えた後に残っていた分を合わせると12のJPを振り分けることが出来たのだ。
捕獲も調教もレベル2に上げるために必要なJPは3だった。
それぞれのレベルを上げて、残ったJPは6。
レベル3に上げるために必要なポイントは6だったので、悩んだ挙句に調教のレベルを上げた。
現在のステータスはこんな感じだ。
職業【捕獲調教師】
LV:4
MP:18
SP:40
スキル
捕獲LV:2
調教LV:3
魔法
リカバリーLV:1
その為
捕獲成功数:4
現在捕獲数:0
調教成功数:3
従者数:1
SPはレベル2になった時ほど伸びなかったが、それでも合計で5上がっている。
捕獲と調教できる回数に若干の余裕が出来た。
リリム曰くテイマーが魔物をテイムする為に必要な条件は、相手より格上である事。
これは肉体的なものでも精神的なものでもどちらでもいいそうだ。
要は相手を屈服させる実力を持っていれば大丈夫という事。
なので、通常格上である魔物でも弱らせる事でテイムは可能であるらしい。
ただ、職業レベルやスキルレベルが低いと確率が格段に低くなるそうだ。
今私たちの目の前に現れたこの狼はどう見ても駆け出しの私たちより強い。
私なんて攻撃手段をほとんど持っていないので、襲われたらひとたまりもないのだ。
対するリリムもその辺は私と大差ない。
このアホは攻撃魔法を覚えていないのだから。
いくら賢者とは言え現状役に立たない。
下手をすると刃物を多少なりと扱える私の方が強いまである。
実際リリムもレベルが1上がっていたらしいが、攻撃魔法の習得可能条件をまだ満たしていないらしく、魔法の習得はお預けをくらっている所だ。
私と違って、リリムは習得していなくても魔法名は確認できるらしい。
逆にスキルは霧掛かったように見ることが出来ないそうだ。
魔法を多く覚える賢者の特権だろうか?
まぁそんな事よりも、まずは目の前のあの化け物から逃れる術を考えなければ・・・。
リリムと会話をしようにも迂闊に声もだせない。
「セツナ様、どうしましょう!?」
このバカなんで喋り出すのよ!?
私は咄嗟に口を押さえつけてリリムを黙らせた。
気づかれてないか心配になり狼の方を見る。
あ、ほら。
あいつこっちの方向いてない?
いやいや、そのまま肉食ってなさいよ。
お譲りしますんで。どうぞどうぞ。
いや、こっちに来なくていいってば。
地面の匂い嗅いでんじゃないわよ!!
やばいもう無理!!
絶対バレたぁぁぁぁああああ!!!
私は泣きそうになりながらことの元凶であるリリムを睨みつけた。
うすうすバレたのかもしれないが、何か対抗手段を考える時間くらいはあったはずだ。
何故あんな化け物みたいな狼に無策で挑まねばならんのだ。
いや、挑むつもりは毛頭ないんだけどさ。
「逃げるわよ、っこのバカ!!」
私はリリムを引っ張って走り始めた。
パキンと音を立てて足元の枝が折れる。
その音と私の声に反応してマウントウルフも駆け出した。
「見つかっちゃったじゃないですか!!?」
「元はと言えばアンタのせいよ!!」
二人して夜の山の中を疾走する。
登り道では部が悪い、なんとか降る方向へ向きを変えて逃げる。
20mも離れていなかった距離をマウントウルフは付かず離れず着いてくる。
人間の速度に追いついてこない?
あいつ私たちを追いかけて楽しんでるってわけ?
普通に考えて追いついてこれないわけが無いじゃない。
絶対性格悪いわ。
しかし、その分考える余裕はある。
捕獲して、調教で時間を稼ぐ?
調教一回で数秒の時間が稼げるが、捕獲が解かれてしまえばそれも続かない。
確実に捕獲できる保証もない。
狙うとすればどこ?
首?
は後ろ足で取られそうね。
腹部も齧ってちぎられそうか・・・
尻尾!
犬って自分の尻尾の付け根とかなら何もできないんじゃない!?
それは良いけど、何とかして隙を作らないと到底出来そうもない。
「セツナさまぁぁぁああ!!!」
リリムのスピードが落ち始めた。
ひ弱な元受付嬢には山岳を長時間逃げ続けるほどの体力は無いわよね。
仕方ない、ここはひとつ私の為に犠牲になって貰おうか。
リリムが襲われているうちに逃げ出せば、私だけでも何とか逃げ出せるかもしれない。
そもそも鬱陶しかったリリムを厄介払いしてくれるのであれば、それはそれで願ったりかなったりだ。
そんな最低な事を思っていると、チラリと視界に何かが映った。
あれは・・・。
「リリム、囮ヨロシク!!」
私は進路を変えてリリムの眼前から離脱した。
狙い通り、リリムとマウントウルフが通り過ぎて行く。
ごめんリリム、アンタの勇姿は忘れないわ。
「そんなぁぁぁぁああ!!!?
せつなさまぁぁぁああああ!!!!?」
ガンバ!!
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