第6話 セツナ逃走、魔物とリリムの挟み撃ち
カチャ。
私が部屋の光景に唖然とする中、リリムが扉を閉めた。
「そ、それじゃあ私はこれで・・・。」
こんな趣味を持っていただなんて思ってもみなかった。
スキルの効果がおかしいんじゃなくて、この子の頭がおかしいんだわ!!
「待ってよ。せっかく送ってもらったんだし、ちゃんとお礼をさせて?」
横を通り過ぎようとした私の手をリリムが掴み取った。
「いやいや、貴方は疲労してるんだからちゃんと休んでなさい。
私は転職も出来たし、そろそろ旅に出ようと思うから。」
こんな所でいつまでも足踏みしていたくはないし、そもそもこの子と一緒にいては自分の身が危ない。
「えっ!?旅に出ちゃうの!?
私を一人にするつもり!!!?」
「お前は彼女かっ!!?」
そもそもそんな関係じゃないわ!
早くこの危険地帯を脱出して、ギルドに置いてきた荷物を取りに行かなければ・・・。
「彼女だなんて・・・❤︎」
「肯定したわけじゃないっつーの!!」
そもそも従者なら従者らしく主人を困らせるな!
「いい?私は村を出る。貴方はギルドの仕事をキチンとこなしなさい!!」
「そんな・・・。」
「これは命令よ。」
リリムが肩を落として頭を下げた。
「そんな事・・・。
そんな事出来ないわよ!!!」
「命令だって言ってんでしょ!!!」
命令聞きなさいよ!
とその時、頭に信じがたいテロップが浮かび上がる。
『【警告】リリム・パトリッジから命令に対するレジストを検知しました。
職業レベルを超えたレジストに対して、命令は実行されません。』
命令に対するレジスト?
って事は・・・・。
逃げるしかないじゃない!!!
私は掴まれていない方の手で扉を開けて、リリムを振りほどいて走り出した。
「あっ!待って!!」
リリムも慌てて後を追ってくるが、体力が低下している今の状況なら簡単に逃げ切れるはずだ。
素早く階段を駆け下りて靴も履かずに外に飛び出した。
しかし、テイマーにこんな弱点があったなんて・・・。
従えて仕舞えばこっちの物だと思い込んでいた。
でも、リリムで色々と確認できてよかったわ。
このままギルドで荷物を回収して、家に新しい靴を取りに帰ろう。
その足で村を出ればいい。
駆け足でギルドを経由して家に帰った。
予定通りだ!
家の玄関を開けて周りを見渡す。
「リリムはいないようね・・・。」
バレなように村の反対側から出て行こう。
コソコソと隠れながら村の出入り口の反対側の林へと入った。
ここまでくれば大丈夫だ。
「やっぱり、セツナは本当に単純よね。
そんな所が堪らなくイイわ!
これ、忘れ物よ❤︎」
木の影からリリムが現れた。
両手には私の靴を持ち、何やら顔を近づけている。
「匂い嗅いでんじゃないわよぉぉおお!!」
何故ここにリリムが!?
完全に撒いたはずだ。
「それに、体力が無いのになんでそんなに動けてるのよ!?」
「ふふ、セツナの元へなら例え体力が底をつこうとも辿り着いてみせるわ!」
ド変態か!!?
「でも、予想通り此処へ来てくれて嬉しいわ。
私も体力が少なかったから賭けだったけど、お陰で待ってる間に多少回復してきたみたい。
私からは逃げられないわよ!」
なんでそんなドヤ顔してるんですか?
私は貴方と一緒に村に残らないし、一緒に旅をするつもりもないわよ!?
「んじゃ!元気でね!!」
リリムを躱して林の中へ突き進む。
「逃げちゃやぁよぉぉおおお」
リリムが靴を両手に履いて追ってくる。
「ぎゃあぁぁぁぁああああ!!!!」
私は力の限り走り続けた。
そろそろ林を抜けるはずだ!
そう思った矢先、目の前に大岩が現れた。
・・・・・・。
迷った!!!!
迷子になったが泣き事は言っていられない、私は大岩を迂回してさらに突き進んだ。
後ろからはリリムがしつこく追いかけてくる。
「はぁ、はぁ・・・そろそろ諦めなさいよー!」
「絶対に・・・はぁ、はぁ・・・嫌!!」
マジで勘弁して・・・。
息を切らして走り続けたが、目の前に二匹の魔物が現れたことで逃走劇は佳境を迎える。
「なんでスライムとワーラットが仲良く居座ってんのよー!!!?」
まさかこんな時に魔物と出くわすなんて。
魔物もこちらに気づいたように威嚇し始めた。
可愛い!とは程遠いぬるぬるの液体モンスターであるスライムと巨大で凶暴なネズミの魔物。
どちらも農家の敵である!!
スライムは強力な酸を含んだ液体で出来ており、畑の作物を溶かして吸収し荒しまわる。
ワーラットは雑食で殆どの作物を食い散らかすのだ。
しかーし!
私には新しいスキルが備わっている!
魔物としては底辺の二匹など、見事服従させてくれるわ!
よく考えればこれは絶好の機会だ。
上手くやればリリムに対抗できる!
「捕獲×2!」
思い立ったら即行動!
赤い紙の様な物が二匹に向かって飛んでいく。
巻きついたことを確認してすぐに次のスキルを発動する。
「調教×2!!」
「ギィイいいイイ!?」
二匹の魔物はリリムの時と同様に体を痙攣させて声をあげた。
『調教に成功しました。』
『調教に成功しました。』
やった!
一発で成功した。
すかさず迫り来るリリムの方を向き、二匹に命令する。
「まずはワーラット!リリムに攻撃よ!!」
「ギィイ!!」
ワーラットはひと鳴きすると、リリムに向かって走り出した。
「ふ、ワーラットぐらいどうって事ないわ!」
リリムは立ち止まって、ポケットから何かを取り出した。
なんだ?
「ま、まさか!?」
リリムは取り出した丸いビー玉の様な物を目の前にまき散らした。
・・・・あれは!!
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