第4話 能力解放、力の暴走

 そんな解放望んで無ぁぁぁい!!!

 力の暴走に注意って何さ!?


 私に攻撃してくるって事!?

 恐る恐るリリムを見ると、上を向いて身体を痙攣させていた。

 そして此方を見つめてくる。

 

 目の奥が血走って顔が半笑い状態だ。

 

 怖いわぁぁぁあああ!!!

 

 何これ、ホラー!?


「ちょ、ちょっとリリム、大丈夫!?

 もしも〜し、聞こえてますかぁぁあ!!?」

 

「セ・・・セツ・・ナ・・・サマ!?

 ・・・・・・・。

 

 セツナさまぁぁぁぁあん!」

 

 奇声を上げながらリリムは受付のカウンターを跳躍して跳び越え、私の前に立ちはだかった。

 

 とんでもねぇジャンプ力してやがる!?

 ・・・じゃないわよ!!

 なんて事!?

 マジで能力解放されてんじゃない!!

 

 普段"私は乙女だから"とか言ってる女のジャンプ力じゃないわよこんなの!

 頭おかしいんじゃない!?

 

「まぁほら、落ち着きなさいよ。」

 

 リリムの何ともわからない威圧感に気圧されて後ずさるが、私の動きに合わせてリリムも少しづつ近づいてくる。

 

「お・・・お、落ち着きなさい!

 ちょ、本当に止まって?」

 

 そんな叫びも虚しくリリムは私の両腕を掴んだ。


「ぐ・・・」

 

 強い!?なんて力してるのこの子。

 そんなキャラじゃなかったじゃない!?


「セツナサマ。」

 

 私はそのまま力に負けて押し倒された。

 リリムが私に馬乗りになり、両手を押さえつける。

 

 動けない・・・。

 

「これは命令よ!止めなさい!!」

 

 しかしリリムは一向に止める事をしない。

 これが力の暴走!?

 命令を聞かないなんて・・・。

 

 リリムは両手を離す代わりに、今度は足で私の両手を踏みつけて押さえる。

 向こうは体勢が悪いはずなのに、ビクともしない。

 

 だめだ、こんな体勢で攻撃を受けたら重症必死・・・。

 私は自分のした事を後悔した。

 

 友達にあんな真似をするんじゃなかった・・・。

 

 すっ、とリリムが両手を挙げる様な動作をした事に驚いて、私は目を瞑った。

 

 しかし、なかなか攻撃をしてこない。

 うっすらと細めを開けて彼女を見ると・・・。

 

 なんと上着を脱ぎ始めているではないか!?

 

「なんばしよっとかぁぁぁぁああ!!?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・セツナサマ❤︎

 今リリムが、貴方の事を受け入れますからね!!」

 

 リリムは息を荒げながら付けている下着を露わにした。


 上半身ほぼ裸の女に馬乗りされた挙句、足を開いて手を踏まれるってどんな状況よ!?

 暴走の仕方間違ってるよ、それ間違ってる!!

 

「待て待て待てぇぇぇぇええええ!!!

 私にそんな趣味ないわぁ!!!!!!」

 

 必死にリリムの束縛から逃れる為に身体に力を入れる。

 腕を振ろうとするが全く動かない。


 腕がダメなら全身で!!

 

 身体を動かして脱出を試みる。

 

「やぁあん❤︎」

『変な声だすなぁ〜!』

 

 やべ、私まで違う変な声出た。

 ちがう!そうじゃない!!

 不味いわ、本当に不味い。

 

 リリムは既に下着まで外そうとしている。

 

 ドサッ。

 

 急にリリムが私へ倒れかかってきた。

 咄嗟にリリムを受け止めたが、身体が動かせた?

 どうやら力を緩めてくれた様だ。

 

『従者解放時間が無くなりました。

 リリム・パトリッジの残り体力は5%です。

 体力の回復を推奨します。』

 

 頭の隅にテロップが浮かんだ。

 

「タイムオーバーか・・・。

 マジで危なかったわ・・・・・・。」

 

 危機が去った事に安堵したが、よく見るとこの状態で人に見られたりしたら洒落にならない。

 

 私は脱ぎ捨てられた服を持って受付のカウンターの後ろへとリリムを引きずった。

 

「何で私がこんな事を・・・。」

 

 文句を言いながらリリムを運び服を着させる。

 何が嬉しくて友達に服を着させにゃならんのだ・・・ったく。

 

 一通り服を元に戻して安堵した。

 さて、どうしたもんか。

 

 

「いや〜、勇者様カッコよかったなぁ。

 あの人が世界を救ったって思うと、俺鳥肌立っちまったよ!」

「だな。そんな勇者様がこんな村に来てくださるとは、あの方は素晴らしい方だ!

 ってあれ?リリムの奴まだ帰ってないのか?」


 まさかこのタイミングで人が帰ってきたっての!?

 不味い!

 非常に不味いわよぉ!!!

 

 隠れ通せる?

 いやいや、絶対無理よ。

 既にリリムがいない事に疑問を持ってるみたいだし。

 

 スキルを使う?

 SPは35。リリムの時に捕獲一回と調教二回で20使った、失敗したら終わりだ。

 そもそもそこにいるのは声からして男、成功したとしてリリムの様な状態になったら洒落にならない。ってか絶対無理!!

 

 じゃあどうする私、どうするよ私!!?

 

 偶然リリムが倒れてるのを見つけた事にする?

 それならタイミング的には今しかないわよ?後になればなるほど不自然だわ。

 

 スキルとか、魔法とかで回復できないの!?

 

 一度目を閉じて素早く各項目を確認する。

 特段変わったスキルはない。

 魔法は・・・増えてない。

 もう偶然見つけたテイで行くしかないわね。

 

 そう思って目を開けた瞬間、魔法の一覧に何かが表示されていた様な気がした。

 念のためもう一度目を閉じて確認する。

 魔法の一覧の最下段に《習得》という文字が表示されている。

 

 ちっさ!文字小さすぎでしょ!

 それおじいちゃんじゃ絶対見えないわよ!?

 

 理不尽な表示の小ささに声を上げそうになったが、心の奥だけでなんとか留める。

 

 習得を選択してみると、いくつかの魔法が記載されていた。

 しかしそれらはどれも霧が掛かった様にうまく読めない。


 しかし、その内の一つだけ文字の浮き出たものがあった。

 魔法名は読めないが、その下に《習得条件を満たしました》と書かれている。

 習得条件も表示されており、《従者解放を一回使用》と書かれていた。

 

 その魔法を選択してみると、必要JP:3と表示されている。

 上部には残りJP:5の表示があり、習得は可能の様だった。

 

 一か八か、魔法を覚えてみるか。

 習得条件から、もしかすると回復魔法かもしれない。

 

 『この魔法を習得しますか?YES/No』

 

 YES!

 お願い、いいもの出て!

 

 『リカバリーLV:1を習得しました。』

 

 リカバリー!?名前からして回復出来そう!!

 

 神は私を見放さなかったわ。

 魔法の詳細を確認すると、しっかりと《従者の体力を回復する》と書かれていた。

 

 よし、いける!

 早速リカバリーをリリムに使用した。

 

 リカバリー!

 

『リリム・パトリッジの体力が1%回復しました。

 現在の体力6%』

 

「なんでじゃぁぁぁあああああ!!!!?」

 

 ・・・・・・・。

 

「あ。」

 

「「あ?」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る