第1章 捕獲調教師編

第3話 従者の印

「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

 リリムは息を荒げて此方見つめている。

 先ほどの様な起こった表情は全く見当たらなかった。

 頭に浮かんだテロップの通り、本当にスキルは成功してしまった様だ。


 と、言うことは?

 もしかして、これでリリムは私の従者?

 つまり下僕?

 

 ・・・・・・・・女王様じゃん!!

 

「リリム、とりあえず転職の申請処理を終わらせちゃって。

 私は少し確認することがあるから。」

 

「はぁい❤︎」

 

 げ、なんか気持ち悪っ!!

 リリムごそんな甘えた様な声で返事をすると若干鳥肌が・・・。

 

 リリムは処理の続きを再開した。

 まぁギルドの受付なんだから実際には当たり前か。

 とりあえず気になっていた事を確認する。

 

 目を閉じてステータスウインドを開く。

 

職業【捕獲調教師】

LV:2

MP:16

SP:35

 

 職業レベルが上がっている。

 さっき使い切ったはずのSPも回復し、35まで上がっている。

 調教一回分のSPが増えた様だ。

 

 続いて気になっているその他の項目を開く。

 

 捕獲成功数:2

 現在捕獲数:0

 調教成功数:1

 従者数:1【一覧】

 

 従者数が1になってる。

 現在捕獲数は0って事は・・・。


 よく見るとリリムに巻き付いた紙の様なものは無くなっていた。

 調教が成功した場合や、紙を外されると消えて無くなる様だ。

 

 従者数の横の【一覧】って、さっきは無かったわよね。

 

 開いてみると従者の一覧が表示された。

 

 上段に名前、種族、職業などの項目が横並びに書かれている。

 

リリム・パトリッジ

人(♀)

受付嬢

【従者解放】

 

 へ〜、職業とかも見られるのね。

 この従者解放ってのは、スキルの解除の事だろう。

 解放してもいいけど、せっかくSPを消費して獲得した従者だしもう少し何ができるか試してみたい。

 

 まぁ、後でいっか。

 


 レベルが上がっていたのでスキルや魔法の欄も一応確認しておく。

 しかしそれらは何も変わっていなかった。

 

「ねぇリリム、スキルのレベルはどうやったら上がるの?」

 

「スキルはジョブポイントを使用してあげる事が出来ますよ!

 職業レベルが上がるとスキルの一覧にJPが表示されます。

 必要数のポイントを振る事でレベルアップ可能です。

 はぁ〜、もっと私を頼ってくださいセツナ様❤︎」

 

 なんか変な感じがするけど、これはこれで何かしら優越感があるな。

 でも、幼馴染がこんな態度を取っているところを周りから見られるのも嫌だなぁ。

 人が帰ってきても困るし、普段通りにするよう命じてみる。

 

「そんな、セツナ様にその様な態度を取れと!?

 できません!!」

「いいから言われた通りにしなさい!」

 

 私が強く命令すると、立ち上がっていたリリムは少しよろけた様に後ずさった。

 

「あぁ、なんだか焦らされてるみたいでもどかしけど、セツナに罵られる様に命令されるのも良いわね・・・。

 どんとこい!」

 

 あ、やっべ。

 完全におかしくなってるわこれ。

 口調は治ったけど、頭が逝っちゃってる。

 まあとりあえず様子見だ。

 

「まぁ友達同士でよろしく頼むわ。」

「はい。」

 

 人格まで変わってしまうとは・・・。

 敵対してくる魔物なんかも手懐ける訳だから当然なのか?

 

 まぁ命令さえすればまともな状態に戻せる様だからいいのか?

 

「さ、これで登録が終わったわよ。

 ご・・・ご褒美とか無いのかしら?」

 

 前言撤回、全くまともじゃ無いわ。

 

「ない!」

「いじわるー。でもそんなセツナがイイ!」

 

 もう従者解放しちゃおうか?

 若干面倒臭くなってきたわね。

 

 いやいや、まだ試してみたい事もある。

 しばらくは我慢よセツナ。

 

「それにしても皆んな帰って来ないわねえ。」

「まぁ勇者の凱旋中だしね、村をあげてお祭り騒ぎよ。

 もう暫くかかるんじゃないかしら?

 ウチの支部長も出て行っちゃったから、私もチラッと一目見てすぐ戻ってきたのよ。」

 

 ウチの親はいつも通り農作業してたけど?

 温度差はあるだろうが、まぁウチの親だしね。

 

「そういえば、従者の印てどっかにあるの?」

 

 ふとスキルの説明にあった従者の印について思い出した。

 確か印を刻むと書かれていた筈だがそれらしい物は見当たらない。

 

「あぁ、さっきチクっとしたから多分ここよ。」

 

 そう言ってリリムは立ち上がって上着を捲り上げた。


「ちょっと!何やってんの!?」


 胸の大事な部分が見えそうなところで服を止めて、私に下乳を見せつける。

 

 それ、逆にやらしいわよ?

 

「ほらここ。」

 

 指差す場所を見ると、赤いマークが刻まれていた。

 まさかそんなところに出現してるとは・・・。

 

「わかったから、服を直して。」

 

 リリムは服を下に戻すと再び椅子についた。

 刻まれていたマークは一枚の葉っぱに重なる様に花が描かれていた。

 

 アレはトネリコの花?

 私は農家という事もあって植物は多少詳しい。

 母の趣味で花や植物も栽培している。

 その中の一つであるトネリコに似ていたと思う。


 花言葉もいくつかあったが、トネリコは・・・。

 確か服従って意味があった筈だ。


 怖いわ!


 ふぅ、下手な命令は出来ないわね。

 特に躊躇なく服を脱ぎ始めたし、それについて本人は何とも思っていない様だ。

 

 命令すればなんでもやってくれそうな気さえしてきた。

 自分でやっといてなんだけど、友達をこれ以上からかう様な真似はする気が起きなくなってきた。

 

 色々試すのは別のモノをテイムしてやってみよう。

 リリムは解放する。

 

 目を閉じてステータス画面から従者解放を選択する。

 

『従者解放を行いますか?YES/NO』

 

 YESと念じて解放した。

 

 また頭の中にテロップが浮かび上がった。

 

『従者解放を行いました。

 リリム・パトリッジの能力を一部解放。

 解放時間残り1分。


 ・・・・・・・・・・・。


 解放による攻撃対処を認識できませんでした。

 力の暴走にご注意ください。』

 

「どーゆーこと!?」

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